後ろ姿
海に沈む夕日を観ている何人か若者の後ろ姿がありました。
赤く染まった大気の中、彼らのシルエットは美しい絵画そのもの。
明るい空気の中に黒いシルエットで描かれる後ろ姿。
影になって黒く染まった後ろ姿に、一人で生きる哀しみも滲ませて。
きっと、前面に回れば楽しそうに談笑しているのでしょう。
誰も、後ろ姿で哀しさを見せているとは思ってもいません。
それなのに、どの後ろ姿にも、人生の歴史が裸の姿で現れています。
そこにいた子供の後ろ姿にも、生きる哀しみが観てとれました。
観ているこちらは、勝手に哀しくなり泣きたくなって。
シルエットのトンネルを抜けて向こう側にある暖かい太陽に向かいたい衝動に
かられていたのです。
人生の哀しさなんか観たくない。
それでなくても充分に哀しいのだもの。
でも、もう観てしまいました。
若者の生きる哀しさを、独りぼっちって生きる哀しさを。
その後ろ姿から。
きっと、彼らは並んで夕日に向かって、楽しい話をしていたのでしょう。
さあて、これからどうする?
飯でも食いに行こうか?
俺達、誰も哀しくなんかないっすよ。
これからビヤホールでいっぱい楽しくやろうぜってことになったんですから。
ご心配なく。
そんな彼らの後ろ姿は、いずれお互いに別れをも告げるのです。
もう一緒に過ごした時間は終わりだね、もうお別れだね。
じゃあな、バイバイ。