元旦に聞こえてきた異音

今年の元旦のことです。

犬と一緒に二階の寝室で寝ていた私は、元旦の朝に、ある異変に気づきました。

それは、どこからともなく聞こえてくる高い音程の音です。

その音は、明らかに何らかの機械が発する音でしたが、どこからその音が聞こえてくるのかわかりませんでした。

私は聴覚が異常に敏感で、二階の部屋で寝ていても、一階に置いてある冷蔵庫のコンプレッサーの音が聞こえてしまうほどです。

ですから、最初は、家の中に置いている電化製品から音がしているのかもしれないと思いました。

しかし、その音をよく聞いていると、何か広がりのあるような音に聞こえるのです。

広い範囲に響いているような感じです。

そこで私は、寝室の窓を開けました。

すると、その音は明らかに、外にある何らかの機械から聞こえてくる音だったのです。


ここで、うちの周囲について説明しておきましょう。

うちのすぐ隣には、岡山で有名なパン屋さんがあります。

パン屋さんというと小さなお店をイメージするかもしれませんが、広い駐車場があり、ちょっとしたオープンテラスもあるような大きなパン屋さんです。

実は、このパン屋さんの建物は、昔、両備ストアというスーパーだった建物です。

私は、小学生からこの地域に住んでいますが、当時この界隈には、両備ストアしかスーパーがありませんでした。

そう考えると、築40年近い建物ではないかと思います。

後に、この建物は製薬会社の事務所になっていましたが、その後でテナントとして入ったのが今のパン屋さんです。

とても人気のあるパン屋さんで、全国ネットのテレビ番組に何度も取り上げられるほどです。

休日ともなると駐車場に車が入りきらず、道で車が行列をしています。

このパン屋さんのおかげで、この界隈も活気が増し、地域住民としては非常に感謝をしています。

パン屋さんには大きなピザ窯があり、注文してからピザ窯でピザを焼いて、安い値段で焼きたてのピザを提供してくれます。

私は、クリスマスになると大きなサイズのピザを買って、家族で楽しんでいます。

パンやスイーツも無添加にこだわっていて、とても美味しいです。

古い換気扇の音

元旦の朝に窓を開けた私は、もしかしてこの音は、以前から聞こえていた音かもしれないと思いました。

以前も、同じような音が外から聞こえていたのです。

ただ、その音の発生源がどこなのかは、わかりませんでした。

というのも、元旦のように静かな状況ではなかったからです。

しかし今や、元旦の静けさの中で、その音は明らかに、ある方向から聞こえてきていました。

私は、これは何かの機械が近くで動いているのではないかと思い、外に出てみたのです。

そして、静まり返った元旦の空気の中で、その音が発生している場所を探しました。

すると、うちと隣接している側の、パン屋さんの屋根の部分から、その音が聞こえていたのです。

そこをよく見てみると、そのパン屋さんの屋根に、換気扇がついていたのです。

その換気扇が、音を発しながら回転していたのです。


換気扇というと通常は、ファンの回る音だけがします。

そして、そのファンの音というのは、ホワイトノイズと呼ばれていて、人間にはむしろ良い影響を与えるような音の性質を持っています。

ホワイトノイズは、すべての周波数を含む音で、夜中にテレビをつけるとザーッという音が聞こえると思いますが、あの砂嵐音です。

ファンの音の周波数もホワイトノイズなので、決して心地の悪い音ではないのです。

もし、そのパン屋さんの換気扇の音が、ファンが回る音だけであったなら、私も全く気にしていなかったでしょう。

しかし、そうではありませんでした。

そこには、高い音程の音が含まれていたのです。

それは明らかに、換気扇が劣化しているがゆえに発している異音でした。

そして、元旦の静けさの中で、その異音は周囲の家々に聞こえるほど際立っていて、うちの横の道路を歩いていた人が、その音に気づいて空を見上げるほどでした。

しかしよく考えてみると、この換気扇は以前から回っていたのだと思います。

なぜなら、その異音は以前から何となく聞こえていたからです。

ただ、元旦の静まり返った状況で、この異音が非常に目立っていたのです。


私は少し考えました。

元旦ですから、パン屋さんに人はいないでしょう。

パン屋さんは4日から営業だそうです。

ということは、換気扇はずっと回り続けることになります。

でも通常、換気扇をつけたまま、お正月休みに入るでしょうか。

それで、うちとは逆側にある屋根を見に行ったら、全く同じ換気扇がついていたのですが、その換気扇は回っていなかったのです。

つまり、今回っている換気扇は、前日にスイッチを切り忘れたものだろうと思いました。

そこで懸念したのが、換気扇の劣化についてです。

営業時間だけ換気扇を使うなら問題はないと思いますが、スイッチを切り忘れているとしたら、この3日間ずっと換気扇は回り続けます。

異音が発生しているくらいですから、3日間も連続して回し続けたら、回路が焼けたりしないだろうかと思いました。

異音だけではなく、火事などの懸念もあったので、私はパン屋さんの事務所に一応行ってみましたが、当然、誰もいません。

そこで家族に相談したら、パン屋さんはセコムのセキュリティに入っているということでした。

ということは、セコムに連絡をすれば、セコムが換気扇のスイッチを切ってくれるのではないかと思ったのです。

セコムに電話してみる

セコムのホームページを調べて、全国共通の受付番号に電話してみました。

すると、元日にも関わらず、担当者の男性が電話に出ました。

セキュリティですから、当然と言えば当然ですが、元日に繋がったので安心しました。

それで、回転し続けている換気扇の状況を伝え、窓を閉めても聞こえてくるくらい異音がしているので、何とかならないだろうかと相談しました。

すると、すぐに担当地域のセコムに連絡してくれて、担当地域のセコムから、うちに電話がありました。

パン屋さんと連絡がついて、パン屋さんのスタッフが3時間以内に換気扇を止めに行きますということでした。

これで一安心だと思いました。

ただ、元日だったこともあり現実的に難しかったのでしょう、換気扇が止まったのは翌日の夕方でした。

それでも、換気扇が止まって静かになったので安心しました。

再び換気扇が回り始める

お正月休みも終わり、4日になったのですが、また屋根の換気扇が回り始めたのです。

2日に換気扇を止めた人と、隣の店舗のスタッフが別の人だったのか、あるいはどこの換気扇から異音がしていたのかがわからなかったのか、また換気扇が回り始め、異音が聞こえるようになりました。

ただ、お正月のように静かな状態ではなかったので、車の騒音などと混ざって、それほど目立って異音が聞こえるというほどではなかったのです。

しかし、ここで私の特有の問題が生じました。

最初に書いたように、私は耳が敏感なのです。

そして、異音が気になると、どうしてもその音が増幅されて聞こえます。

この異音は昨年も鳴っていたのでしょうし、何となく気になっていた程度でしたが、今やはっきりとその発生源がわかり、異音の周波数も明確に認識できた状況で、その異音が際立って耳に聞こえるようになったのです。

これはどうにかならないかなと思ったのですが、一度セコムを通じて元旦に連絡をするといった、考えようによってはクレーマー的に見える行動をしてしまったので、さすがに何度も換気扇のことを言うのは気が引けたのです。

それで、しばらくの間、我慢をしていたのですが、それが数週間続きました。

私は二階で執筆の仕事をしているため、窓を閉めていても、その異音が聞こえてしまうのです。

音を気にしないように心をコントロールしていましたが、やはり体を緊張させるような周波数の音だったので、これはきちんと相談したほうがいいだろうと思いました。

そこで一月の終わりに、意を決して、パン屋さんの事務所に行きました。

そして換気扇から高い音がするということと、築40年近い建物で、換気扇も劣化しているようなので、回し続けると危険かもしれないということを伝えました。

同時に、私は音楽関係の仕事もしているため、通常の人より耳が敏感で、余計に異音が聞こえてしまうということも伝えました。

スタッフの方は、すぐに社内で検討して対策をしますと答えてくれました。

スタッフの方は換気扇の話をはじめて聞いたようでしたので、やはりお正月に換気扇を止めた方は、店舗のスタッフではなかったのかもしれません。

ですから、お正月の件は知らずに換気扇を回していたのだと思います。

その後、スタッフの方がその換気扇の写真を撮りに来ましたが、すぐに換気扇が止まりました。

そして、換気扇はそれ以降、回ることはなくなりました。

すぐに誠実に対応していただき、パン屋さんには感謝しております。

(後に、パン屋さんは新しい換気扇に取り替えてくださいました)

音に異常に敏感な性質

このような話をすると、私の耳がおかしいのではないかと思われるかもしれません。

確かに、それは否定しません。

今回の換気扇の異音に関しては、うちの親もお正月に気になったと言っていたので、少なくともお正月の静けさの中では、かなり目立った音だったと思います。

ただ、それ以降もその音がずっと気になったのは、やはり私が音に敏感だからでしょう。

このように音にまつわる問題は、実は過去にもあったのです。


それは10年以上前ですが、私は赤坂のマンションを一年間ほど借りて生活していました。

マンションといっても、四畳半の部屋とユニットバスがあるだけで、キッチンすらありません。

当時、六本木で苫米地博士のクラスの運営をしていて、私は近くで生活するために、その近辺で一番安い物件を借りたのです。

その物件は、築40年近い物件でした。

その狭い部屋で寝ていたのですが、真夜中に上の部屋からギシギシという音がするのです。

一体何の音なのかわかりませんが、毎日、真夜中にギシギシと音がして、それがずっと続くのです。

私は、上の部屋の住人のベッドがギシギシと鳴っている音なのだと思いましたが、激しい音ではないので、きっと寝返りを打つたびに音が鳴っていたのではないかと思います。

しばらくの間は、ずっと我慢をしていましたが、その音が気になって夜も眠れなくなってきたので、大家さんに相談しました。

そのマンションは、分譲マンションをオーナーが個別に貸し出しているので、部屋ごとに大家さんが違っていました。

大家さんは、管理会社にクレームをつけて、上の部屋の住人ともやり取りをしてくれましたが、上の部屋の住人は、自分たちは静かに生活しているので言いがかりだ、といった態度でした。

その後も、ギシギシ音はずっと続いたので、ついに真夜中に管理会社の人に部屋に来てもらったのです。

「今、音が聞こえていますよね。ギシギシ鳴ってるでしょ?」

「うーん、何も聞こえないですよ」

「いや、よく聞いてください。ギシギシ音がしてるじゃないですか」

「聞こえないです」

こんなやりとりが続きました。

その管理会社の人は、高齢の男性だったので、余計に耳が悪かったのだと思います。

そして、管理会社の責任者の人から、ICレコーダーで音を録音してくださいと言われました。

そこでICレコーダーで録音しましたが、明確に聞こえるほどの音量で録音することはできませんでした。

結局、私の耳がおかしいという結論になったようで、対策は何も成されませんでした。

しかたがないので、私は自分の部屋にも関わらず、耳栓をして寝ることになりました。

HSP 敏感な人たち

このように、私は明らかに聴覚が敏感なのですが、実は聴覚だけではなく、他の五感も同じように敏感なのです。

他の感覚に関するエピソードは、またの機会に書きたいと思います。

このように感覚が敏感であるというのは、ある一群の人たちに際立った特徴なのだそうです。

その人たちのことを、ハイリー・センシティブ・パーソン(Highly Sensitive Persons)、略してHSPと呼びます。

とても敏感な人という意味ですが、このHSPは心理学の用語です。

エイレン・N・アーロンという心理学の研究者が提唱した概念です。

アーロン博士によると、生き物(人類だけではなく、動物も含めて)の5人に1人は、HSPであるということです。

つまり、20%もの人々が、非常に敏感な性質を持って生まれているそうです。

そして、その中からさらに超敏感な人がいて、この人たちの割合は、全体の4%だそうです。

では、HSPには、どういう特徴があるのでしょう。

HSPの診断テストがありますので、ご自分がHSPかどうかを診断してみてください。
 

12項目以上当てはまれば、HSPの可能性が高い。

□周りの小さな変化にもわりと気が付くほうだ。
□人の気分に左右されやすい。
□痛みに弱い。
□慌しい日が続くと、ひとりきりでぼーっとできる所に逃げ込みたくなる。
□カフェインに弱いほうだ。
□まぶしい光、強烈なにおい、ごわごわした布地の肌ざわり、サイレンなどの大音量は苦手だ。
□物事を深く考え、内的生活が豊かだ。
□騒音や大きな音には耐えられない。
□本や映画、音楽や写真・絵画など、芸術に心動かされやすい方だ。
□何かをするときは、いい加減にしないで、丁寧にする方だ。
□何事にもビクッとしやすい。
□短い時間に多くのことを抱えると、アタフタしてしまう。
□誰かが物理的な環境で落ち着かない思いをしている時(たとえば、電灯の明るさや席の位置)、どうしたら心地よくなるか、気づくタイプだ(明るさの調節、席の移動)。
□一度に多くのことを頼まれるとイライラしてしまう。
□ミスや忘れ物がないように、いつも気をつけている。
□バイオレンス映画や、テレビの残虐なシーンなどは、見ないようにしている。
□あまりにもいろんなことが周りで起きていると、気分が悪くなる。
□お腹が空きすぎると、集中力を欠いたり気分が乱れたりといった強い反応が起こる。
□生活に変化が起こると、混乱する。
□繊細で上品な香りや味、音や芸術などを好む。
□普段の生活では、動揺するような状況を避けることを優先している。
□課題(仕事)をやる際に、競争させられたり、見られたりしていると、緊張して、普段の実力が出せなくなる。
□子どもの頃、親や教師から、「敏感だ」とか「内気だ」とか思われていた。

出典:苑田純子(2015)『敏感すぎて困っている自分の対処法』きこ書房.

私の場合、ほとんど当てはまります。

このHSPのことを初めて知った時、私は、やっと自分のことを正確に説明してくれる概念が登場したと思って喜びました。

というのも、私は普通の人とは少し違うようで、人から変わっていると言われることが何度もありました。

そして私のことを、変わっている人だから発達障害(アスペルガーなど)だろうと思い込む人もいたようです。

そういう人たちに、発達障害のことをきちんと知っているのですかと聞いたら、ほとんど知らないのです。

つまり、世の中の多くの人は、ちょっと変わっている人を見ると、発達障害だと決めつけて納得するという傾向にあるのだと思います。

しかし、これは偏見であり、このような状況では、発達障害(アスペルガーやADHD)への理解も深まりません。

ちなみに、私は発達障害に関する診断テストもしたことがありますが、それらには該当していません。

私は、自閉症の子供たちとも交流がありましたし、アスペルガーや学習障害の人とも知り合いだったことがありますが、私の性質とはかなり違いました。

HSPと発達障害の決定的な違い

HSPと発達障害は、似ている要素もありますが、決定的な部分で違います。

それは、人間関係における同調性です。

発達障害の場合は、相手の考えていることがわからず、空気が読めません。

しかし、HSPの場合は、相手の考えることに過剰反応して、空気を読みすぎてしまうのです。

ここが決定的に違う点です。

たとえば、弟子やマネージャーという仕事をする場合、発達障害だとうまくいきません。

師匠の欲求を暗に読み取って、先回りして動かなければならないからです。

私自身は、こういう役割は非常に得意でした。

HSPは、感覚が鋭いということが人間関係にも直接的に影響を及ぼすのです。

ということで、私もHSP特有の苦労をたくさん経験したので、そのことについて今後も書いていきたいと思います。