句会は夏雲システムで行っております。

このブログは公開の句会記録です。 


兼題「無季定型句」「片足立ち」。「無季定型句」厳密には兼題とは言えないかも知れませんが是非、意識し詩として作句してみてください。作句、鑑賞と異なる立場で対峙する事で、あなたの俳句観を深めると確信します。「片足立ち」この状態は誰もご存知と思います。状態のイメージが出来れば片足立ちの語は必要ありません。出題、白浜和照。


水の会に参加ご希望の方は24-06の回、選句・選評の最下段「補遺」をご覧ください。

投句一覧

1. たゆたうと流れし水の鳰の海

2. 来るはずのない電話待つ春の闇

3. 隙間なく春風の吹く野原かな

4. 芽柳の中でゆらりと抱かれけり

5. 面影を抱いて夜更けやコツプ酒

6. 遠方は風渡る森広き窓

7. よろけるや脚力劣る靴下に

8. 逆読みのクスリはリスクうそはそう

9. 人の輪のほぐれてゆきぬ蝌蚪の紐

10. やじろべえ天秤仕掛け釣瓶井戸

11. 連翹の煌めき疏水に雪崩れ落つ

12. 立ち読みに一人加はる花の雨

13. グランドに一人もをらぬ春深し

14. 十字路を過ぎて三叉路白い花

15. 春禽の一声長く長くあり

16. 風に音音に波あり波に風

17. 王貞治フラミンゴ打法ホームラン

18. 巫女の鈴ふるべゆらゆら馬酔木径

19. 崖径やふかい谷また深い空

20. ぶらんこと丸太真夜中の鳥の声

21. 舞台から落ちそうになりながら二人

22. 三筋の髪は御守りにするといふ

23. 思い込めついけんけんに青き踏む

24. 死者を葬り言葉たづさへ移動民

25. 筍を見てゐる風が吹いてゐる

26. 国葬の片足立ちや著莪野原

27. 鸛(こうのとり)片足立ちで蛇を喰う

28. 片足立ちを競ふ爺婆山笑ふ

29. 吾といふ変な塊春の雨

30. にんげんを見てゐるやうな花の房

31. 向き合うや観音像の1001体

32. 殉教の月日ばうばう春の星

33. 祖母も居てとても奇麗な日曜日

34. 言葉より武器可愛がる馬鹿者よ

35. 野火止の水の錆色囀れり

36. 八重桜静かな昼の駐輪場

37. 唐破風の花形歌舞伎カッカッカッカッカ―

38. よろしくどうぞと良くとおるこゑが

39. 母ゐます夢にはいつも吾は子供

40. 花散るや今日はあの猫(こ)の命日で

41. 右足はこの世左足あの世

42. 廃炉現場へ復興道路分岐

43. 異空へと逝く星達へ鎮魂歌 

44. 頬杖で昼を見てをりマドレーヌ

45. 廃工場雨の桜の匂ひせり

46. ひかり凪桜花巡礼杏子逝く

47. 外は雨ひとりで苺食べる午后

48. 黒髪文運健康手紙書く

49. 五分咲きや莟の開く音聞かな

50. 山中の馬酔木の花は高く咲く

51. 観音の御前に二人三月堂

52. 手仕事や心くだきし深眠り

53. 春陰や紙垂あたらしき屋敷神

54. 死の数へ蘇生のあはれ森の雨 

55. 母娘佇つ更地にしるき日照雨かな

56. 赤帯の受け身一瞬風光る

57. 王朝の日記読むとはおもしろき

58. 老いてなほ片足立ちてふうみよいつ

59. 踏み込んで二歩目を迷ふ春の泥

60. 花の房乳房のやうに垂れて雨

61. 初花の誰より早く飛んでゆき

62. 寝転べば雀の槍に囲まるる

63. 春の鴨しづかに岸を離れゆく

64. 頭を回しクフクフと馬鹿である

65. 落花いまだ筏を組むに足らぬほど

66. 師は逝かれ片足立ちの春野かな

67. 寄り添いて二人三脚パートナー

68. 見る桜見ない桜も咲いて散る

69. さくらさくら琵琶湖に流る花筏

70. 島影の神韻風のやどりかな

選句・選評

今回より特選2点選1点で集計します。


7点句

(特選)小川 武内(選)白浜 安達 きなこ

ひかり凪桜花巡礼杏子逝く(文代)

*3月13日逝去された黒田杏子さんへの哀悼句。こころに沁みる一句です。”桜花巡礼”静かに旅立たれました。ご冥福をお祈り申し上げます。合掌──小川浩志

*黒田杏子氏への追悼の句。夏井いつき氏の師ですね。天蓋桜が舞い注ぐなか旅立たれたのでしょうね。──武内

* ひかり凪と言う言葉も黒田杏子の句にあるのでしょうか。桜の向こうでシルエットになった海辺の道行。豪華な追悼句。物語の中へと逝かれたのでしょう。──白浜和照

*「ひかり凪」という言葉に初めて出会ったのですが、追悼にこれほど嵌る言葉があるのにビックリしました。この一言が「桜花巡礼」とくっきり響き合って、先生の足跡を見事に伝えていると思いました。

今回は無季がテーマだったのでそちらを優先しましたが、そうでなければ特選でした。上五に脱帽です。──安達潔

* 黒田杏子さんが逝きました。桜花巡礼。合掌。──きなこ


5点句

(特選)かしこ きなこ(選)武内

隙間なく春風の吹く野原かな(三空)

* 風のことを「隙間なく」吹くと言われ、そうか!と。生命の女神のように隅々まで吹いて芽吹きを促す。メルヘンチックな情景を上五の硬い表現で抑えている、と取りたい。──さとうかしこ

 *「隙間のない風」というのが当たり前なのにしみじみ納得。一面・・全体・・漏れなく吹き渡る。ストライプの風があったら面白いのにww。──きなこ

* 洗いざらい持ち去ってくれ!

全身で風を受け 鳥や虫の声を聞きながら野原に立っている自分を想像しました。──武内

*予選*隙間なくが良いです。──白浜和照


4点句

(特選)半田(選)小川 カコ

芽柳の中でゆらりと抱かれけり(文代)

*芽柳のやわらかな枝の中に潜り込む。頬に優しく触れるのは柳なのか。まるで抱かれるようだ、と言っているのだが、もしかして柳に隠れるように、ゆったりと抱かれているのかもしれない。芽柳の瑞々しさは、若々しい恋人たちの姿にも重なる。──半田真理

*一読、”ゆらりと抱かれけり”で戴きました。ファンタジックな句。時にはこんな句も楽しいですね。因みに俳諧初学抄(1641年)に柳が芽吹くのは桜の花のころと重なり、その柔らかな緑の芽は古来春の代表的な彩りとして「柳桜」と愛された、とあります。

芽柳の中で……。その心分かるなあ。──小川浩志

*先生の句を思います。抱かれけりとはなんとも艶やか。──カコ

(特選)白浜(選)文代 半田

野火止の水の錆色囀れり(小川浩志)

* 野火と言えば自然発火や不審火による野の火事だと思っていましたが、野焼きの事でもあるのですね。野焼きを見た事がありません。延焼防止が必要ですね。川の水等を引き入れた結構な幅の水溜りなのでしょうか。野焼きの数日後黒い原野と熱と作業の結果の錆色の水。そこから少し離れた雑木林の囀り。人の営みと季節の移りが、小さなポイントの描写と囀りで描かれております。名人の作では。──白浜和照

* 野火止用水は江戸時代、民は水に困り、玉川上水から分水を許されて堀り進められた。しかし、いつの間にか生活排水等で汚染が進み暗渠となる所も多かった。そして人々の浄化の試み、緑の自然林等が大切にされるようになった。野火止の歴史の重さ、水は鈍色でも鳥達の囀りが戻ってきたのか。──文代

 *水の錆の色、ここがいいです。──半田真理

3点句

(特選)掃部(選)白浜

右足はこの世左足あの世(きなこ)

* 生きているってこんな状態かも。でも見えているのはこの世ばかり。いや待て、我々は沢山のポエジーを見落としているように、あの世も見えているのに見落としているのかな?──掃部けいじ

*確かに質的にスケールの大きな片足立ち。右の眼に大河左の眼に騎兵(三鬼)を少し思いましたが、こんなんでどうだと言ういたずらっぽい作りでは。この世の右足は何処に立っているのでしょう。様々のシチュエーションが思い浮かびますが、読む人に放り投げてニヤリの表現となっております。──白浜和照

(選)三空 文代 武内

来るはずのない電話待つ春の闇(きなこ)

* もしかしたら待っておられるのは既に亡くなられた方からの電話でしょうか。亡くなられたことがまだ信じられないのでしょう。「春の闇」に深い悲しみを感じます。──三空

*来るはずのない電話の人はどんな人かと思う。亡くなった人?思いの伝わらない人?何だか、春の闇が切ないですね。──文代

 *常に実家のことが悩みの種だった。電話があるたび暗い気持ちとなり 生き別れの後に亡くなった父。誰にも見送られず逝った母。孤独のなか淋しく命を絶った弟。死後2日目に発見されたもう一人の弟。電話を待ってももうこない。作者の思いとは異なるのでしょうが こんなふうに句を詠めるんですね。──武内

 (特選)三空(選)カコ

遠方は風渡る森広き窓(白浜和照)

*ひんやりとした窓ガラスの向こうに風が渡る森。季語がなくても新緑の森を感じます。──三空

*どんなに大きな窓際かしら。しかも森が見える、、丸ごとの自然を捉えての暮らしが見えますねえ。──カコ

*予選* 下五が少し弱いようにも思いますが、上五中七の広やかな情景はよく伝わって来ると思いました。それにしても、無季って、難しい。──安達潔

 (特選)文代(選)きなこ

師は逝かれ片足立ちの春野かな(三空)

* 春野に杏子先生は逝かれた。私達は片足立ちの不安定なまま、師の突然の旅立ちを見送らなくてはならない。心の揺れはおさまりそうにもない。私達は大切な師を亡くした。──文代

* 先達の師を亡くし、茫然と春の野に片足でたたずむ頼りなさ。合掌。──きなこ

(選)白浜 かしこ 武内

片足立ちを競ふ爺婆山笑ふ(小川浩志)

* 視線の優しい句です。信州辺りの自治体でライザップと提携し、老人の運動の推奨・補助が広がっていると言う報道を見たことがあります。さいたま市でもゴミ焼却場にプール、風呂、マシーントレーニング、カラオケ等を併設した施設に使用料市民は百円で、ルート時間は決まりますが無料送迎しています。ただ、爺婆はあまり話しません。この句の様ならばもっと良いですね。──白浜和照

*季語が妥当かどうかわからないが、爺と婆が可愛らしくて良い。──さとうかしこ

* 仲良く競っているご夫婦?ロコモにならぬよう 筋力を鍛え 私も頑張ります。──武内

(選)かしこ 安達 半田

春陰や紙垂あたらしき屋敷神(小川浩志)

*小暗いところに紙垂の白さが際立つ。映像がしっかりしている。──さとうかしこ

*「春陰」でなければ恐らく「あたらしき」が、これほど鮮やかに立ち上がっては来なかったように思います。微妙な季語が情景にピタッとはまって、とても感心しました。これも特選にしたかった句です。──安達潔

*── 半田真理

*予選*しで、と読むのですね。──白浜和照

2点句

(特選)安達

舞台から落ちそうになりながら二人(半田真理)

* 背景の説明は一切省いて、舞台上で縺れ合う二人(その他大勢が居合わせているのかもしれないけれど)の有り様だけはくっきり輪郭づけられて、句としてはそれっきり。作者は句の表からすっかり姿を消して、脚本から引用されたト書きの一行のようでもあります。

けれども、たった一行のト書きが独立すると、一瞬の情景が、なるほど見事に切り取られて、この着想は面白いなあと感心した次第です。

無季俳句と言われると、どうしても観念に走りがちな小生には、句の、軽く突き放した感じも魅力的でした。──安達潔

(特選)カコ

祖母も居てとても奇麗な日曜日(白浜和照)

*季語無し。でも、祖母が居る綺麗な日曜日、しかもとてもまで添えてある。綺麗にも色々あるでしょうが祖母様への愛情、敬愛、思慕が込められているようで素敵。無季は作者は意図してなのでしょうね。──カコ

*予選*不思議に静かな、親しみのある句だと思いました。──安達潔

(選)三空 カコ

面影を抱いて夜更けやコツプ酒(小川浩志)

*黒田先生、栗島先生の面影でしょうか。夜更けのコップ酒、しみじみと思い出されることでしょう。──三空

 *こんな時はワインよりコップ酒が似合うのかなあと。やるせないですなあ。──カコ

*作者コメント*面影を抱いて夜更けやコツプ酒、まっそんなもの。浴びちゃってください。──小川浩志

(選)かしこ きなこ

赤帯の受け身一瞬風光る(小川浩志)

*赤帯とは黒帯の上の資格のことと初めて知った。まさに一瞬の技だったのだろう。風光るの季語が素晴らしい。──さとうかしこ

*柔道?空手?黒帯はまだだが大部鍛錬を積んだ若者の、気迫のこもった受け身。

一瞬風が光るように、彼も光る。──きなこ

*予選* 紅白帯までは見たことがあります。──白浜和照

(選)小川 安達

人の輪のほぐれてゆきぬ蝌蚪の紐(さとうかしこ)

*人の輪と蝌蚪の紐との取り合わせの句。二物衝撃になっているのか、よく分かりません。句意もよく分かりません。何となく面白い句だなあと思い戴きました。

人の輪が解けてゆく光景を見ながら、オタマジャクシの卵からカエルに成長するまでの過程を、重ねて言っているのか、よく分かりません。鑑賞文になっていませんが、平にご容赦下さい。──小川浩志

*「カエルの卵だよ~」「どれどれ」てな具合でほんのひと時集まっていた人の輪が自然にほぐれて…、「蝌蚪の紐」。毎年目にする景色だけれど、うふふ、春だなあ。──安達潔

(選)白浜 文代

立ち読みに一人加はる花の雨(さとうかしこ)

* コンビニでしょうか。現在は天気予報アプリで雨雲の状態が分かります。目黒川辺りで一人花見散歩を楽しんでいたのでしょう。加わった人も同じなのでしょう。花の雨が明るくて良いですね。花の頃のある日、日常の軽快なスケッチ。──白浜和照

☆三空?花見の群れから、立ち読みの群れへの変換が面白い。立ち読みに夢中になって桜を忘れたり?──文代

(選)半田 カコ

グランドに一人もをらぬ春深し(三空)

*シンとした風景に、春の静かな日の光。──半田真理

*晩春はなんか憂いを運んで来るように思えてならない。一人も居ないグランドは一層。──カコ

(選)掃部 武内

言葉より武器可愛がる馬鹿者よ(安達潔)

* 「馬鹿者よ」は何とかならないかと考えましたが、私も大声で叫びたい。「馬鹿者よ!!!」──掃部けいじ

*誰とは言わないが愚か者!──武内

1点句

(選)かしこ

筍を見てゐる風が吹いてゐる(三空)

* 筍は風になびかない。その事実。淡々とした中に、蕭条とした寂しさがある。──さとうかしこ

(選)白浜

吾といふ変な塊春の雨(三空)

*自意識過剰の青春期。昔、鼻の穴が大きくすれ違う人が皆そこを見ると、一日鏡の前で溜息をつき外出出来なくなった知人がいます。この種の人は現在大増殖中。春の雨を青春の涙と捉えればこんな感じでは。ただ、春の雨の色っぽさから言えば「変な」に否定的な意味は加わらず、反語的なナルシズムの句。──白浜和照

(選)小川

春の鴨しづかに岸を離れゆく(三空)

*春先から鴨は北へ帰って行くが、春深くなってもまだ帰らずにいる鴨。

毎年、私の近くの川にも鴨は訪れます。特に番の鴨の動きを追って行くと、微笑ましい場面にたくさん出会えます。その鴨が帰ってしまう、寂しい限りです。──小川浩志

(選)安達

八重桜静かな昼の駐輪場(三空)

 *八重桜、真昼、駐輪場。たとえ空気が少しヒンヤリしていたとしても、どことなくまったりした春の佇まいが伝わって、共感しました。ただ、「な」が必要だったかどうか、ワガママな感想です。──安達潔

*予選* 八重桜は見ている。朝、夕は自転車止める人達が桜を見上げることを。人のいない静かな昼も、八重桜は黙って立ってる。──文代

(選)安達

花散るや今日はあの猫(こ)の命日で(きなこ)

*(こ)の命日かあ。ひらひら流れ散る花びらと猫の命日。ちょっと語り掛けるような「で」終わって、旅立った猫を静かに偲ぶ、ああこの感じ、ぴったりの「花散るや」!──安達潔

(選)半田

山中の馬酔木の花は高く咲く(きなこ)

*── 半田真理

(選)掃部

見る桜見ない桜も咲いて散る(きなこ)

*一目千本と言われますが、なかなか全てを見られるものではありません。「見ない桜」への限界を越えての賛意と存問。──掃部けいじ

*予選* 人間界にも通じる面白い見方です。──三空

(選)きなこ

十字路を過ぎて三叉路白い花(白浜和照)

* 情景が目に浮かびます。また分かれ道、白い花が行く道を示してくれるような。──きなこ

(選)三空

崖径やふかい谷また深い空(白浜和照)

*谷が深い分空は深くなりますね。谷と空を並べることで、とても険しい崖の姿が見えてきます。──三空

(選)掃部

頬杖で昼を見てをりマドレーヌ(白浜和照)

* 「マドレーヌ」が、あたかも季語のような存在感。上五・中七の詩情を際立たせています。”もの”に寄せて句を詠む強み。無季の句には更に威力が。──掃部けいじ

(選)カコ

連翹の煌めき疏水に雪崩れ落つ(文代)

*色彩が美しい。連翹の黄色に透き通る雪解けの水路、早春の北国ですか。──カコ

*予選* 連翹の花は本当に、まるで水に向かって雪崩落ちるように咲きます。咲き方が変わっていて美しい。──きなこ

(選)小川

老いてなほ片足立ちてふうみよいつ(文代)

*”健康寿命を伸ばしたい”思いは様々ですが、この片足立ちも「体操教室」などで盛んにやっているようです。はい、スタートで始まり、何秒立っていられるか。はい、そこまで。本句は競う心も無く、自分で「ふうみよいつ」と数えています。微笑ましい一句となりました。──小川浩志

(選)三空

さくらさくら琵琶湖に流る花筏(文代)

* 琵琶湖に流れる花筏。何ともあでやかさを感じます。──三空

(選)武内  

異空へと逝く星達へ鎮魂歌 (掃部けいじ)

*「異空へと」「鎮魂歌」が胸に響きました。いろいろ述べたいのですがうまく言えず まいりました!──武内

*予選* このところ星のように輝いていた方達が次々と亡くなられた。一つの時代が終わっていくように。鎮魂歌が流れていく。──文代

(選)文代

死の数へ蘇生のあはれ森の雨 (掃部けいじ)

*ブナの森を歩くと大樹が倒れていることがある。今までこの下で隠れていたもの達がいっせいに命を懸けて大きく育ち始める。日の光と水と栄養を受け継いで。森の蘇生は自然の摂理。そんな森を長い間歩いてきたなあ。また、歩けるといいのに。──文代

(選)かしこ

踏み込んで二歩目を迷ふ春の泥(掃部けいじ)

*あるある感。おっとっと感。──さとうかしこ

*予選* ほんと、こんな事ってあるなあ。迷って春の泥にまみれる事も。でも泥んこ遊びまでしたって、春の泥ならいいかな?😊──文代

(選)掃部

にんげんを見てゐるやうな花の房(さとうかしこ)

*「にんげん」も”見られている”逆転。「花の房」が世を覗いている形状と云う事ですね。──掃部けいじ

(選)きなこ

花の房乳房のやうに垂れて雨(さとうかしこ)

並選

*フッサリといおうかボッテリといおうか・・。柔らかく暖かく豊かな花の房。雨に濡れればなおさらに。──きなこ

*予選*これは何ともすさまじい比喩。驚きの一言です。──三空

(選)小川

寝転べば雀の槍に囲まるる(さとうかしこ)

 *今まで”雀の槍”で俳句を作ったことも無く、写真付歳時記を見て納得しました。

余談となりますが、私が生まれ育った昭和30年代の農村は二毛作で、今ごろは大麦、小麦の収穫期でした。また、この時期はレンゲソウ畑によく寝転んだ記憶があり、本句を読み郷愁にかられました。──小川浩志

*予選* 庭に生えています。「雀の槍」「雀のえんどう」可愛い名です。足元には 小さなすみれも咲いています。そろそろねじれ花も出てきそうな。──武内

(選)文代

殉教の月日ばうばう春の星(小川浩志)

* 信仰の為に殉教する人も、隠れる人もいた。遙かなる年月、遙かなる星の光、わが家の椿は“玉の浦”五島列島の隠れの島からやって来た小さな島椿、白覆輪の春の星だ。──文代

(選)三空

廃工場雨の桜の匂ひせり(小川浩志)

* 雨の桜の匂い。そう言われるとそうなのかな~と思ってしまう。一風変わった感じ方に感心。──三空

*予選*──安達潔

(選)半田

唐破風の花形歌舞伎カッカッカッカッカ―(武内)

*当代人気演目は、季節的にいって助六由縁江桜か。その助六の啖呵ではなかろうか。はたまた、團十郎の睨みかも。芝居小屋ならではの臨場感は、病みつきになる。──半田真理

(選)掃部

よろけるや脚力劣る靴下に(武内)

*下五「靴下に」の落しどころが効いている。「靴下」の僅かな弾力に「よろけた」のである。面白い!──掃部けいじ

(選)掃部

黒髪文運健康手紙書く(半田真理)

* 「黒髪文運は」杏子先生の願い事。私は主君を失った家来の心境。浪々の身のあわれ。──掃部けいじ

(選)かしこ

島影の神韻風のやどりかな(安達潔)

* 神韻、辞書で調べました。島影の絶妙な趣きと風の宿りの斡旋が、詩的。無季でこんな良い句に出会えました。──さとうかしこ


0点句

春禽の一声長く長くあり(半田真理)

*予選*── 安達潔

風に音音に波あり波に風(掃部けいじ)

*予選* 回し文?面白!──きなこ

廃炉現場へ復興道路分岐(安達潔)

*予選* 何だか、切ない。復興と廃炉のせめぎ合い。この国の原発政策はどこへ行こうとしてるのだろう?コロリと変わる恐ろしさ。──文代

外は雨ひとりで苺食べる午后(きなこ)

*予選* こんな時があった。ひとりで食べる苺の甘酸っぱい味が心にしみる。──文代

寄り添いて二人三脚パートナー(武内)

*作者コメント *二人三脚は寄り添ってるから「寄り添いて」はいらなかった。 

総評(投句一覧を見ての感想)


*「無季の句」とは糸の切れた凧のようですね。何処へ落とせば良いのやら、大空を彷徨うようです。と云うことは有季定型の名のもとに狭いイメージの世界に安住しているという事かな?もっと自由に「有季定型」の世界を押し広げるべきか?何か暗示を賜ったような今回の兼題でした。──掃部けいじ

* 大変にレベルの高い回だと感じました。今回の結果後から談話室を使ってみたいと思います。──白浜和照

*自分の句を詠んでも何故か結球しない。いつも説明文( ´Д`)

皆さんの句は 筋肉がついている。と思います。──武内

* 無季俳句と言われて、やおら『証言昭和の俳句』三橋敏雄氏のインタビューや、恩田侑布子さんのエッセイ等、読むには読んでみたものの、さて作るとなると、難しい~! 季語があれば曲がりなりにも季語との対話からスタートできる(?)筈だけれど、無季となると、対話すべき言葉探しを自分でしなくちゃいけない…。それでいて重ったるいのはイヤ…。参りました。──安達潔

[ 兼題出題 ]

☆白浜和照


補遺

水の会参加要領 ]

☆会費無料。

☆参加資格、俳句が好きな方。

☆投句締切、毎月17日23時55分。

 投句数(5~7句)当季雑詠、兼題あり。

☆選句選評締切、毎月24日23時55分。

 選句選評数(5~7句)選評字数制限無し。

☆スマホ・PCどちらでも参加可能です。

☆上記は、夏雲システム(ネット句会の自動進行ソフト)を利用させて頂きます。

☆過去このブログは同時進行の句会でした。

  現在は原則、句会の公開記録です。

 アップ更新は上記締切日の1~2日後です。

☆参加ご希望の方は、24-06の回、選句・選評の最下段「補遺」をご覧ください。


水会は故栗島弘先生が主宰なさった句会の一つです。先生の句とお人柄が好きな人と、先生が他の句会で面白く思われ誘われた人で成り立っていました。現在もその人達が中核です。


夏雲システムを使ったネット句会は非常にクールで公平です。

また、現在の水の会は選句選句に一週間の時間があり対面の句会とは質が大きく異なります。

その時間作業は必然、自分への向き合いを深めて行きます。

「より自分自身にそしてオリジナルに」栗島先生の創作精神だと思っております。

ネット句会で最もスリリングだったのが、参加者14人・投句5句・7句選でした。

ご参加お待ちしております。

 

水の会事務