句会は「夏雲システム」で行っております。

このブログは公開の句会記録です。 

毎月18日に投句一覧をブログにアップします。

24日24時前に「夏雲システム」にて今回の選句選評を終了し、25日~26日このブログに結果を掲載します。あなたの選句選評をお楽しみください。

水の会では参加者を5名募集します。

会員をご存知の方はその人を介してお申し込み下さい。知人の居ない方は発表された選句選評の下段の補遺にメールアドレス等を掲載します。ご連絡ください。

投句一覧

1. 千枚田水の匂ひの植田風

2. コスプレの貴婦人日傘にもフリル

3. 薔薇の門潰えし辺り鬱蒼と

4. 棘のない薔薇は匂ひも棘がなく

5. 汗にじむ額や神田財務官

6. つくづくと芍薬の白深淵な

7. 過去の罪一切合切科戸の風

8. 百本の薔薇を贈りし母亡くて

9. フォービズムは夏だ万(よろず)鉄五郎だ

10. 緑風やどこに立ちても香ぐはしき

11. 白い薔薇欲しいと言ひし女の亡く

12. 薔薇の色重ねて夜を待つ

13. 花楓万のプロペラ風に乗り

14. 山躑躅緋色に燃えて黒揚羽

15. 太陽が怒りオーロラ見える初夏

16. まなうらの日差し眩しむ梅雨入りかな

17. 追ひ風も振り返ると向かひ風

18. 麦秋や鳶のごとくに鴉舞ひ

19. チェロの音の低く響きて薔薇館

20. 新茶届きて万年筆の便り

21. ごめんねと言えなくて薔薇15本

22. 色も香もなほ濃かりけり夜のバラ

23. にほやかに五月を込めて万華鏡 

24. オープンガーデン薔薇のアーチが我招く

25. つめたくてもう夕風か薔薇の園

26. せせらぎのごとく木洩れ日薄暑かな

27. 供ふれば夏花ともなれ椎の花

28. 腹の子のぐるんと動く炭酸水

29. 薔薇ふふむ雨のしづくの香ぐはしき

30. さつき雨葉先へ溜る落ちさうな

31. ホース車の稚鮎数万放流す

32. いつまでも薔薇は佇む雨の中

33. 夕凪やお向かいさんは特養へ

34. くれなゐは移ろはぬ色雨の薔薇 

35. バス通過ひとつばたご舞いあがる

36. 終日の茅花流しや列石址

37. 猫ばかり探してしまふ薔薇の園

38. 患者回復兆しなし万事休す

39. バラの香の漂ふなかのお弁当

40. 薔薇園に薄紫の風抜けて

41. 夏の一日吹かれて天狗風

42. スマホ機再起動不可万策尽きる

43. 奔放な薔薇に翻弄さるるまま

44. 夜更かしを叱られたっけ新茶汲む

45. 薫風の身体を抜けて過ぎていく

46. ラトビアの薔薇埋めつくす百万本

47. 薫風の尾上げ下げ耳はスイングドックラン

48. 万緑や日に一便の滑走路

49. 廃屋についでのごとき野薔薇かな

50. 命溢れ五月を走る柴子犬

51. 華やかに哀しい五月カンパネラ

52. 南薫や梅花藻咲く柿田川

53. 地下街の試飲の新茶くいと飲む

54. 木の芽どき?和えて食べちゃえ鬱の人

55. 新樹影水を啄む鴉かな

56. 万緑の風の名前を爽という

57. 一声をかけて金魚の水替へる

58. 身に覚ゆ罪のあれこれ薔薇に棘

59. 青嵐猫の頭は日の匂ひ

60. 出あふ径別れ径やも薔薇の園

61. 薔薇は咲くそして散るのが夢

62. 森へ還る途上の町の茂りかな

63. 薫風や走る犬の耳は翼

64. 命日の月を見ていゐ夏の宵

65. ばら咲いたつい鼻唄のいや古し

66. 馬糞雲丹かつて馬糞紙馬糞風

67. ショパン弾くピアノの少女薔薇を抱く

68. あるだけの武器焼く煙巴里祭

69. 一人暮らしの老人ばかり夏に入る

選句・選評

7点句

(特選)三空(選)掃部 かしこ 文代 武内 佐柳

万緑や日に一便の滑走路(安達潔)

*利用者の少ない島の滑走路でしょうか。「万緑」「一便」「滑走路」という最小限の言葉だけで景が力強く描かれています。──三空

*"離島"の飛行場をイメージすると、海に浮かぶ「万緑」の孤島がこんもり。──掃部けいじ

*能登空港を思い出しました。立て看板とか全く無くて、万緑が印象的でした。──さとうかしこ

*日に一便しかない滑走路のある離れ小島。何もない静かな島。空からの俯瞰、まるで鳥になったかのような視点が拡がる。豊かな自然、溢れる緑がどんどん間近に迫る。小さな飛行機が降りていくのが見えるよう。──文代

*のと里山空港に降りた時 1日1便と聞いた。小さな空港。 多くのものを必要としないといった印象を受けた。現在も毎日 運航しているとのこと。一日も早い復興を!!──武内

*ほのぼのした風景か、と思わせて…ここに来たら帰れない、ここから飛び立てばもう帰って来れない、そんなうっすら怖い感じも漂うのです。──佐柳恵美子

*予選──一便は定期便なんでしょうね。緑濃い離島なのでしょうが維持可能なのでしょうか。──白浜和照

*──赤字でも飛ばす、、この一便があればこその成り立つ暮らし。

ありがたい。──紫苑


6点句

(特選)佐柳(選)掃部 半田 白浜 安達

一声をかけて金魚の水替へる(三空)

*一声かけて、にこの方の優しさと日常が現れています。上手いなぁ。──佐柳恵美子

*ペットの居る生活。「一声かけて」のなにげなさが優しい。──掃部けいじ

*この一声は金魚にかけた、のだとしたら楽しい。

私の記憶ですが、水を汲んで、半日ほど置いておく。金魚鉢の水は半分残して、その水と取り換えていたかと思う。

きれいな水の中を嬉しそうに泳ぐ金魚。夏の日の一日を思う。──半田真理

*俳句の良心の様な句。金魚に話しかけているのでしょうね。日常の静かなひと時のサラリと豊かな描写。特選の人も何人か居そうです。昔、金魚を飼っていた頃声をかけていたかしら。──白浜和照

*これ、あるなあ!ひょっとして、「を」を「水」の後ろに持ってくるテも、あるかもしれない…。──安達潔

5点句

(特選)掃部 白浜(選)武内

腹の子のぐるんと動く炭酸水(佐柳恵美子)

*「ぐるん」の擬態語で頂き。実感の強み。「炭酸水」の"刺激"との取り合わせが絶妙!ただ季語「炭酸水」を上五に置いて"きれ"た方が衝撃度がアップと思いますが、その場合中下句の措辞の納まりにもうひと工夫が必要となりますが。──掃部けいじ

*これは妊婦の句なのでしょうか?そうであるとして読んでいます。「ぐるん」の肉感性が凄いですね。また泡と刺激がシンプル、炭酸水が見事です。ソーダ水では甘さが生々しさを殺します。取り合わせとは承知ですが、炭酸水が子の動きの原因とも見える男性としては実感不能感も魅力です。──白浜和照

*胎児と直通。音や母親の精神状態も真っ直ぐに届く。無事 誕生を祈ります。──武内

(特選)かしこ(選)掃部 安達 三空 

新茶届きて万年筆の便り(半田真理)

*万年筆で礼状を書く誠実さ。奇特になりました。──さとうかしこ

*最近はあまり見ない「万年筆」の文字。レトロな味が喚起されます。──掃部けいじ

*アナログ万歳。新茶の香には、手書きの手紙。なのだ。──安達潔

*新茶に添えらた万年筆で書かれた手紙。心がこもる黒くひきしまった文字がより新茶の味を引き立てることでしょう。──三空

*予選──新茶も嬉しい。しかし万年筆の文が添えてあるのは更に嬉しく懐かしい。──紫苑

*──佐柳恵美子


4点句

(特選)安達 きなこ

せせらぎのごとく木洩れ日薄暑かな(白浜和照)

*平易だけれど清冽な音の喩えが「木漏れ日」にとてもよく響いていると思いました。知らず知らずのうちに木漏れ日に耳を澄ます、「薄暑」をそんな風に捉えた作者の感覚を、読みながらこちらも共有できるような幸福感が湧いてきます。個人的には、〈木漏れ日薄暑〉と繋げてみると何だか新しい成句のように思えたりして…。季語がくっきり立ち上がって来る、新鮮な一句だと思いました。──安達潔

*さらさらと揺れうごめく木漏れ日は、確かにまるでせせらぎのようです。視点が新鮮。──きなこ

*予選──佐柳恵美子

(特選)武内(選)半田 安達

百本の薔薇を贈りし母亡くて(文代)

*「死の句」? いや! 生前 とても薔薇が好きだったのだろう。 もう少しで百歳を迎えるはずだったか?場所は墓前 母がいた部屋?薔薇の香りが漂っていそう。──武内

*それは百歳を迎えられたのちに、ということなのだろうか。ありったけの思いを込めた百本の薔薇なのだろう。──半田真理

*いつの間にか母の年を越えて、そう言えば、と母を思い出していることに気づく自分…。薔薇好きの母に二本、三本、機会あるごとに、数えた訳ではないけど、百本は贈ったっけ。今は亡き母と娘の間の不思議に緊密な距離感。時には黄色いバラの混じっていたこともあったりして。時系列に沿ってそれぞれに立ち上がって来る、様々の薔薇。なるほどなあ、でした。──安達潔

*予選── 紫苑

3点句

(特選)紫苑(選)文代

ごめんねと言えなくて薔薇15本(武内)

*15本の薔薇は何色かしら?

色に、数に、グッと込めた気持ち。わかってもらえたんだろう。ごめんね、、って言えたら楽。でも薔薇に託してカッコいいなぁ!──紫苑

*喧嘩して意地はって、ごめんねと言えなくても、15本の薔薇がちゃんと謝ってくれる。だって15はごめんという意味だし、言葉より薔薇のほうが、もっと女心をくすぐる。──文代

(特選)半田(選)掃部

華やかに哀しい五月カンパネラ(きなこ)

*カンパネラというと、フジコ・ヘミングさんの逝去を思う。5月という木々の緑が濃くなり、爽やかな風が頬を撫でてゆく。そんな光に溢れた季節に旅立って行かれました。

私の記憶では、おそらくNHKの番組に初めて取り上げられた時に、耳にした音は、音楽家でもない私にも「なにか違う」と思わせた音だった。明らかに違う音をテレビの音声でなく、直接耳にしたらどんなであろうかと言っている間に、チケットが取れなくなりました。ご冥福をお祈りいたします。──半田真理

*リズム・流れが"俳句は韻文である"ことを満たしている一句。「華やかに哀しい」は俳句では疎まれるが、何と言っても「カンパネラ」が小気味良い。──掃部けいじ

*予選──紫苑

(選)かしこ 武内 三空

千枚田水の匂ひの植田風(さとうかしこ)

*だんだん田んぼの千枚田に、早緑の苗が植えられて、風に靡いている。その光景、見たことがある。植田風って言うんだ。爽やかな水の匂いがする風。──文代

*さざ波が立ち 風が通った時 苗の匂いもした記憶が·····。──武内

*緑に染まる千枚田を渡る植田風を描き、実に気持の良い句です。──三空

(選)佐柳 三空 半田

薫風の身体を抜けて過ぎていく(文代)

*ああ、まさにこの感じです!──佐柳恵美子

*確かに薫風に吹かれているとそんな感じがしますね。薫風が身体の中を通り抜けていき身体がきれいになったような気がします。──三空

*風は我が身を抜けてゆく。吹かれているのではないのだ。ここが、句の眼目。──半田真理

*予選──季語と「身体」との取り合わせ。心地よい風が抜けて元気も出てくる。──武内

(選)かしこ 佐柳 きなこ

廃屋についでのごとき野薔薇かな(白浜和照)

*ついでのごとき、か侘しさを協調性しています。──さとうかしこ

*ついでのごとき、で野薔薇の可愛らしさが見えてきます。──佐柳恵美子

*廃屋は人間の都合。そこに命のもとがあれば花は咲く。ついでではありません。咲きたくて咲いているのです。──きなこ

2点句

(特選)文代

薫風や走る犬の耳は翼(佐柳恵美子)

*走る犬の耳は翼というのがよくわかる。わが家の赤柴はまるで狼犬のよう。すらりと長い後ろ足をしていた。走るとあたかも風のよう。風をきる立った耳は翼。薫風の中を奔っていた姿が目に浮かぶ。あの子は風になって、行ってしまった。忘れない。──文代

(選)安達 きなこ

青嵐猫の頭は日の匂ひ(佐柳恵美子)

*「青嵐」とこの取合せ、とても腑に落ちました。句の焦点がもうあと一歩「日の匂ひ」迫ることもできたのでは、とは思いましたが、日常の中から「青嵐」の深みがよく伝わって、〈猫の頭侮るべからず〉でありました。──安達潔

*頭頂部はお日様の匂い。後ろ頭の可愛いこと!今日もたくさん日を浴びて・・・。──きなこ

*予選──恋猫も うかれ猫の頭は お日さまの匂いがします。──武内

(選)紫苑 三空

チェロの音の低く響きて薔薇館(文代)

*あの低音が館に響く。庭にはとりどりの薔薇、薔薇、薔薇。お洒落なひと時。良いなあ。贅沢の極み。──紫苑

*チェロと薔薇はよく響き合います。広々として清浄な洋館の薔薇とチェロがはっきりとイメージされます。──三空

(選)武内 佐柳

佐柳ショパン弾くピアノの少女薔薇を抱く(文代)

*発表会で優勝した記念写真のカットか?薔薇の色 衣装の色も想像を与えてくれる句。──武内

*発表会でショパンを弾く少女。子犬のワルツと勝手に予想。ピンクの薔薇の花束を抱えているのは少女か、見守る人か。──佐柳恵美子

(選)白浜 紫苑

緑風やどこに立ちても香ぐはしき(さとうかしこ)

*薫風そのものです。薫風やとすると季語の説明になり頂けませんが、緑風とすることでゆったりと豊かな表現となっています。十数年前多分似たことをした時、栗島先生から「季語の説明ですが、こんなやり方もあるんですね」と言われた事を思い出します。聖五月の貌の一面とも。──白浜和照

*香しいがピタリ。森を吹き抜ける風さえ緑。体が喜んでいることがわかる。──紫苑

*予選──散歩中 ジャスミンの花の香りがあちこちから。まさに「香ぐはしき」──武内

*──佐柳恵美子

(選)掃部 紫苑

太陽が怒りオーロラ見える初夏(きなこ)

*地球環境異変への「怒り」?──掃部けいじ

*太陽が怒る、今や地球全体が怒り出したのではないか。熊が人を獲物だと認知し始めたなどなど自然界からの逆襲ではないかと深刻度は増すばかり。──紫苑

1点句

(選)文代

薔薇ふふむ雨のしづくの香ぐはしき(さとうかしこ)

*ふふむって、蕾が膨らむ事なんだ。膨らみかけている薔薇に雨が降っていて、しづくが香ぐわしいなんて、、もっと、薔薇の蕾が初々しく美しく見えてくる。──文代

*予選──半田真理

(選)文代

花楓万のプロペラ風に乗り(さとうかしこ)

* 花楓とは、なんと美しい言葉。目に浮かぶ。その楓の種が万のプロペラになって風に乗って飛んでいく。万のプロペラの表現が面白い。一斉に飛ぶとすごいだろうな。いろんな所で芽を出すのだろうか。今、小さなのを育てている。──文代

*予選── 飛行するのを想像するだけで、植物の不思議さを思います。──半田真理

(選)白浜

ホース車の稚鮎数万放流す(さとうかし こ)

*調べる楽しみをありがとうございます。放流は匹数やキロで計られるのですね。言われなければ良く分からない情景。作者の作意通り、無知な者として「ホース車」と「鮎」の言葉の意外な取り合わせが魅力的です。──白浜和照

(選)佐柳

つくづくと芍薬の白深淵な(三空)

*このような句を作ってみたいです。美しい。──佐柳恵美子

*予選──狩野探淵「華麗な草花」の芍薬ですね。狩野派の絵は好きです。──武内

(選)武内

麦秋や鳶のごとくに鴉舞ひ(三空)

*「麦秋」麦の収穫を迎えるころ。鴉も豊作を祝っているのだろう。

私も「麦秋」の句を試みたが纏まらず諦めてしまった。──武内

(選)きなこ

さつき雨葉先へ溜る落ちさうな(三空)

*おっとっと・・・。まんまるの水滴が。──きなこ

(選)半田

まなうらの日差し眩しむ梅雨入りかな(安達潔)

*夏を迎えて、つかの間の日々。光まばゆい、風の青い毎日。やがて来る梅雨入り。──半田真理

(選)白浜

供ふれば夏花ともなれ椎の花(安達潔)

*定型の素晴らしいリズムと格調のある言葉。しかし、この句は真面目な顔のシレッとしたナンセンスなのでは。匂いの好悪は人それぞれで、椎や栗系統を好む人も居るでしょう。天上の香だと強弁すれば、そう思う人も必ず現れます。花穂も何やら天人の髪飾りや天蓋の房とも見えて来ます。椎の花は飾られた訳ではなく、飾られるものでもない事を作者は良く承知しての句と思っていましたが、色々書いてみれば夏花にありかも。──白浜和照

*予選──紫苑

(選)半田

あるだけの武器焼く煙巴里祭(安達潔)

*なにかの変化を起こそうとする時、武器を取ることなく行えないのであろうか。──半田真理

(選)かしこ

身に覚ゆ罪のあれこれ薔薇に棘(掃部けいじ)

*薔薇にも罪があります。だから棘があるのです。そう思いました。──さとうかしこ

(選)かしこ

ばら咲いたつい鼻唄のいや古し(掃部けいじ)

*半世紀前の話を分かるというのが辛い。──さとうかしこ

*予選──ば~らがさいた、ば~らがさいた・・・♪こんな歌がありました。──きなこ

*──半田真理

(選)白浜

馬糞雲丹かつて馬糞紙馬糞風(掃部けいじ)

*素晴らしい俳味可笑しみの馬糞三連発。作者は有季定型本流の人だと思えます。初春でしか無い馬糞風を「かつて」を置くことで季語から外しました。雲丹は今は春の季語らしいのですが以前は夏だったとの事。あやふやさも含め雲丹の句となさったのでしょう。

先ず馬糞風から作句されたのでしょう。良い兼題との出会いでした。馬糞が日常目にされていた頃の言葉三つです。全て想像ですが、馬糞雲丹が最も古く蝦夷が一般語になる以前。馬糞風は東北にもあったのかも知れませんが北海道開拓時代。その後馬糞紙、純正馬糞紙はもう作られていないのかも知れませんが。

「糞便の文化史」と言うかなり厚手の本が書ける内容です。その巻頭はこの句から。内容を少しだけ想像してみます。

馬が運搬農作業等で活躍した時代。交通インフラとして船との併存が長く続いたのでしょう。当時馬糞は街道至るところに落ちていたのでしょう。日本では集めて肥料にしてのでしょうか。

「ベルサイユのバラ」時代のベルサイユ宮殿の庭の茂みには人糞が一杯だったとの事。また、ヨーロッパ発の香水は人糞の匂いを稀釈したものに近いとの事。

日本でも人間の屎尿は重要な肥料として売買されておりました。五十年程以前畑の畦に変色した落し紙が点々としとても汚く感じました。

牛馬羊の糞は乾かして燃料とし、牛糞は壁材としている世界が現在もあると思います。

公衆衛生と言う価値観が発生する19世紀半ばまで、様々な糞は大変身近でした。世界では、コッホ以後注意すべき対象になったのでは?

日本では糞と便との分かれ目が公衆衛生教育の始まりなのでは。山松ゆうきち作「くそばばあの詩」と言う漫画に、「うんこほど汚いものはない」と言う言葉がありました。多分戦後公衆衛生の徹底で、小学校教育の賜物だと思われます。一部現在の病的潔癖人の価値観の核となっているのでしょう。

排便の様子は生理であり恥ずかしく思う必要の無い姿勢です。現在の中国でも田舎では扉の無いトイレがあると思います。インドでは畑の横で海の波打ち際でしゃがんているのを車窓から眺めていました。

この句は当然特選です。選べるのは一句なので長々の感想にさせて頂きました。──白浜和照

(選)きなこ

森へ還る途上の町の茂りかな(白浜和照)

*町そのものが森へ還る途上なのですね。

消滅都市?そしてすべては変わっていく。──きなこ

(選)安達

一人暮らしの老人ばかり夏に入る(白浜和照)

*これはほとんど我が団地の風景で、ひどく納得。ただ、「ばかり」は少し惜しい感じで、団地暮らしの実感からすると「あまた」かなあ、とも思ったり…でした。──安達潔

(選)紫苑

白い薔薇欲しいと言ひし女の亡く(文代)

*渡せぬうちに逝ってしまわれた。白薔薇はあまり目にしないが束ねたら清楚でいいだろなあ。贈りたかったですね。──紫苑

(選)きなこ

棘のない薔薇は匂ひも棘がなく(佐柳恵美子)

*あーそうなんですか?棘のないもの、毒のないものはちょっと物足りないかも・・・。──きなこ

(選)紫苑

山躑躅緋色に燃えて黒揚羽(きなこ)

*色の取り合わせが素敵です。

くっきりと目に見えるようです。──紫苑

(選)三空

いつまでも薔薇は佇む雨の中(半田真理)

*薔薇に感情移入された句、心の優しさが現れています。──三空

0点句

追ひ風も振り返ると向かひ風(佐柳恵美子)

*予選──確かに!当たり前と言えば当たり前なのに、可笑しい。──きなこ

*── 紫苑

猫ばかり探してしまふ薔薇の園(佐柳恵美子)

*予選── 薔薇を見に来たんでしょ?ウフフフ。──きなこ

色も香もなほ濃かりけり夜のバラ(掃部けいじ)

*予選──紫苑

くれなゐは移ろはぬ色雨の薔薇 (掃部けいじ)

*予選──半田真理

汗にじむ額や神田財務官(白浜和照)

*作者コメント──文武両道趣味多彩、愛嬌もおありとか。神で真人。さて、一票入るか?──白浜和照

フォービズムは夏だ万(よろず)鉄五郎だ(白浜和照)

*予選──あの独特の筆致は、強烈ではある。──半田真理

木の芽どき?和えて食べちゃえ鬱の人(きなこ)

*予選──これは俳句ではありませんが、色々の工夫と冒険ご苦労様です。その様々が楽しかったと思われます。そこに0点ですが一票。句意は五月病の事だと思われます。駄洒落で励ましていますが、本当の鬱ならば関わって欲しくない人。寂しさや気ふさぎならば、元気付けられる人もいるのかも。──白浜和照

万緑の風の名前を爽という(きなこ)

*予選──格好いい!! 「爽」一字から 深呼吸をし 家の掃除もやる気が起こる。──武内

過去の罪一切合切科戸の風(武内)

*予選──紫苑

終日の茅花流しや列石址(安達潔)

*予選──列石址と言う言葉はあるのでしょうか。環状列石は日本にも何箇所かあるのは知っておりますが。茅花流しが綺麗です。茅花を初めて見たのは十年くらい前信州の温泉の外れです。趣きのある花穂が吹かれておりました。ただ、繁殖力の強い草で見つけたら抜く抜けなければ刈る数度刈ればと生えなくなるとあり、手入れの良い農地等には生えていない様です。句の字義通りならば、現在は列石は無く従って手入れもされていない場所なのでしょうか。茅花流しは無常観の表れとして。一日遺跡もしくは遺跡址周辺で過ごされたのですね。──白浜和照


総評

*初見の風の名前が二つありました。馬糞風と天句風また、緑風もありそうで句では初めてかも。特選一句の決まりですが、種類が異なり比較が出来ない回が殆どです。さて、ご意見はございますか?──白浜和照

*兼題の風、どんな風があるが調べてみた。すごい!こんなに沢山の風の名前があるのか。季節ごとにいろんな風が吹く。いろんな地方の風もある。季語になるものも、ならないものも。新鮮だった。いつか、使えるといいな。

 この前、イングリッシュガーデンに薔薇を見に行ったばかりだった。様々な色の、種類の薔薇づくし。うっとりと、薔薇に浸る。薔薇は美しい女のようでもあり、内面をも表す。薔薇を詠んでいる句も多かった。薔薇を見て人々はどんな思いを抱くのだろう。──文代

*ちょっとした生活の一コマの中に季語を置き直すと、それがぐんと立ち上があってくる俳句の愉しみ。緩やかにモノを愛でる平和な時間。爽やかな初夏、栗島教室の佇まいが思い出されました。──安達潔

*「風の名前」と組み合わせに悩んだ。(談話室が開かないので) 47の句は 近所の庭で犬が遊んでいた時

尻尾と耳の動きを観察。犬の種類によって違うと飼い主が言われ 小型 中型 大型犬 少しづつ違っていた。どの犬も「私が主役」と駆けていて 毛並みがウェーブし輝いていた。その時「風」を感じ句を詠んだ。が 纏まり悪く字余り。63の作者の句はスッキリ! 「耳は翼」わっ!まったく浮かばなかった。 力の無さも どうすれば季語を 自分にいかに引き寄せるか?毎月考えるが いつも「サンドイッチ」の ような句。中七が上五 下五のどっちにかかっているか?わからない句ばかり。──武内

*五月はさすがに句も清々しいものが多く、読んでいて気持が良くなりました。──三空

*風邪でグズグズ、やっとこさの選評でした。かぐわしい薔薇の季節というのに・・・。

投句の全体が薔薇の匂いの中にあるようでした。「万」は無理やり2~3考えてみましたが難しいのでボツにしました。

皆さまも、暖かくなったと油断なさいませんように。──きなこ

*薔薇にはある種の思い入れが出やすく、難しい季語でした。はぼ一年中、咲いているので他の季節でも積極的に詠みたい。

風の名前で詠むのは、ちょっとムリがあったかもしれません。──半田真理


[ 兼題出題 ] 
☆半田真理

補遺
[ 水の会参加要領 ]
☆会費無料。
☆参加資格、俳句が好きな方。
☆投句締切、毎月17日23時55分。投句数(5~7句)当季雑詠、兼題あり。
☆選句選評締切、毎月24日23時55分。選句選評数(5~7句)選評字数制限無し。
☆スマホ・PCどちらでも参加可能です。
☆上記は、夏雲システム(ネット句会の自動進行ソフト)を利用させて頂きます。
☆過去このブログは同時進行の句会でした。 現在は原則、句会の公開記録です。アップ更新は上記締切日の1~2日後です。
☆参加ご希望の方は下記メールアドレスまで。

kairasz-a@yahoo.co.jp

水の会は故栗島弘先生が主宰なさった句会の一つです。先生の句とお人柄が好きな人と、先生が他の句会で面白く思われ誘われた人で成り立っていました。現在もその人達が中核です。

夏雲システムを使ったネット句会は非常にクールで公平です。
また、現在の水の会は選句選句に一週間の時間があり対面の句会とは質が大きく異なります。
その時間作業は必然、自分への向き合いを深めて行きます。
「より自分自身にそしてオリジナルに」栗島先生の創作精神だと思っております。
ネット句会で最もスリリングだったのが、参加者14人・投句5句・6句選でした。
ご参加お待ちしております。
水の会事務