句会は「夏雲システム」で行っております。

このブログは公開の句会記録です。 


兼題「季重なり」「たこ焼き」出題、白浜和照。意図的に季重なりを行なった人は少ないと思います。冬の季語で一句だけでも挑戦してみましょう。たこ焼は日本食の代表の一つだとか。偉くなったものですね。俳句でも詠んであげなくちゃ。


水の会に参加ご希望の方は選句・選評のある最新回の最下段「補遺」をご覧ください。

投句一覧

1. 漱石忌坂を上って霧の奥

2. 伊豆の鄙浅黄斑は旅途中

3. 冬麗のどこを切つても好き日かな

4. 立冬や昨日は夏日そんな年

5. 銀だこ屋旨くできそうなタコ選る

6. 冬の蔦まだまだ青く家つつむ

7. あたらしき今朝の青空冬の虫

8. 雨が降る枯れ葉は黙って地に落ちる

9. 冬満月たこ焼抱え急ぐ道

10. 霜一夜開けくる空のすかんぴん

11. 霧の夜の詫び状ありぬ近松忌

12. 初冬の風や樹々の葉ささやける

13. 高速にただ乗りたくて冬の空

14. たわわなる柿は秋日のしづくかと

15. 焼けるまで魅せる手さばきたこ焼き屋

16. 七五三庭に柴焚く祖父の居て

17. 踏む音と蹴る音落葉道続く

18. イルカショー遠く離陸機正面のジャンプ

19. 命とは何ぞや今日も飯を食う

20. 秋惜しむ金輪際の足湯かな

21. オリオンに今年の手袋ちらと見せ

22. 芝居跳ね下北の熱〜いたこ焼

23. 縁側の日射しを惜しみ冬仕度

24. 本場ではタコとコンニャク入れるのじゃ

25. しつとりと十一月の塩むすび

26. 犀川の流れ煌めき冬の月

27. クルクルン一家に一台たこ焼き機

28. 栗名月声明流る深大寺

29. 坂一面振る色々の落ち葉かな

30. 牡蠣鍋や炬燵に入り夫と一献

31. ハンカチの木の実を拾ふ振ってみる

32. 冬かなあ窓に目をやる暇な午後

33. Yさんの好きな熟柿の種周り

34. 厳海の冬の荒波橋杭岩

35. たこ焼きをふたりでつつく近松忌

36. 霜柱こんなお菓子のありさうで 

37. 阪神優勝たこ焼きばこばこ売れ

38. 様々の病み深くなり冬に入る

39. おでん酒ダシが染みてる大根煮

40. たこ焼きの湯気に鉄の香油の香

41. 遠くから自転車の灯残る虫

42. 伸べる手を避け風花の人嫌ひ

43. 冬空のすこんと晴れて海に来た

44. 柚もいでお供へしますお命日

45. 菰巻き雪吊り吟行の兼六園

46. どぶ川のほとり今年も花八手

47. 無患子の葉影に清か後の月

48. リスが団栗を忘れてクヌギ林

49. 女手のタコ焼き屋台北新地

50. 友歌うつうのアリアや冬夕焼け

51. たこ焼をほほばる顔も文化の日

52. 岩肌に残る黄葉や十二月

53. 冬晴れて犬吠灯台真白かな

54. 消防学校整理整頓冬の虫

55. 冬ざれの街をただよふ雪一輪

56. エルニーニョもラニーニャもなく冬来る

57. まだ満つる余白残して十三夜

58. 温風機にもついに廃品ステッカー

59. 厳冬の釜山の市場湯気数多

60. 冬耕の親父のあとを鴉たち

61. 十三夜月の暦を売りにけり

62. 三方へデモ動き出す十二月

63. 山茶花に三日月そつと寄り添いぬ

64. 思い出せない思い出がある今夜また

65. 犬の首輪も私のマフラーも赤

66. 団栗がコツッと落ちる秋の道

67. 冬天や寺の山門櫨紅葉

68. 滲みたる三つの光新世界へ

69. おいちゃんのたこ焼ほかほか北風ぴゅー

70. 鯛焼きは季語なのにとたこ焼きが申すなり

選句・選評

6点句
(特選)武内 佐柳(選)文代 きなこ
たわわなる柿は秋日のしづくかと(さとうかしこ)
* 柿の水分量は平年で82g/100g。収穫期を迎える頃 水分が増すそうです。枝がたわむ「秋日のしづく」が生きています。──武内
 *美味しそうなピカピカの柿が目の前に輝いてきました!──佐柳恵美子
 *実家の柿の木、たわわな柿を、叱られながら登って食べた。秋の陽にキラキラ輝いてた。”しずく“いいね。秋の日の雫は甘かったです。柿と秋の日も秋の季語だ。──文代
* 言われてみればたしかに! 柿=しづくとは、目を見張る感性。──きなこ

4点句
(特選)紫苑(選)三空 安達
Yさんの好きな熟柿の種周り(白浜和照)
* とろおりと確かにゼリーみたい。思い出しながら召し上がっていらっしゃるのだろうか。かつては一緒に食べたっけ。Yさん、好きでしたよね種周り。親しさのほどあいがわかりほんわかな句。素敵です。──紫苑
*ゼリー状のとろっとしたところでしょうか。「Yさん」という提示に不思議な面白さがある。──三空
*熟柿の種の周りをしゃぶりながら、「Yさん、これ、好きなんだよなあ」と思ったりする…。どこか、サトウハチロー風の味わい。なるほどなあ。──安達潔
*予選── ほてほての柿、とウチでは言ってます。──半田真理
(選)半田 紫苑 文代 安達
様々の病み深くなり冬に入る(白浜和照)
* 病んでいる。この世のあらゆることが。──半田真理
* 薬の数が増えてます。冬は用心しなくては。病深くなるは実感。無事乗り越えたい。──紫苑
*いつの間にか、あちこち身体にがたがきている。周りを見ると、病の床についた方もいる。大切な人達がいつどうなるかわからない。世界を見ても、ロシアのウクライナ侵攻、ハマスとイスラエルの無惨な戦争。一度たがのはずれた世界はもとに戻れない。まさしく“冬に入る”である。──文代
* 日頃から何となく気が付いてはいるのだけれど…。昔、高田正子さんが、どんな季語だったか忘れてしまいましたが、「みんな病んだり傷んだり」と詠まれたのをふと思いだしました。さはさりながら、この冬もどうか恙無く越されますように!──安達潔
(特選)きなこ(選)文代 武内
思い出せない思い出がある今夜また(半田真理)
*なんかあったんだよなー。何だっけ?無意識に心の底に沈めて置きたいことなのか、思い出さない方が良いと神様が言ってることなのか・・・・・なんだっけ?──きなこ
*大切な思い出、あったはずなのに思い出せない。今夜もまた!どうしよう、、、少しずつ忘れていって、どうしても思い出せない。でも、忘れる事ができるから、人は生きていけるのかもしれない。忘れる事も死ぬ事も大切な事。これは季語なし俳句だ。──文代
*あるある。嫌な記憶なら思い出せないほうがいい。──武内
(選)掃部 武内 白浜 きなこ
踏む音と蹴る音落葉道続く(さとうかしこ)
*「踏む」と「蹴る」の「落葉」の音は確か*歌いながら落葉を踏む。立ち止まって蹴る。楢は黄葉すると潔く散り 橡はやや未練がましく いつまでも梢に残り 欅の落葉も思い切りがいい。と本に書かれてました。銀杏並木を歩いた時 気持ち良かったです。──武内
*サッツァ サッツァと歩いているのでしょうか。落ち葉を踏むと言う表現は多そうですが、蹴るとした作者の着眼に一票。道の固さも描写に含まれ山の土道ではないことが分かります。掃除される前の街路樹の道なのでしょう。通勤ではなさそうですが恋人に会いに行くのでもなさそう。図書館にでも向かっているのでしょうか。もっと大きく深く、来し方行方の心象とも。──白浜和照
*カサコソと、自分が落ち葉を踏む音と蹴る音だけが聞こえるのが静寂を強調。「蹴る音」という着眼点。──きなこ
3点句
(特選)半田(選)掃部
高速にただ乗りたくて冬の空(佐柳恵美子)
*季語は動かない。歌が聞こえるような、臨場感。──半田真理
 *「高速」道路は本当に空が広い。上五ではなく下五に「冬の空」が肝要。──掃部けいじ
(特選)文代(選)掃部
オリオンに今年の手袋ちらと見せ(佐柳恵美子)
* 冬の夜空に輝くオリオン。女の子が「ほら、私の新しい手袋、いいでしよ。」とちらとかざしてみせてあげた手袋。
 “イケメン”の狩人オリオンは月の女神達に恋をし、その上7人の女の子に手を出した傲慢な男。悪さをたくさん。女神に叱られ、赤い目玉の蠍に刺されて死んだが、可哀だと”星“にしてもらったとか。でも、オリオンを殺した褒美に、蠍も空の星になった。だから、夜空でオリオンは、蠍からいつも逃げてるんだ。今年の手袋はきっと「赤!」ちらと見せられたオリオンは、ギョッとして「赤い目玉の蠍だ!」と慌てて逃げていったのか。
 恥ずかしそうに、かっこいいオリオンに見せてあげた女の子の気持ちと、見せられたオリオンの動揺のずれが面白いし、“ちらと見せ”がいいな。オリオンと手袋は冬の季語で季重ねだ。──文代
*オリオンに『この冬もよろしく』。挨拶代わりに「今年の手袋」を。──掃部けいじ
*予選──冬の星座に、今年の新しい手袋を見せる・・・お気に入りですね。──きなこ
(特選)安達(選)かしこ
七五三庭に柴焚く祖父の居て(白浜和照)
* 幾分年嵩のご主人が、少し広めの庭で柴を焚いている。今日は孫の七五三。黙っていても、嬉しいものはやっぱり嬉しい。焚火にいそしむ祖父含羞の七五三。この取合せ、何とも素敵に思えました。──安達潔
*七五三のお詣りに行って、皆集ってワイワイにぎやかな爺の家。そんな中、庭で落葉焚きをしている祖父。昔の風景のような懐かしさがある。──さとうかしこ
*予選──紫苑
(特選)かしこ(選)きなこ
伸べる手を避け風花の人嫌ひ(掃部けいじ)
* 風花の様子にことよせて、作者が人嫌いと言っているのだろう。風花にそっぽを向かれた作者の負け惜しみかも知れない。素直でない作者が垣間見られます。──さとうかしこ
* 風花って人嫌いだったんだ。スゥーッとうまくよけますよね。──きなこ
(選)半田 三空 武内
命とは何ぞや今日も飯を食う(きなこ)
*まさに。同感です。──半田真理
* 分かりませんねぇ。分からないから皆ご飯を食べてとにかく生きているのでしょう。おもしろい句です。──三空
*命が第一の宝。「白米は白米にあらず·すなわち命なり」──武内
(選)掃部 紫苑 佐柳
しつとりと十一月の塩むすび(三空)
*「十一月」の乾燥期のイメージを「しっとり」で対比の効果。──掃部けいじ
* 塩むすびのピッタリ感は人それぞれでしょうが、、11月にしっとりとは暑かった⁉️異常が普通になる気配。──紫苑
*なぜか11月と塩むすびがぴったりで。──佐柳恵美子
*予選──十一月が、なぜかしっくりくる。──半田真理
(選)文代 きなこ 佐柳
山茶花に三日月そつと寄り添いぬ(半田真理)
*夕方、沈んでいこうとする三日月は、咲き初めた紅の山茶花を見た。近づいて、そっと寄り添ってみる。お互いに見つめ合う。でも、三日月はもう沈んでいかなければならない。やがて薄墨色の紅は闇に解けていく。明日会えるだろうか。
 神無月の三日月は朝8時にでて、6時前には沈んでしまう。寄り添うも、束の間の恋?山茶花は初冬、三日月は秋の季語。これも季語重ね。──文代
* 山茶花と三日月、両方が入って一幅の絵になります。「そっと」がいいですね。──きなこ
* きゅっと寒い空気が見えてきます。──佐柳恵美子
2点句
(特選)三空
冬ざれの街をただよふ雪一輪(掃部けいじ)
*冬ざれの街も一輪の雪を見つけたことで少し華やいだ気持になったことでしょう。雪一輪とはいい表現です。──三空
(選)かしこ 白浜
冬麗のどこを切つても好き日かな(掃部けいじ)
*冬麗というだけで、ほんわか満足した気分。見えるもの、聞こえるもの、感じるもの、すべていいなぁと思う幸せな心持ちが、末尾の「かな」に出ている。──さとうかしこ
*カメラアングルだけではなく、ものや生活の厚みも加えた切り取り。冬麗なので背筋のシャンとした見目麗しい時となるのでしよう。かなが効いており、発想表現共、冬麗の本意に添っております。大画家の素描の様な句。──白浜和照
(選)かしこ 佐柳
霜柱こんなお菓子のありさうで (掃部けいじ)
*こんなお菓子あります!宮城県の九重本舗玉澤の霜ばしらという飴です。冬季限定。めっちゃ高いです。──さとうかしこ
*実際六花亭にあったような気がしますが、霜柱がお菓子に見える感性が食いしん坊。──佐柳恵美子
*予選──ありそう。あるのでは。もし、それが洋菓子ならば天才パティシエ。「美の壺」と言うTV番組で羊羹をやっていました。新作で羊羹の間に寒天他を挟んだ物がありました。カットして天地が羊羹、間に柱状の何かを入れれば出来そう。私的には寒天より道明寺粉で細工が出来ないものかなと思います。霜柱は出る場所で様々の太さ伸び方が異なります。15センチ位のを見た記憶があります。菓子ならばどんな霜柱を表現するのでしょうか。──白浜和照
*予選──ありそう、ありそう。シャクシャクと美味しそう。──きなこ
(選)かしこ 安達
たこ焼きの湯気に鉄の香油の香(掃部けいじ)
*見どころが良い。私にはソースの香りしかしないが。鉄も油も普通「匂ひ」と表現するところを「香」といったところ、苦肉の作かも知れないが面白い。──さとうかしこ
*そういえばタコ焼きの湯気の、鉄と香油の匂い!言われてみて、これはナルホドでした。──安達潔
(特選)白浜
おいちゃんのたこ焼ほかほか北風ぴゅー(佐柳恵美子)
*ヘタウマのヘタ寄り。先ず「おいちゃん」が良いのでしょう、ほかほかの凡な描写が逆に見事に見えます。「北風ぴゅー」は有季定形に置いてはダダでありパンクでありアートならばアウトサイダーの類。作者のニヤニヤに乾杯。この位遊ばれると尊敬と笑いの大感心です。並選の人いるのかな?作者やったと思って下されば、特選とした甲斐もございます。作者どなた!!?キャリアの深い方でありますやうに。おいちゃん、ぴゅーです、ぴゅーぴゅー。──白浜和照
(選)半田 白浜
冬空のすこんと晴れて海に来た(佐柳恵美子)
*すこん、にヤラレタ!──半田真理
*「すこんと」のベタな表現がこの句では良さそう。この句の命は晴れての「て」にあるのでは。「て」は本来因果の表現で詩から遠ざかるのですが、軽い意外性を持ち込むことで味わいを深めることも出来ます。。海はベタの続きなのですが「来た」が良い感じに決まっています。「盆すぎてもともと固き裏の木戸 弘」「て」の使い方の見本、しれっとナンセンスの見本だと思っております。──白浜和照
(特選)掃部
霧の夜の詫び状ありぬ近松忌(半田真理)
*「ありぬ」の物語調が超効果。措辞「桐の夜の詫び状」とは雰囲気抜群!!──掃部けいじ
(選)きなこ 佐柳
まだ満つる余白残して十三夜(文代)
* 余白ね!!──きなこ
* まだ満つる余地なんですね。その表現に感服です。──佐柳恵美子
(選)紫苑 文代
団栗がコツッと落ちる秋の道(きなこ)
* 団栗不足という今年。たっぷり両頬を膨らませるほど落ちたかな。そんな姿が見れそうな予感。──紫苑
*友人の先祖の古墳に連れて行ってもらった。道を歩いて行くと、団栗がコッッと落ちた。古墳は上部表面を剥ぎ取られている。石積みの長細い四角い窪みに、太刀や埋蔵品と共に、ご先祖が埋葬されていたのだろうか。橡の団栗がその窪みに山のように落ちていた。上を見上げると、太い橡の木から、また、団栗が音を立てて落ちた。
 団栗、秋の道は秋の季語重ね。でも、わざわざ秋のといわなくても、他の言葉でもいいかな?──文代
1点句
(選)安達
冬の蔦まだまだ青く家つつむ(三空)
*冬に入ってもなを青さを残す蔦、独特の風情です。どこか柔らかな幸福感があって、「まだまだ青く」、なるほどなあと思いました。──安達潔
*予選──蔦のからまる家。──半田真理
*予選──紫苑
(選)佐柳
遠くから自転車の灯残る虫(三空)
* 暗い道、他に通る人も車もなく、向こうから自転車の灯がゆらゆら見えてきて、足元には細々と鳴く虫。胸にくる風景。──佐柳恵美子
(選)かしこ
たこ焼をほほばる顔も文化の日(三空)
*頬を大きく膨らませてたこ焼きを食べている様がリアルに浮かび、その庶民性と文化の日という対比がユニークでまたほほえましい。──さとうかしこ
(選)半田
 栗名月声明流る深大寺(文代)
*まろやかな月の姿が浮かぶ。──半田真理
(選)武内
雨が降る枯れ葉は黙って地に落ちる(きなこ)
*「落ちる」葉の散る様子。落ちる音。濡れている葉の動きに 想像を豊かにしてくれます。──武内
(選)掃部
クルクルン一家に一台たこ焼き機(きなこ)
*「一家に一台」とか。「クルクルン」で頂き。──掃部けいじ
*予選──子供の頃 父親がたこ焼き機を買って来て作ってくれた。たこは入ってない。それが最初で最後。シンク下に置かれたままだった。──武内
(選)武内
リスが団栗を忘れてクヌギ林(きなこ)
*隠しておいた団栗を探して右へ左ヘ。隠したことも忘れ やがて埋めたところから芽が出る。「鶏は3歩歩くと忘れる」というが リスも忘れっぽいのだろう。──武内
(選)半田
栗名月声明流る深大寺(文代)
*まろやかな月の姿が浮かぶ。──半田真理
(選)白浜
無患子の葉影に清か後の月(文代)
*無患子は神代植物公園の薔薇園の奥売店横、流れの側の休憩場所で高い木の空間を作っています。落ちた実の印象が強く葉はネットで見て知りました。季重なりが最も自然に感じる句でした。後の月ととても良い取り合わせだと思います。──白浜和照
*予選── 後の月の、冷たい夜。──半田真理
(選)半田
十三夜月の暦を売りにけり(文代)
*十三夜の月の存在感。──半田真理
(選)佐柳
霜一夜開けくる空のすかんぴん(掃部けいじ)
*すかんぴんというリズムが好きです。空がすかんぴんなんて面白い。──佐柳恵美子
(選)かしこ
焼けるまで魅せる手さばきたこ焼き屋(掃部けいじ)
* 時々こんなプロがいるんですよね。素早くてきれいに仕上げる。待たされているのが苦にならないショーのような感じ。──さとうかしこ
*予選──なかなかたこ焼きも奥が深い。たこ焼き屋さんの手を見ると、目が離せない!作ってみたけど、なかなか大変だった。──文代
(選)紫苑
牡蠣鍋や炬燵に入り夫と一献(武内)
*炬燵でとは、、いよいよ冬本番らしいから良いですね。呑めなきゃ話にならない一句。呑めませんから頂戴いたしました。──紫苑
(選)三空
冬天や寺の山門櫨紅葉(武内)
*真っ赤な櫨紅葉と山門の組合せ、冬天にぴったりです。何んとなく立派な山門が想像されます。──三空
(選)三空
たこ焼きをふたりでつつく近松忌(半田真理)
* 近松の文芸世界の延長にいるようでおもしろい。──三空
(選)白浜
鯛焼きは季語なのにとたこ焼きが申すなり(半田真理)
* 鯛焼きは季語なんですね。季語とは何かを考えさせられる回であり特にこの句です。季語は歳時記に載っているものとしますと、歳時記を作成出来る集団には独自の季語がそれぞれあるのだと思います。季語は俳句にとって意味のあるシステムですが、無駄に多い気もします。たこ焼きも大阪のどこかの歳時記に載っているのでは。この句はいわゆる俳諧味たっぷりの作りで成功していると思います。迷名句。──白浜和照
*予選──爆笑!ひがむな!予選というより笑選としたい。──きなこ
(選)安達
縁側の日射しを惜しみ冬仕度(さとうかしこ)
*「惜しみ」となるとやや付き過ぎかもしれないのですが、緩やかな日射しの中の冬仕度、何だか豊かで、いいなあ。──安達潔
*予選──*惜しむ、ここがいい。──半田真理
(選)紫苑
立冬や昨日は夏日そんな年(白浜和照)
* 全く季重なりの句がピッタリの年でしたね。歳時記改編?しなくてはならないのではと案じました。──紫苑
*予選──本当にそんな変な年でした。でも、これが普通になるかも?──きなこ  
(選)三空
消防学校整理整頓冬の虫(安達潔)
* 消防学校と冬の虫の取合せは新鮮で決まっています。──三空

0点句
柚もいでお供へしますお命日(半田真理)
*予選── 見上げると、柚の実が色付き始めた。山奥の柚の里に育った母に、柚をもいでお供えしなくちゃ。柚の香に母が恋しくなった。──文代
総評
*兼題のタコ焼きにも参りましたが、季重なりって、二つの季語のニュアンスの扱いを区別しなくてはいけないので、これまたなかなか手ごわい課題でした。
これからも様々な課題設定、結構あり得るなあ、と思った次第です。──安達潔
*無季や季重なり俳句は、締切間際に作った句に、けっこう多いが、それが成功していたことは、あまりなかったように思う。
また、ある祭を詠みたいときに、その祭が季語になっていないこともあった。その地域に古くからある祭や神事なども、季語として詠めばいいのかも。──半田真理
*普通、俳句を作る時、季語は使うものだとか、季語重ねをしてはいけない、と言われている。が、あえて季語重ねをしようと思うと、あまり抵抗なくできてしまう。どうしてしたらいけないの?と思うくらいだ。今回は、あえてという事で、同じ季節、また違う季節の季語重ねの句が沢山あった。また、季語がなくても成り立ちそうなものもある。
 俳句の”季語“に関する当たり前に、あえてダウトをかけて、俳句を作るとどうなるのか?また、季語とはどういうものなのか?という事を考えさせられたのだろうか。──文代
*「季重なり」選んで 重ねて つなげて。楽しかった。TVで「俳句は映像なんだよ。どうやって言葉で映像化していくかなんだよ」と言っている。意識しつつも詠むのは簡単ではない。
「たこ焼き」は多分 焼き方に句が集中するだろうと思って ならば美味しいたこ焼きに仕上げようと 蛸を選ぶ句にしました。──武内
* 敢えて作る句重なりの句も味があっておもしろいですね。特に55番の冬ざれの句が好きになりました。──三空
* 意図した季重なりはかなり難しかったですね。栗島先生が「季語を軽く使う」と自句の解説でおっしゃっていたのを印象深く覚えております。逆に鯛焼きの本意を熱く語るどなたかの弁を聞いでみたくもあります。──白浜和照
[ 兼題出題 ]

☆白浜和照


補遺

水の会参加要領 ]

☆会費無料。

☆参加資格、俳句が好きな方。

☆投句締切、毎月17日23時55分。

 投句数(5~7句)当季雑詠、兼題あり。

☆選句選評締切、毎月24日23時55分。

 選句選評数(5~7句)選評字数制限無し。

☆スマホ・PCどちらでも参加可能です。

☆上記は、夏雲システム(ネット句会の自動進行ソフト)を利用させて頂きます。

☆過去このブログは同時進行の句会でした。

  現在は原則、句会の公開記録です。

 アップ更新は上記締切日の1~2日後です。


水の会は故栗島弘先生が主宰なさった句会の一つです。先生の句とお人柄が好きな人と、先生が他の句会で面白く思われ誘われた人で成り立っていました。現在もその人達が中核です。


夏雲システムを使ったネット句会は非常にクールで公平です。

また、現在の水の会は選句選句に一週間の時間があり対面の句会とは質が大きく異なります。

その時間作業は必然、自分への向き合いを深めて行きます。

「より自分自身にそしてオリジナルに」栗島先生の創作精神だと思っております。

ネット句会で最もスリリングだったのが、参加者14人・投句5句・6句選でした。

ご参加お待ちしております。

 

水の会事務