句会は「夏雲システム」で行っております。

このブログは公開の句会記録です。 

兼題出題 紫苑

投句一覧

1. 指触れて水面揺らめく春灯し

2. 春灯この世あの世をつなぐ道

3. わたくしで系譜は終わり春灯

4. 薪燃えつきて春燈を消し眠る

5. 春灯工業地帯琥珀色

6. 春灯や影の揺らめく有楽窓

7. 紅梅の散り残る空昼近し

8. 朝の水のむヤマガラの口に春

9. 水かげろふ隠れて蛇の枝を這ひ

10. 句会開始の春の鐘

12. 一連の目刺今朝二尾夜三尾

13. 種浸し星満天を見開ける  

14. ホーホケキョうまくなったね裏の庭

15. 丸障子仄めく光水陽炎

16. 春燈下戦場といふ場所知らず

17. 曲がり水酒盃流るる雅歌

18. 春灯背中に何を語りたいのか

19. 春の雨あの黒猫の訃報聞く

20. うるう日の万華鏡カタンカタンカタン

21. 三日かけ白木蓮ひらく仏壇に

22. そこかしこ寂しき話し藪椿

23. 春灯片付けの本放り出し

24. 海市のぞくため伸びしキリンの首

25. 春灯の揺らめき去りし人恋し

26. 春灯誰かのため息漂へり

27. 春めくや欅につどふ雀たち

28. 下鴨の御手洗池やさざれ水

30. 伏水の酒蔵巡るや伏見酒

31. きよらかな境内歩く木の芽かな

32. たつぷりの花瓶の水に花ミモザ

33. 音もなく水は暗渠へ春の町

34. 二月堂生駒へ続く春灯

35. 流氷の他なにもなく無人駅

36. 半島を出る春風のごと大詩人

37. 種蒔いて土頼もしや水捧ぐ

38. 屋根替へや重機補ふ藁ばさみ

39. 知らぬ人でも会釈する田舎道

40. 橋脚に春の水影踊り出す

41. 真つ白な団子にあんこ梅林

42. 幸せの数ほど野辺のいぬふぐり

43. 春灯第一感で嫌ひです

44. ついッついッ町の岸辺の花菜かな

45. 春宵や祇園随一花篝

46. 噴水に春雨の降る一日かな

47. 花を巡りて清らかな水に至る

48. 春灯にほのかに浮かぶ観世音

49. 春灯やランタン飛揚咲き零れ

50. 春灯にカナブンがくるヤモリくる

51. 菜の花や町すみずみに用水路

52. 花巡る師の足跡を追ふやうに

53. 水鳥も泳がぬ鳥も春の池

54. 雛あられいろあはあはといとあはれ

55. 隆起せし水なき輪島の春灯し

56. ものみなに終わりのあればいとおしく

57. 枕辺に寄する雨音春の音

58. 白木蓮かぜの便りの二つ三つ

59. 雪解けの水流れゆくぶなの森

60. 春灯水に流せぬ事もあり

61. 指で追ふて学ぶハングル春燈

62. 待てば母いまかげらふを脱けられし 

63. 寒中の蔵人の歌酒造り

64. 春の日やいつも黙つて進む雲

65. 春めきて幾万の細胞に力

66. アールグレイ、エリックサティ春の午後

67. 水の出ぬ能登の暮らしや春灯し

68. 辛夷咲く上昇気流つかまへて

選句・選評


6点句

(特選)三空(選)白浜 佐柳 きなこ 文代

音もなく水は暗渠へ春の町(安達潔)

*暗渠というすごい言葉に驚きました。インパクトがあります。限りなく吸い込む暗い空間は春の町だからこそ生き生きとしています。──三空

*小川や用水路は都市化される事で暗渠とされます。音もなくは無用とも思えますが、都市に底流する暗渠の不穏さへの導入となっております。春の町は大震災前の東北とも、いづれ訪れる災害の前夜の描写とも。「明日も続く今日」の、無自覚の確信への警鐘とも。──白浜和照

* 暗渠と聞くとわくわくします。

都会の道の下、そこは暗渠で地上からは聞こえないけれど水が流れているのです。──佐柳恵美子

*音もなく静かに暗渠へ吸い込まれていく水に、歴史ある静かな街並みの春の気配がうかがえます。──きなこ

*うまいなあ。この句。どこからか、音もなく、見えもしないのに、暗渠に流れ込んだ春の水は春の町を潤して行く。しっとりとした温かさを感じる。──文代


5点句

(選)紫苑 三空 佐柳 安達 きなこ

わたくしで系譜は終わり春灯(白浜和照)

* 春灯が何やら心に残る一句。割り切れば簡単。そうもいかぬ気持ちが春灯にぴったり。──紫苑

*残念な心情が「春灯」でより心に迫ってきます。──三空

*重い事なのかもしれないのに、春灯という季語で風景に紗がかかりぽうっとしたなんとも言えない軽妙な雰囲気になり、惹かれました。──佐柳恵美子

*春灯下の孤心…。春って結構、心ぼんやり乱れたりして、それでもやっぱり、ふと気を取り戻す。そんな感じ、下五「春灯」からそんな感じが伝わって来るように思えました。──安達潔

* 同じ境遇でございます。寂しくもあり、サバサバ感もあり・・・。──きなこ


4点句

(特選)半田 掃部

指触れて水面揺らめく春灯し(文代)

*指で触ったら水面が揺れた、としか言っていませんが、同じことを表記の違いで、なんとも艶めいて感じさせています。

あとは読み手の想像の世界。どんな所、光の加減、そこには誰がいるのか。季語の春灯しは、様々のあれこれを膨らましてしまうのです。

この句からは、その灯しもまた揺らめいて、心も揺れているという、危うさも含んでいるのを感じます。──半田真理

*季語にぴったりの情景。「指触れて」の触覚が春の感覚充分。──掃部けいじ

*予選──水の感触。ポカポカ陽気。皮膚の感覚。諸々 伝わってきます。──武内

(特選)紫苑(選)半田 三空

白木蓮かぜの便りの二つ三つ(白浜和照)

*白蓮の花びらが舞う季節。寂しい話も嬉しい事もふと耳にした。花びらはいつしか吹かれてなくなって、、。悲喜交々がやってくる春半ばである。二つ三つがいい。──紫苑

*この白い花が咲く頃になると、あの人にもこの人にも手紙を書きたいと思う。そうしているうちに、特に今年は、逝ってしまわれた人がおられます。

迷わずに、パッと書いて出せばよかったのに。後悔の涙がポロリ。──半田真理

*吹かれてしなる白木蓮の大きな花びらは、風の便りを受けているかのようにも思えます。──三空

(選)半田 掃部 紫苑 文代

たつぷりの花瓶の水に花ミモザ(佐柳恵美子)

* ミモザの花もそうですが、ふさふさの枝葉も目にうかびます。抱えてきたミモザに、お水もたっぷりあげましょう。

(なぜかミモザの句には、抱えるという語が多いですよね)──半田真理

*「たっぷりの」「水」が春の花の季語に素朴に響きます。──掃部けいじ

*たっぷりが似合う。こんもりと窓辺に飾られたあの黄色は心躍る。──紫苑

*ミモザが咲いたと言って、豊かな黄色い溢れるような花の写真を友が送ってきた。下から見上げると嬉しくなる。たっぷりの花瓶の水がいい。ぐんぐん水を吸い上げる春の勢いを感じる。──文代

(選)掃部 白浜 武内 佐柳

辛夷咲く上昇気流つかまへて(さとうかしこ)

*「上昇気流」がいかにも高々と咲く辛夷を捉えています。──掃部けいじ

*大木の辛夷が満開の的確な描写、確かに辛夷以外はあり得ません。素晴らしい掴み、空間の拡がりと春の空気の清々しさ、希望やエールまでも感じられます。作者の代表作では。こちらが特選だったか。──白浜和照

*山林に自生している辛夷。風にもめげず中七 下五がとてもとてもいい!──武内

 *辛夷の花は上昇気流をつかまえているからあのようなのか!辛夷の花から青空へ見上げて自分も万歳した景色です。──佐柳恵美子

3点句

(特選)佐柳(選)きなこ

種蒔いて土頼もしや水捧ぐ(掃部けいじ)

*人と大地の信頼関係を見た気がします。──佐柳恵美子

*すべてを育む土の偉大さ!そしてすべてはあなたに帰ります。──きなこ

(選)白浜 かしこ きなこ

待てば母いまかげらふを脱けられし (掃部けいじ)

*「待てば母」と印象的な始まりです。作家性が伸び伸び発揮されています。このかげろうは彼岸と此岸の境なのでしょうか。一句として完結していると言うより、「ここまで」「これから」の物語を宿しております。俳句として落ち着かせていない表現のオリジナリティーは、作者の代表句になるのだと思います。──白浜和照

*選評の難しい句です。これは現実なのか幻想なのか、わからないからです。しかし母上を思う心の優しさが伝わります。──さとうかしこ

* ゆらゆらとしたかげらふの中の母は、まるでかげらふと一体化したかのように頼りなげに揺れて見える。

そこを抜け出てこちらに歩いてくる母を見て何となくホッとする。──きなこ

(特選)かしこ(選)掃部

橋脚に春の水影踊り出す(白浜和照

*水陽炎ですよね。この光景は私もよく出くわすのですが、踊りだす、とまで発想が行きませんでした。水陽炎として詠もうとしたからでしょうね。──さとうかしこ

*「橋脚」という位置表現が「踊り出す」の下五の情景を生かしてます。──掃部けいじ

*予選──下五の動詞 「踊り出る」よりも「踊り出す」にしたこと。勉強になります。──武内

*── 橋脚に映る水影という視点がよいです。──佐柳恵美子

(選)半田 紫苑 かしこ

幸せの数ほど野辺のいぬふぐり(白浜和照)

*はじめは野にたくさんの、いぬふぐりを想像して、幸せもたくさんなのねと思いました。しかし、そのたくさんの幸せは、普段は見過ごされがち。目をこらさないと見つからないのでは。そして花は小さいのです。よーく見ればきれいなのです。──半田真理

*幸せの数ほど一面の犬ふぐり。大小色々、人それぞれ、の幸せがあっていい。野辺に散りばめられた小さな瑠璃色の花は目立たないけれど幸せな色。──紫苑

*このようにいぬふぐりを詠めばますますいぬふぐりが可愛らしく思えます。幸せの数と言えるほど作者は心穏やかで満たされているのでしょうね。──さとうかしこ

(特選)武内(選)文代

三日かけ白木蓮ひらく仏壇に(三空)

*時間と経過とともに咲いた供花。故人の好きな花だったのだろう。仏壇は黒檀?白木蓮がひき立ちます。──武内  

*仏壇の白木蓮の蕾が開いた。開くまでの祈りの時間が流れる。その人の大好きだった白い花。思いが深まる。三日かけがいい。   私も庭の白木蓮が咲くのを待っていた。やっと蕾が膨らんだ。その時、ヒヨドリの群れがやって来て、あっという間に蕾を食べ尽くした。雑木林が切られたのだ。”花食鳥“と言うそうな。母の写真の前に供えたかったのに。──文代

(特選)文代(選)半田

花巡る師の足跡を追ふやうに(さとうかしこ)

* 自らに”花巡礼“を課した藍生の黒田杏子の忌は、3.13だ。思いもかけない突然の杏子先生の死。墓碑の前にたつと早緑の芽柳が輝いて揺れ、桜の蕾が膨らんでいた。よくきたねと言うように。花を巡る師の足跡を追うように、生きられるといいと思った。──文代

*師の足跡、というけれど、ちょっとやそっとでは掴みきれない。足跡がたくさん、しかもあちこち向いている。たどるだけでも大変。

いやはやこれは、のんびりしてはいられんぞと、自分に言い聞かせる日々。しかし、時間の経つのは早いこと。──半田真理

(特選)きなこ(選)三空

春灯水に流せぬ事もあり(佐柳恵美子)

*あるのよね!すべてをサラリと水に流すことが出来れば人生は生きやすいかも知れない・・・

でも無理に流すこともないのかも。──きなこ

*人間だからどうしても許せないこともあるでしょう。柔らかな春灯の下で湧き起こっている怒りは、相当深かいものなのでしょう。──三空

*予選── 簡単に流せたら楽でしょうに、、いつまでも頑なに流せないことってありますよね。薄ぼんやりと思い出してしまうもの。──紫苑

2点句

(特選)白浜

水かげろふ隠れて蛇の枝を這ひ(さとうかしこ)

*水面近くにまで下がった木の枝。枝葉の陰に映える増感された水陽炎の揺曳、それに誘発される蛇の気配。作者の耽美的性向と自信の美しい結実です。作者の「水妖詞館」に収めるべき一句。──白浜和照

(特選)安達

枕辺に寄する雨音春の音(三空)

*今夜の雨は、春雨ならぬ「春の音」。淡々とした味わいだけれど、上手い!──安達潔

*予選──子規の晩年 床につき雨音を聞いているのか?と浮かんだ句。──武内

(選)半田 きなこ

紅梅の散り残る空昼近し(安達潔)

*朝、起きて窓を開けると梅の香り。紅梅の枝は、空に向かって伸びています。満開を過ぎて、散りはじめているのです。嗚呼、春が過ぎて行く。──半田真理

*散り残る空というのがいいですね。昼前の明るい青空に、残った紅梅のポツポツと赤く・・・。──きなこ

(選)安達 佐柳

一連の目刺今朝二尾夜三尾(掃部けいじ)

*「目刺」をネタに掬い取られた、暮らしの中の「一二三」の軽快なリズム感。これはなるほど、春灯下の自足であるな…。つくづく納得です。──安達潔

*特別な目刺しを手に入れられたのか、朝も夜も食べたと。「一連の」が何か特別なのだなと想像させて楽しいです。──佐柳恵美子

*予選──当方は一人暮らし中々沁み入る句です。──白浜和照

*──ひと串五尾の目刺を朝と夕に分けて食べているのですね。

目刺はうまい!ヘルシーな食事。察するに野菜もたっぷりと。──きなこ

(選)安達 掃部 

知らぬ人でも会釈する田舎道(きなこ)

* 誰もが経験しているはずの景。季語がなくとも納得でした。──安達潔

*無季の句ですが、さりげなく春を感じさせます。──掃部けいじ

*予選──被害妄想気味の友人の話し。沖縄に住んでいた頃同様の経験をしたそうです。友人曰く、よそ者を確かめているのだそうです。心優しそうな情景も解釈で色々。──白浜和照


1点句

(選)かしこ

朝の水のむヤマガラの口に春(きなこ)

*ヤマガラは動作が漫画みたいで可愛いですね。下五に新鮮さを感じます。ヤマガラが見えてきます。──さとうかしこ

*予選──佐柳恵美子

(選)武内

ホーホケキョうまくなったね裏の庭(きなこ)

*人は吐く息で声を出す。鶯はホー(吸う息)ホケキョ(吐く息)で鳴くらしい。飛びながら鳴く。器用だ。平仮名の柔らかさがいいですね。──武内

(選)佐柳

春の雨あの黒猫の訃報聞く(きなこ)

* 顔見知りの黒猫だったのか、ショックです。安らかに…。──佐柳恵美子

*予選──春の雨が降った。一人住まいの主人が失火。近所の4軒はもらい火。黒猫ではないが、犬も主人と死んだ。皆お気の毒だ。昔、うちの犬と仲良しだった。春の雨が降らなければ,我が家も燃えていたかもしれない。ふと恐怖がよぎる。──文代

(選)紫苑

ものみなに終わりのあればいとおしく(きなこ)

*ほんとに愛おしいものですねえ。最近頓にそんな気持ちに我ながら陥ります。──紫苑

(選)安達

薪燃えつきて春燈を消し眠る(掃部けいじ)

*春浅い、人里を少し離れての一人暮らしでしょうか。上七中七の破調の叙景から、ゆるやかに冬を離れる感じが伝わってきて、最後に「眠る」…。ああ、と不思議に心に落ちてきました。──安達潔

*予選──少しの温もりを残して、、ですね。薪ストーブっていいですね。──紫苑

(選)文代

流氷の他なにもなく無人駅(掃部けいじ)

* 網走市に北浜という無人駅がある。春、張り詰めた氷が解け始めると、流氷となって押し寄せてくる。何もない広大な自然の厳しさが見えるようだ。──文代

*予選──北辺の海辺の駅を思い浮かべます。無人駅をいくつか訪ねたことがありますが今頃は?──紫苑

*── 荒漠とした、オホーツクに面した冬の北海道の情景。ただ、作者も含め観光客は居たのでしょう。──白浜和照

(選)武内

雛あられいろあはあはといとあはれ(掃部けいじ)

*雛壇の美しさ。美味しい雛あられ。赤白緑の菱餅。視覚効果満点。子供達の賑やかな声も聞こえてくる。吾が心も雅でありたい。──武内

(選)掃部

真つ白な団子にあんこ梅林(三空)

*なんの作意・けれんみを感じさせない句。清楚な「梅林」。──掃部けいじ

(選)白浜

春灯第一感で嫌ひです(三空)

*「第一感で嫌ひです」勢いのある表現ですが、含みも持たせてあります。さて、句は春灯で切れています。作者が春灯側ならば茫漠とした句になり、やはり春灯が嫌いなのでしょう。灯しには生活感があり、四季それぞれ異なりますが、特に春の灯であるのは作者にお訊ねしたいこと。「灯」自体の持つ安全性や集い感が嫌いなのでしよう。「第一感」には微妙な含みも。──白浜和照

(選)武内

春の日やいつも黙つて進む雲(三空)

*見上げる空。どの場所から眺めているのだろう?俳句を通して空を見るようになった。一筋の飛行雲を見て天気をあてる。句を考えることは楽しい(^.^)──武内

(選)武内

うるう日の万華鏡カタンカタンカタン(白浜和照)

* 円筒を回して 中の屑が離れたり寄ったリ。鏡に映る粒子が 花 雪の結晶 宝石など楽しませてくれる。カタンカタンカタンのオノマトペがいいです。──武内

(選)安達

そこかしこ寂しき話し藪椿(白浜和照)

*なるほど!「そこかしこ」と取り合わされた時、「藪椿」は、落椿よりずっと寂しさを喚起するのですね。中七がこの世とほんのり交わっていて…。心に映る藪椿の佇まいをとらえる妙技!、と思いました。──安達潔

(選)三空

菜の花や町すみずみに用水路(白浜和照)

 *用水路がいきわたる潤いのある町の菜の花。より一層みずみずしく感じられたことでしょう。──三空

*予選── 用水路が巡る町というと、郡上八幡かなぁ、私が思い起こすのは。

この句は、菜の花の黄色が目にしみる。春の雪解け水が、滔々と流れ、音まで聞こえるようです。──半田真理

(選)三空

花を巡りて清らかな水に至る(半田真理)

*花を見た後の清らかな水、まるで浄土の一端のように思われます。──三空

*予選── 花で有名な神社仏閣の湧き水なのでしょうか?山桜等を巡った岩場の流れなのでしょうか?俗世の色恋を過ぎて静かな境地に至ると言う喩えなのでしょうか?特選の人が居そう。とても華やかで美しい句です。──白浜和照

(選)紫苑

春灯背中に何を語りたいのか(半田真理)

* 背中は語たる。確かに。何かはわからないけど語ってる。──紫苑

(選)文代

二月堂生駒へ続く春灯(さとうかしこ)

 *東大寺の三月堂の美しい観音の前に立ち、お水取りの二月堂の舞台から生駒山を望む。大好きな東大寺の裏道を通り、町に降りて来た。点々と灯っている春灯が見えるようだ。──文代

*予選── 二月堂はお水取りに行かれたのでしょうか。 まだまだ寒さの残る、3月。お水取りの行事のひとつ、お松明が毎晩走る堂上の舞台を思い出しました。作者はそこから遥かに生駒山をながめたのでしょう。

地名の効果がある一句ですね。──半田真理

(選)白浜

ついッついッ町の岸辺の花菜かな(安達潔)

*「ついッついッ」は小鳥の声であり、作者の春の気分のオノマトペなのでしょう。うららかな日の散歩、町外れの川辺に満ちた黄色が、季節の幸せをついッついッしてくれたのでしょう。日本好みの侘び寂びには遠く奇麗寂びでも無く、明る寂びと言うべきか。素晴らしい表現ですが、さて支持は如何に。菜の花に凝縮される春の気分そのものです。名句では。──白浜和照

(選)かしこ

春灯この世あの世をつなぐ道(佐柳恵美子)

* 春灯にはこのような幻惑的な光があるように思います。ふらふらと行ってしまいそう。──さとうかしこ

(選)かしこ

水の出ぬ能登の暮らしや春灯し(文代)

*もう一つ同様の句がありましたが、調べはこちらのほうが良いと思います。この春灯、寂しいというか頼りないというか。しかし人々の拠り所なのでしょうね。切ない句です。──さとうかしこ


0点句

春灯や影の揺らめく有楽窓(文代)

*予選──有楽窓に、揺らめく影。

それが春の灯火なのです。小説の場面の様で、書けそうな感じ。──半田真理

雪解けの水流れゆくぶなの森(文代)

*予選──命のサイクルをおもいます。

このサイクルが保たれなくなりつつあるのですよね。──紫苑

春燈下戦場といふ場所知らず(安達潔)

*予選──知らないし、知りたくもない。

知らない自分の幸せ。戦火の中の人々を思う胸の痛み。──きなこ

下鴨の御手洗池やさざれ水(武内)

*予選──無季語だが、下鴨神社、御手洗池、さざれ水の言葉で、春の華やかな雛祭りの神事が連想される。旧暦なら大丈夫。まだ、我が家では雛が飾ってある。さざれ水は万葉集以来の古語。湧き水を集め川に注ぐ。サラサラと流れる清い水に雛を流す十二単と直衣の姿、光琳の紅梅白梅が見えるよう。──文代

噴水に春雨の降る一日かな(三空)

*予選── 西脇順三郎へのオマージュ。日本にはギリシアは無く、イメージでは小豆島あたりが少し。噴水を濡らして良いのは春雨位ですね。──白浜和照


総評

*春灯は、想像を掻き立てられる季語ですね。

栗島さんも、たぶんお好きだったのではないでしょうか。

今回のお題の「水」では、水の熟語がうまく出ませんでした。また挑戦したい語です。──半田真理

* 毎月 季語からの情報といい 感情表現 余韻を残し また 類想を越えた句。これまでにもオリジナリティのある句。勉強になります。──武内

*前回は三句今回は四句、私の特選がありました。水かげろふ、ついッついッ、待てば母、上昇気流、それぞれ作者の自信作の投句だと思います。それと自由さ。参加している幸せを感じます。──白浜和照

*春灯、水という季語なので、地域、歴史などに基づいた、本当に春らしい句が多かったと思う。が、能登半島地震もあり、ゆっくり春を楽しめない日々だった。皆それぞれに大変でも俳句を詠んで、すごいなと思う。──文代


補遺

[ 水の会参加要領 ]

☆会費無料。

☆参加資格、俳句が好きな方。

☆投句締切、毎月17日23時55分。

 投句数(5~7句)当季雑詠、兼題あり。

☆選句選評締切、毎月24日23時55分。

 選句選評数(5~7句)選評字数制限無し。

☆スマホ・PCどちらでも参加可能です。

☆上記は、夏雲システム(ネット句会の自動進行ソフト)を利用させて頂きます。

☆過去このブログは同時進行の句会でした。

  現在は原則、句会の公開記録です。

 アップ更新は上記締切日の1~2日後です。


水の会は故栗島弘先生が主宰なさった句会の一つです。先生の句とお人柄が好きな人と、先生が他の句会で面白く思われ誘われた人で成り立っていました。現在もその人達が中核です。


夏雲システムを使ったネット句会は非常にクールで公平です。

また、現在の水の会は選句選句に一週間の時間があり対面の句会とは質が大きく異なります。

その時間作業は必然、自分への向き合いを深めて行きます。

「より自分自身にそしてオリジナルに」栗島先生の創作精神だと思っております。

ネット句会で最もスリリングだったのが、参加者14人・投句5句・6句選でした。

ご参加お待ちしております。


水の会事務