コロナウイルス対策で事業のほとんどが中止になってしまい、里地里山の保全活動もあまり進んでいませんでしたが、少しづつですが活動は続けてまいりました。
当会の実施する田んぼファンクラブ事業は、毎年大勢のメンバーの方に参加いただいていましたが、今年はイベントを行わず機械により農薬と化学肥料を使用しないお米の栽培を行いました。
その田んぼファンクラブ事業は、生き物と共生したお米作りがテーマですので、米作りと生き物との共生の具合を定期的にモニタリングしています。
今年は、6月と8月に簡易的な捕獲調査を行い、田んぼに棲む水生動物の種数と個体数を調べました。
調査方法は、たも網で退避溝部分と水田部分それぞれ5回ほどランダムな場所を掬い取って、採集された水生動物の種類と個体数を記録します。
その結果、水辺の会の田んぼファンクラブの田んぼは、水生昆虫類が多いという結果でした。
まず、種数については6月8月ともに昆虫類が最も多く8種類確認されています。
個体数については、10回の掬い取りの結果100個体以上の水生昆虫が採集できました。1回掬い取っただけで10個体以上採集できる計算になるので、それなりにたくさんの昆虫がいるようです。
最も多かったのは、6月がコミズムシ(水生カメムシの仲間)そして8月がコガシラミズムシ(水生甲虫の仲間)でした。
どちらも1㎝も満たない小さな水生昆虫です。
ただ生き物調査の結果を見て気になったのは、水生昆虫に対して両生類(カエル類の幼生)や魚類(主にドジョウ)が少ないことでした。以前は、たくさん確認されたこともあったのですが、少なくなってしまったようです。
原因は、ここ数年の台風や大雨の際、用水路から大量の泥が流れこんで退避溝に土砂が堆積したことや、夏に雨が少なかったことによって、退避溝や水田の水位を維持するだけの水を十分に確保できず、田んぼ全体が乾燥化していることが考えられました。
コミズムシやコガシラミズムシなどの水生昆虫は、渇水時は飛ぶことで別の水域に逃げることができますが、カエルの幼生やドジョウなどは、田んぼの中に常に水のある場所がないと生息できません。
そこで、8月の調査の後、水生生物を保全するために田んぼに設けられている退避溝の泥上げ作業を行い、常に水のある環境が維持できるように修繕工事を行いました。
掘り返してみると取水口付近では、30㎝近くの泥が堆積していました。
この工事を行った後は、またしっかりと退避溝に水がたまるようになりました。10月には秋の生きもの調査を行い、問題が解決したかどうかを評価したいと思います。
ちなみに溝を修繕してからしばらくして、退避溝では野外コウノトリ2羽が餌を捕っていました。
もしかすると、彼らの餌となるドジョウなどが増えてきている可能性もありますので、秋の生き物調査の結果に期待したいと思います。