句会は「夏雲システム」で行っております。

このブログは公開の句会記録です。 

兼題、出題三空。

投句一覧

1. 牧の郷防人の道梅真白

2. 白犬の背に梅散りて見上げたり

3. 名残の梅に夜道を行けり

4. もう春ね車中に若き声光る 

5. 黒猫と白猫の住む梅屋敷

6. 花時にすこし間のある魚道かな

7. 梅の香を金の毛並に纏わせて

8. 水が出るご飯が炊ける有難さ

9. 幕間のすれ違ふ人の懐かしく

10. 梅咲いて花の間に間にメジロ来る

11. みかん半分こけれど誰もゐない

12. 城山の椿の小径母恋ひし

13. どのような間柄かな山笑ふ

14. すたすたとつづくこの世や梅仰ぐ

15. こちら側歩けばあちらの梅匂ふ

16. 黒人がひよいと出てくる梅の花

17. 飲み過ぎたズキズキ痛む袖の梅

18. 春の雪くまなく濡れてスクーター

19. 春立つ日早く目醒めて夜を更かし

20. 間の抜けた返事だつたな春夕焼

21. 余寒の夜母の寝姿死者のごとし

22. 朔の月満ちゆくだけの眞暗がり

23. 春光やひとり竿さす漁り舟

24. 知るために生まれたなずな七草

25. 土雛や古き楽想藁の笛

26. 梅が香の楚楚とととのふ苑の間間 

27. 銀色の夜明けの帰路に梅の花

28. 白梅のいつか咲かむと水を吸い上ぐ

29. 木蓮の芽の下子供等の過ぎぬ

30. 白梅や 愛(かな)しき夢の哀しい間

31. 誰を待つ梅の枝には白き

32. 燭の火(ほ)のくらりとけぶり冴返る

33. 紅梅に尻尾をよせて猫真白

34. 春立つや松の間に海見ゆる

35. 真空か宇宙空間ゴミだらけ

36. 日脚伸ぶひと間四隅の塵の嵩

37. 間を置いて言葉を返す梅の花

38. 西は京間東はゐなか間春炬燵

39. 春雪を跳ね鶺鴒の白きすぢ

40. 歌舞伎座の幕間に食ぶ恵方巻

41. 弔ひて古木の梅に白き花

42. 海原や蠟梅見ゆる防砂林

43. 樹々の間飛ぶ蜜月の春鴉

44. まず思うことよりすべて始まりぬ

45. 飛梅や馥郁たる天満宮

46. 朝日浴びいつか咲くよと梅の枝

47. 白梅の散りて雪かと惑ひけり

48. 久能山東照権現実割梅

49. 菜の花に引き止められて間の宿

50. 蝋梅の香や金色の雨の降る

51. 食欲はある私まだ大丈夫

52. 梅を撮るどの角度にも青み空

53. 地方には地方の矜持梅の花

54. 戦争の碑にそつと添ふ枝垂れ梅

55. 春迎ふ儀式の済みて野辺の径

56. 梅林の間に消えし人を追ひ

57. 梅林にしばらく近き朝日かな

58. 外へ出でて気の晴れてゆく梅の花

59. 言わずもがな遊戯三昧クソ坊主

60. 寒ゆるむ梅一輪の明るかり

61. 咲き継ぎて父の白梅となれり

62. 駐機場明くる霜柱さくさく

63. 海猫(ごめ)渡るずらりと並ぶ伊根の家

64. チョトコイとこじゅけいが呼ぶ春の藪

65. 紅梅の下向いて咲くしづけさよ

66. 河口には橋がある草の芽匂ふ

67. 何を見る栗鼠の瞳は黒ボタン

68. 鉢の中見知らぬ草の芽吹きかな

69. 遊びなほ遠く二月の鳥けもの

選句・選評

5点句

(特選)文代(選)白浜 武内 紫苑 

燭の火(ほ)のくらりとけぶり冴返る (掃部けいじ)

*ほのかに明るさをましつつ燃えていた燭の火、穏やかな春の訪れが来たかと思ったのに、”くらりとけぶった“のだ。なぜか、それは寒が再び戻ってきてしまったから。“冴返る”上手い言葉を使ったものだと思う。──文代

* 何より「くらり」、素晴らしい写生です。余りにも的確、私は知りませんが慣用であるのかしら?「…けぶり」で切れているのは分かります、この様な作りがあるのも分かりますが、因果にも見えてしまいます。とは言え超特選御三家の句です。──白浜和照

*「冴返る」本来の意味とは違いますが 蝋燭の火が消えた後 煙に火を近づけると再び火が着く。学校の実験を思い出しました。──武内

*そうこんな時に冴えかえる感あり。まさに実感です。──紫苑


4点句

(特選)三空(選)白浜 半田

 すたすたとつづくこの世や梅仰ぐ (安達潔)*「すたすたと」と表されように着実に進んでゆくこの世の時間。そういう中で立ち止まり梅を仰いでいるという感慨が伝わってきます。──三空

* 降りて来たのでしょうね、分かり易い言葉で部厚い事が詠われています。限り無く特選、他の人が選んでくれるでしょう。戦争・天災・歓喜・悦楽何があろうともすたすた・・・。時間の相の一つ。ものの哀れを含まない本来、字義通りの無常永遠のオノマトペ。それ等は確かに健脚です。梅見の当日また、来し方の感慨も表されています。肚の据わった俯瞰です。しかし、下五は見上げています。梅林の花の雲に包まれた情景なのかも知れませんが、上五中七の軽快な超重量を受け止めきれているのでしょうか。意見は分かれると思いますが、梅の兼題でなければどの様な句になったのか非常に興味があります。是非推敲をお願いします。下五に来るべき季語もしくは無季での言葉はあると思います。発表なさるべき場所で発表後、一旦の完成形でも談話室でお知らせください、お待ちしております。──白浜和照

*一見、飄々として風を受け流すかのような句です。けれど、見ていますよ。したたかな目がぎょろりと…。──半田真理

*予選──佐柳恵美子

(特選)紫苑(選)安達 武内

日脚伸ぶひと間四隅の塵の嵩 (掃部けいじ)*日差しが入り込んでくるいまごろ。埃の目につくこと限りなし。いつのまにか嵩になって、、春なのに毎日朝昼気になって仕方ない。一間の四隅が目に浮かんで来ました。

嫌ですねえ。光の春は憎しです。上手いなあと真っ先に❗️──紫苑

*春になって日脚が伸び、ものみな明るく見えてくると、埃が目立つのよねぇ。──きなこ

* この句がよ~く分かる自分なのであります。──安達潔

*予選──わっ! 見てしまった。気づかなかったことにしよう。──武内

*──佐柳恵美子

(選)掃部 白浜 かしこ 佐柳

鉢の中見知らぬ草の芽吹きかな (三空)

*どんな花かな。楽しみがふえましたね。──掃部けいじ

 *本当にあるある話しですね。何処から種が来るのか、春らしいと言えば日常の春らしい景です。青ねぎの横にホトケノザが生えています。食べようと喜んだのですが、春の七草の仏の座とは別物で不味いのだそうです。詠んでいると良さがどんどん涌いて来る句です。生命の春の驚きが、肩ひじの張らず表現されています。かな、が実に効いており名句だと思います。──白浜和照

*ほんとは抜かなければならない雑草なのかもしれませんが、ういやつじゃ、とそっとしておきたい気持ちもあります。かな、でその心情が現れていると思います。──さとうかしこ

* たとえ草でも芽はかわいい。小さな春発見!──佐柳恵美子

*予選── そうそう覚えない花芽を見つけました。たのしみでもありますよねー。──紫苑

*──半田真理

3点句

(特選)安達(選)武内

こちら側歩けばあちらの梅匂ふ (さとうかしこ)

* いい梅の匂い! 気が付けばこんなこと、よくあるのよねェ。「こちら」と「あちら」離れ具合の表現がとても上手で(「側」、効いてる)、あちらの梅に思わず手を振ったりして…。「あちらの梅」、いいなあ!──安達潔

並選

* 白 淡紅 紅と 視覚·嗅覚 伝わりました。──武内

(特選)掃部(選)きなこ

白犬の背に梅散りて見上げたり (文代)

*たった一つの動作「見上げ」を「犬」と「梅」の相関で表現。ごく短い流れの中に趣を感じます。──掃部けいじ

 *これは、散歩に連れている自分の飼い犬の背に梅が散って、飼い主が見上げたのでしょうか。でも、ひらりと自分の背に散った花びらを、白犬が見上げた方がいいなぁ。──きなこ

*予選── 見上げたのは、犬なのではないか。

どんなことをこの犬は、考えているのかな、という飼い主の視線。──半田真理

(特選)きなこ(選)佐柳

蝋梅の香や金色の雨の降る (文代)

* 蝋梅の花の色は金色。その花に降る雨は、雨の色までも金色。金色の雨・・・なんと美しい。──きなこ

*金色の雨!美しい!──佐柳恵美子

*予選──半田真理

(特選)佐柳(選)安達

河口には橋がある草の芽匂ふ (白浜和照)

*風景も匂いも風も感じて、ついにはこの句の中にいるようでした。──佐柳恵美子

* 大河の河口に掛かる橋ーー生活空間に溶け込んだ、大きな構造物。「ある」の措辞を通してこれらは、おそらく所与の光景として肯なわれている。その根拠として見いだされた「草の芽」が「草の芽匂ふ」と旧かなで表記され、広々とした光景の中に点描される。

貨幣・生産・交換のこの世の行く先はともかく、今はひとまず貧困・差別・戦争から身を離していられる。

柔らかな「草の芽匂ふ」に託されたであろう作者の心持ちに、とても共感しました。──安達潔

(選)佐柳 紫苑 半田

もう春ね車中に若き声光る  (掃部けいじ)

*おばさま達が車にぎゅうぎゅう乗ってお出かけし、外に広がる風景に春を感じて楽しそう…そんな映像が浮かびました。

若き声は若人ではないのかなと。──佐柳恵美子

*若い二人が窓に顔を付けて走る景色を眺めて呟いた。もう桜が咲くでしょ。若さが羨ましくなりつつある私ですよ。──紫苑

* 声が光る、ここがいいですね。それも若い声ですからね。

車内にいる誰もが、そうだそうだと、こころの中で賛同。その思いも光っているのです。──半田真理

2点句

(特選)かしこ

銀色の夜明けの帰路に梅の花 (佐柳恵美子)

*夜明けの色が銀色とは!体験に基づいた色なのでしょうね。静かな夜明けに梅の香り。香りだけで梅の花が見えてしまう。あるいはほつと、白梅。想像が広がります。──さとうかしこ

(選)きなこ 半田

梅の香を金の毛並に纏わせて (佐柳恵美子)

*多分、長毛種の猫?香りを毛並に纏わせるなんて・・・

あゝその毛並に顔をうずめたい!──きなこ

* 金の毛並は、もしかしたら麒麟かも。春を告げに来たのです。──半田真理

(選)安達 白浜

 どのような間柄かな山笑ふ (佐柳恵美子)

*上五中七の軽やかなアプローチのあと、この季語に来て心がムズッと動きました。そしてもう一度中七に戻って、ふ~む、「間柄」であるぞよ。どのような間柄にせよ、春の祝福「山笑ふ」。15が無ければ特選でした。佳き哉!!──安達潔

*この「かな」は軽い疑問符なのでしょう。少しギクシャクした感じのヘタウマ感も含め「山笑ふ」が全体をくるんでいて、優しく温かな句になっています。──白浜和照

(選)きなこ 文代

紅梅に尻尾をよせて猫真白 (佐柳恵美子)

*この子の尻尾は長いのでしょう。紅い梅と白い猫、美しい対比。──きなこ

 *真っ白な猫は紅梅がお気に入り。尻尾を立てて匂い付け。この木は自分の物、美しい紅梅の花のような雌猫がこないかな?紅梅と白猫の対比がいい。見えるよう。──文代

(選)掃部 文代

戦争の碑にそつと添ふ枝垂れ梅 (佐柳恵美子)

*戦没の忠魂に梅のやさしさ。──掃部けいじ

* 戦争に行った大切な人は還って来なかった。碑の傍に植えた梅は枝垂れて、碑にそっと添う。還らぬ人をそっと抱いているのだろうか。──文代

(特選)白浜

花時にすこし間のある魚道かな (安達潔)

 *このゆったりした作りと、イメージの喚起力は、弘の叙情句を彷彿とさせます。「少し間のある」が名調子で、花への期待早春の空気感が描写されています。

「魚道」を中心とした様々な距離を持つ独特の作りになっています。以前花盛りに来て、魚道まで降りた事があるのでしょう。花びらが浮いていたのかも知れません。その時から現在までの時間の距離。作者の位置は魚道側の河川敷、そこからの様々な視覚の距離。堰が川に段差を作っています。対岸には町、遠方には山の連なりが見えるのかも。降りて来た土手の高さ、そこには見に来るの価値がある桜が並んでいるのでしょう。

時間の「間」空間の「間」が豊かに描写されています。──白浜和照

(選)文代 三空

牧の郷防人の道梅真白 (安達潔)

* 防人に行く夫を、馬に乗せてやりたかった。でも、牧で馬が捕まらない。ああ、歩いて行かせることになるのかという妻の嘆きの歌が、万葉集に残されている。出立は2月。防人の道に、梅が真白に咲いていたらいいのに。白梅は中国から来た、当時貴重な植物だった。──文代

*防人に対する思いが梅真白に込められています。──三空

(特選)武内

城山の椿の小径母恋ひし (文代)

*心に沁みました。──武内

*予選── 母さんと歩いた小径ですか。

何を見ても母が頓に懐かしい歳になりました。母の齢を過ぎたあたりからです。──紫苑

(選)かしこ 半田

弔ひて古木の梅に白き花 (文代)

*上五の て が気になりますが、句意はわかります。白梅が効いています。──さとうかしこ

* 亡くなった方を奥って、ふと気がつけば古木の梅に花が。この木も、その方を偲んでいるのかもしれない。白くてさびしい、けれど凛としている梅の花。──半田真理

(特選)半田

まず思うことよりすべて始まりぬ (きなこ)

* これは、地震の被災地を思ってのことかもしれない。もちろん、その気持ちはあるから、まずは被害を受けた人に寄り添いましょう、そこから始まるのだから。

また、自分のこととして思うところあり、その思いがあれば何でもできるでしょう、と励まされる句でもあります。──半田真理

*予選──俳句と言うより宗教観・人生観なのでしょう。

「始めに言葉ありき 」をネットで調べました。新約聖書「ヨハネによる福音書」の書き出しです。「言葉」は日本語訳のみでロゴスの一部を取り出したもの、「始めに主ありき 」とすべきとの考えが書いてありました。

「始めに言葉ありき 」はこの「句」と同じく日本では受け入れやすい考えだと思います。同じ内容だとも言えそうです。日本語は仏教観が色濃く観念論的思考が基本となっていると思います。──白浜和照

(選)紫苑 三空

春光やひとり竿さす漁り舟 (さとうかしこ)

*春の海で一人竿さす。絵になりますな。──紫苑

*一人であっても輝く春の時間を過ごしています。──三空

(選)かしこ 武内

梅を撮るどの角度にも青み空 (掃部けいじ)

* 下五の青み空が馴染まないのですが。青いみ空なのか、青みがかった空なのか? 梅と青空は撮影にはうってつけです。青き空ではいけなかったのでしょうか?──さとうかしこ

*下五「青み空」心に残る句。こういう技を早く詠みたい。──武内

(選)佐柳 三空

53. 地方には地方の矜持梅の花 (白浜和照)

*地方の矜持と梅の花がとてもしっくりきました。──佐柳恵美子

* 地方が持つ独特な矜持と梅の花には通い合うものがあると思います。──三空

(選)佐柳 文代

咲き継ぎて父の白梅となれり (半田真理)

*大事に育てている梅の木。──佐柳恵美子

*いろいろな花が次々と咲き、とうとう大切な父の大好きだった白梅が咲き始めた。父を恋いて偲ぶ思いが、伝わってくる。──文代

*予選──父の白梅となれり。

立派な枝振りなんでしょうね。──紫苑

1点句

(選)安達

 水が出るご飯が炊ける有難さ (きなこ)

* 左様、これで十分「有難い」のだ。四季を通して、物欲と消費優先はほどほどに…。──安達潔

(選)紫苑

梅咲いて花の間に間にメジロ来る (きなこ)

*日がな一日よく来てます。逆さまになって。──紫苑

(選)白浜

食欲はある私まだ大丈夫 (きなこ)

* わかりやすい言葉で共感出来る詩、ある種の自由律句会では大好評そうな句。目新しさはありませんが、表現と言うより独白で切実さに胸が痛いです。とは言え表現ではあり、無季の迫力・必然が伝わります。──白浜和照

*予選──佐柳恵美子

(選)紫苑

みかん半分こけれど誰もゐない (さとうかしこ)

*いつものように半分にしてみたけれど、、ああ居ないのか、、そうか君は居ない、、──紫苑

*予選──私もデコポンを1個じゃ多いから半分こ。けれど誰もいないから次の日、残り半分を自分で食べる(笑)──きなこ

(選)武内

歌舞伎座の幕間に食ぶ恵方巻 (さとうかしこ)

* 最後まで黙って食べ終わるか?あまり太いと·····。──武内

(選)文代

紅梅の下向いて咲くしづけさよ (さとうかしこ)

* 梅の香がする。ふと上を向くと匂うような紅梅が、静かに見下ろしている。鮮やかな紅梅の静かさに心惹かれる作者の気持ちがいい。──文代

*予選──半田真理

(選)きなこ

 間を置いて言葉を返す梅の花 (三空)

* 梅の花の美しさと匂いにうっとりとして返事に間があったのか、あるいは返事に間をおかなければならないような会話の内容だったのか?!──きなこ

(選)かしこ

春雪を跳ね鶺鴒の白きすぢ (三空)

* 春雪を跳ねるのがいかにも鶺鴒らしい。車が来てもなかなか飛ばない鳥ですよね。その鶺鴒がツツツーと走っていく。跳ねが、この句のポイントだと思います。──さとうかしこ

(選)半田

外へ出でて気の晴れてゆく梅の花 (三空)

* いろいろなことがあった。鬱々とした日々。

ふと、よい香りがする。なんだろう。

あ、梅が咲いているのだ。と気づく。──半田真理

(選)安達

余寒の夜母の寝姿死者のごとし (白浜和照)

*中七下五は現場に立ち会ってこその措辞。季語の中に置かれながら、共に作者に「余寒」を感じさせる、母上の寝姿ーー「死者のごとし」。肉親といえども他者ではあるのですが、この比喩は季語共々、どうやら、他者ならぬ死「者」と共に呼吸したと感じたときはじめて使える類の、一種の「ふたり心」かもしれない。字余りはそうしたことの表れ、そんなことも思いました。──安達潔

(選)三空

 木蓮の芽の下子供等の過ぎぬ (白浜和照)

*木蓮の芽が何か子供達を見守っているように思えますね。──三空

(選)かしこ

土雛や古き楽想藁の笛 (安達潔)

*この句を見て慌ててお雛様を出しました(笑) 藁の笛のイメージが湧きませんが、土雛といい、古きといい、古代からの素朴なお雛様が見えてきます。──さとうかしこ

(選)三空

海原や蠟梅見ゆる防砂林 (安達潔)

*臘梅に海原、まさに早春の光景です。──三空

(選)武内

春立つ日早く目醒めて夜を更かし (掃部けいじ)

 *新な出発。緊張と気分が高まリ 何度も目が覚め朝を向かえた。自分も覚えがあります。──武内

(選)掃部

西は京間東はゐなか間春炬燵 (武内)

*関西と関東の呼び名の違い。寸法も違うらしい。──掃部けいじ

*予選──いなか間と言うんですね。上方と言い、言葉だけのプライドの遺物は少し憐れです。軽く皮肉を利かせた作りです。炬燵はどちら共使っているのでしょうが、いなか間の方が温かそうです。良い句ですね。──白浜和照

(選)掃部

黒猫と白猫の住む梅屋敷 (佐柳恵美子)

*紅梅、白梅の屋敷に猫もふた色。──掃部けいじ

*予選──何にでも合う猫俳句、ですが「の住む」で人の気配が希釈化され何か妖怪話じみております。鏡花か聊斎志異に美しい物語として出て来そう。ピシピシと全て美しく決まっており、大好きな人の居そうな句です。──白浜和照

*── 白と黒のくっきりとした対比!猫という優雅な生き物!梅屋敷!まるで鏡花の世界のような・・・。──きなこ

*──雑木林の近くに、梅の木のある古い家があった。何匹もの猫をわらわらと、老夫婦が飼ってた。犬と散歩に行くと、黒白等の猫は、慌てて木に登り逃げる。いつしか老夫婦は亡くなり、雑木林は切られ、猫もいない。もう、うちの犬もいない。寂しくなった。──文代

(選)掃部

幕間のすれ違ふ人の懐かしく (半田真理)

 *同じ芝居を観た人は何となく友達のよう。──掃部けいじ

0点句

久能山東照権現実割梅 (武内)

*予選── 現物を知らないせいか…。──安達潔

海猫(ごめ)渡るずらりと並ぶ伊根の家 (武内)

63. 海猫(ごめ)渡るずらりと並ぶ伊根の家0点

武内

*予選──「ごめ」と言うと石狩挽歌ですね。北海道や東北の方言です。舟屋の伊根だと思いますが田舎でも京都、ごめの響きでは無さそう。無季ですがそう感じさせません。実景なのでしょう、その場でごめと聞いたのかも知れません。元々ごめの響きがお好きで、上五にするためもありルビにしたのかも知れません。うみねこでも句になるのでは。とても良い句だと思います。──白浜和照

黒人がひよいと出てくる梅の花 (三空)

*遠方正面からでなければ様々なシチュエーションで成り立つ「ひょいと」です。くる、で切れを入れず文にすると、シュールなスーパーマジックショー。押絵と旅する男の別バージョンの一場面。──白浜和照

間の抜けた返事だつたな春夕焼 (佐柳恵美子)

*予選── ちゃんと返事すればよかった。ずうっと気になってます。

気のない返事はわかりますもの。綺麗な夕日に見惚れていたとは言え悪いことしてしまった、、。──紫苑

*── 夕焼けにふと思い返す自分の返事。もうちょっとましな言い方はなかったものかと・・・。

でもきっと、その瞬間がすべてなのでしょう。──きなこ

朔の月満ちゆくだけの眞暗がり (文代)

*予選── 太陰暦の一日は新月。見えないけれどそこにはある新月。──きなこ

梅が香の楚楚とととのふ苑の間間  (掃部けいじ)

*予選── 言葉遊びみたい。楚楚、とと、間間、と3回も連続した音が使われ、なかなか工夫していて面白い。──文代

*──「々」ではなくて正字を重ねたところに少し疑問は残りましたが、中七の言い回しにはとても魅かれました。(蛇足:下五、「一間かな」もアリか?)──安達潔

白梅や 愛(かな)しき夢の哀しい間 (白浜和照)

*予選── 白梅が、夢の象徴…。──半田真理


総評

*庭に紅白の梅の木があります。二代目。新聞に 万葉の時代は「花」というと梅の花を指したが 古今集以降「花」は桜に変わったと載っていました。百人一首にも梅の歌がありましたね。自分の下五の名詞留め。なんだかピタッとこない。難しい!(武内)

*雨が少なくて水不足とやら・・花の開花が早いとやら・・何かが狂いつつ、季節はそれでも着々と?進んでいるようです。(きなこ)

*今回は特に素晴らしい句に出会いました。名人的作者にも中々降りて来ない句だと思います。また、オノマトペが秀逸で驚かされた句が複数ありました。ただ、驚くだけでマネすら出来ませんが。

小さな句会ですが非常にレベルが高く、参加出来ている幸せを感じます。(白浜和照)

*梅の句が沢山あった。動物や人との関わりも。どの句を選んだらいいのか、迷ってしまった。2月というのに、どうしたのかと思うほど、急に暖かくなり、花が次々と咲き、そしてまた急に冴返ってしまった。梅の花の句の多いのがわかる気がした。(文代)

*平安の頃は花といえば梅。それがなぜ桜になったか。諸説ありますが、梅は上に伸びていくので、花がだんだん見えにくくなる。しかし桜は、枝は横に伸び、下からでも花が見えるから、という。

ただ、梅の枝が伸びて花が高い位置にあっても、愛でることができるのは、貴族。少なくとも、高床式の家なら、目の高さ。…どうかな。(半田真理)

[ 兼題出題 ]

☆三空


補遺

[ 水の会参加要領 ]

☆会費無料。

☆参加資格、俳句が好きな方。

☆投句締切、毎月17日23時55分。

 投句数(5~7句)当季雑詠、兼題あり。

☆選句選評締切、毎月24日23時55分。

 選句選評数(5~7句)選評字数制限無し。

☆スマホ・PCどちらでも参加可能です。

☆上記は、夏雲システム(ネット句会の自動進行ソフト)を利用させて頂きます。

☆過去このブログは同時進行の句会でした。

  現在は原則、句会の公開記録です。

 アップ更新は上記締切日の1~2日後です。


水の会は故栗島弘先生が主宰なさった句会の一つです。先生の句とお人柄が好きな人と、先生が他の句会で面白く思われ誘われた人で成り立っていました。現在もその人達が中核です。


夏雲システムを使ったネット句会は非常にクールで公平です。

また、現在の水の会は選句選句に一週間の時間があり対面の句会とは質が大きく異なります。

その時間作業は必然、自分への向き合いを深めて行きます。

「より自分自身にそしてオリジナルに」栗島先生の創作精神だと思っております。

ネット句会で最もスリリングだったのが、参加者14人・投句5句・6句選でした。

ご参加お待ちしております。


水の会事務