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このブログは公開の句会記録です。  


◎兼題1.「初鴉](「寒鴉」も可) 普段は何かと邪悪視される鴉ですが、雀と同様日常の環境にいつもの奴。お正月には、季語「初鴉」の栄誉を得ております。とにかく身近な鳥です。是非、目視嘱目の句を。 ◎兼題2.「オノマトペ」を入れて一句。 一句の成功・失敗はすべて「オノマトペ」に懸ります。通常罷り通っているものは駄目。あくまでも独創的であり且つ、成る程と思わせる説得力を要します。本来、音を持たぬものにも与える事が出来ます。 思いっきり個性的な一句を。出題、掃部けいじ。

出句一覧

1. 松明のパチパチはぜる能始

2. 電線に二羽並び居て初烏

3. 春近し夜雨降りだす水飲場

4. しゃらしゃらと落葉の音をいくたびも

5. 私が揺れるのはすきま風のせい?

6. シーソーの片側は地に水仙花

7. ツツピーツツ今日は良い日だシジュウカラ

8. 凍った土押しのけて咲く福寿草

9. わしわしと海苔掻く岩場冬うらら

10. ひりひりと足元冷ゆる永平寺

11. 初釜の釜の六音チンチンと

12. 数の子を噛むこここここことアルファー波

13. 冬の川しなの鉄道かしゃかしゃと

14. 滝音に冬の夕映さだまりぬ

15. 母の忌を独り供養す水仙と

16. 枯蓮とんとんとんと日が当たる

17. 一羽飛びすぐに一羽や初鴉

18. 綿虫や航空母艦ちやぷちやぷ

19. 寒烏犬亡き庭にカアと鳴き

20. 冬の海見ながら向かう歯科検診

21. すたすたと神は友だち初鴉

22. みっしごんごら大根引く折れにけり

23. 寒椿ししししふたり泣いている

25. 手鞠唄に兵隊さんが隠れてた

26. 篝火の夜を明けはらふ初鴉

27. 公園の日の芝渉る四日かな

28. 歯にフッ素チョコが食べたい冬の午後

29. 初鴉ひとしほまさる濡れ羽色

30. 漆黒のその先は明(あか)初烏

31. 口開けて聲まだ出さぬ寒鴉

32. 初鴉絆深める羽繕い

33. 輪飾や夕星明かく富士遠く

34. ちくちくと柚子湯はしみる長湯して

36. 柚湯してぷかりぽかりの効いてくる

37. 岬道水仙香る別れかな

38. ほつほつと老人生えて冬ぬくし

39. 水仙の束さし出され香の満つる

40. 軒つららきんかんぽんと打ち落とす

41. 氷張り小鳥戸惑う水浴び場

42. もはもはとペンギン歩き重ね着て

43. 家出猫ほんのと戻る女正月

44. 日脚伸ぶ樹にこんもりと鴉の巣

45. ほたりほたり羽の重たき寒鴉

46. 風紋のしろじろ黒し冬の海

47. 音もなく仄かに兆す初日かな

48. 春着子のちりりちりりとどこか鳴る

49. 冬の星ラピスラズリの深い色

50. 垂直に晩年が来た冬帽子

51. 初夢の香りの残るあなたかな

53. 初鐘や清姫の鐘妙満寺

54. 白きもの咥へて上がる寒鴉

55. 二人来た道ひとりゆく寒椿

56. 柚子湯の香チャポンふわぁと手足のぶ

57. 豊凶の天候占う小豆粥

58. 柴折戸のいつから開かぬ冬深し

59. 同じならほほゑみ生きる日脚伸ぶ

61. 初明り祈るキーウの鳥の歌

62. 蝋燭のフフフルルルと二日かな

63. 庭に咲く白き普段着花八手

選句・選評

6点句

(特選)三空(選)掃部 安達 かしこ カコ 文代

垂直に晩年が来た冬帽子 (白浜和照)

*まさに共感いたします。自分の場合も徐々にではなく、あちこちが急に弱りだして驚いています。晩年は本当に垂直にくるものですね。冬帽子のイメージはそんな気持を包含しているように思えます。──三空

 *「垂直に」の象徴的切迫感。効き目十分。──掃部けいじ

 *足元からか空からか、気が付かぬうちに晩年はやってきた。その思いが冬帽子に集約されている。そんなわけで、これはただ、薄くなり始めた髪を守るためだけの「晩年の冬帽子」ではない。上からにせよ下からにせよ、身を「垂直に」貫くような晩年の到来に気付いてしまったからには、ともかくも冬帽子のお世話にならずばなるまい。う~、晩年はシバレルねえ。

ところでこの「垂直」、なかなか効いてると思いましたが、ひょっとすると、〈貫く棒の如きもの〉のパロディか、とも思いました。──安達潔

*高村光太郎の、「きっぱりと冬が来た」、的で垂直がきっぱりに相当するかと。しかし、冬帽子が唐突な感じがする。──さとうかしこ

* 晩年が垂直に来る、、そんな感じがよくよく分かる。斜めでも、ジグザグでも無いすうっと。気づいたら晩年であった。

いつのまにである。──カコ

 *垂直に晩年が来たという表現が、よくわかる。まだまだいろんな事が出来る、まだ若いと思ってた。失われたものは何?物忘れ、勘違い、マスクを取ると、誰?これ!秋はなく、急激な冷え込みの冬が来た。冬帽子でも被ってましょうか。──文代


5点句

(特選)きなこ 半田(選)白浜 カコ 文代

軒つららきんかんぽんと打ち落とす (掃部けいじ)

* きんかんぽん・・・この一種陽気な澄んだ音は、つららをつららで、あるいは他の硬いもので打ち落とした人でなければ知らない響き。

大体お天気の良い日にやるので心も明るい。きんかんぽん♪・・・楽しいな。──きなこ

*硬くしまった氷柱なのだろう。それを壊すのでなく叩き落とす、といったところがいい。落ちたさきは雪深いので、すぽっと突き刺さるのであろう。叩くのだって、ここぞというポイントがある。そこをめがけて叩いてみると、なんとも良い音がする。奏でられる音は、氷柱の太さ、長さ、硬さで変化する。

 きんかんぽん。澄んだ音の響きに、実感がこもっている。──半田真理

*明るく童謡の様な響きのある句。「きんかんぽん」はつららの太さの差なのでしょう。僅かなつらら経験ですが、軒つららの実に的確な描写だと思います。下五は童謡からわらべうたへの鮮やかな転換。軒つららも育つと大変なのでしょう。──白浜和照

*きんかん まではあり得るだろ。最後の ぽん が確かにそんな感じだ。上手い捉え方に感心した。──カコ

* きんかんぽん!小気味よい氷の楽器のよう。しかし、北国の人にとっては音に感動するどころでない。雪と氷との戦いなのだ。美しく煌めいて響く氷の楽器を打ち落とすのだ。──文代

4点句

(特選)文代(選)掃部 きなこ 半田

口開けて聲まだ出さぬ寒鴉 (三空)

* 烏の朗読をして下さった演劇科のN先生を思い出す。黒い衣に身を包み、身体が、心を言葉を紡ぐ。その深い烏の聲に引き込まれていく。 寒烏は何が言いたいのか。聲が出ないのではない。まだ出さないだけなのだ。口を開けたのに。どうして出さない。聲を出したらどうなるのか。寒烏はもしかして何かの比喩?様々なことの起こる世にいて、いろんな事が頭をよぎった。──文代

* 上五・中七の措辞。啼かない鴉を視点で捉えたところがお見事。──掃部けいじ

* あまりに寒いからか、まだ寝ぼけているのか、口だけ開けて声を出さない鴉の様子が目に浮かびます。マヌケなのにそこはかとなく悲しい。──きなこ

*カアーと一声。その前に、声にならない声がありますよね。そこを捉えた一句。──半田真理

(選)掃部 三空 カコ 半田

わしわしと海苔掻く岩場冬うらら (さとうかしこ)

*「わしわし」が独創的。且つ「海苔掻く」にリアリティを持たせている。オノマトペの理想型。──掃部けいじ

*「わしわし」で冬麗らの日の海苔掻きの様子が目に浮かびます。──三空

* わしわしと言われたら、、季語が冬うららだからよく合う擬音だと思う。カリカリではないなあ。──カコ

 *麗らかな日差しの中で、海苔を掻く仕事はキツイであろう。わしわしに、頭が下がるのであります。──半田真理


3点句

(特選)白浜(選)かしこ 半田

春着子のちりりちりりとどこか鳴る (掃部けいじ)

*オノマトペが絶妙、「どこか」が更にとどめです。春着は新年の季語なんですね。四重五重に縁のない来し方ですが、イメージは鮮やかに立ち上がります。

ちりりちりりは繊細な気配で、どこかは糊の効いた新調の和服の固さの小さな解れ、帯紐の伸縮等の視覚で聞く音では。

未だ体に馴染んでいない晴れ着と子供を描写した名句だと思います。作者が有名俳人ならば人口に膾炙する代表句となるのでは。──白浜和照

*お飾りに鈴をつけているのでしょう。春着にふさわしくのどかな光景です。──さとうかしこ

* 幼い子供に着せた春着。

ちりりは、鈴の音かもしれないが、実際に鳴らないでもいいのかもしれない。動くたびに、幽かに聞こえるもの。それは親の心に響いている、嬉しい音かもしれない。──半田真理

(選)三空 安達 武内

電線に二羽並び居て初烏 (きなこ)

* 番いなのでしようか?初烏として、なにかほのぼのとしていていい感じです。──三空

* 何の変哲もない見慣れた光景ですが、「おッ、吾も正月なら君らも正月か。お互い、ツツガナク行こうぜ」といった感じの、新年の軽いあいさつ。

庶民のお正月の感じがよく伝わって、「初烏」二羽に向けた、今年もよろしく、の感じ、あるなあ。──安達潔

 *「可愛い!」とは言えないが 何の相談? 頭上から人間を観察。世のなか カラスも人も住みにくくなった。──武内

(選)白浜 きなこ 武内

もはもはとペンギン歩き重ね着て (さとうかしこ)

*ボア生地のズボンをはいた幼児の描写かと思ったのですが、「ペンギン歩き」を調べると「雪道の歩行方法」の他「歩行能力低下、認知症確率三倍」等あり、「もはもは」が俄然ブラックな様相を呈して来ました。重ね着の持つある種貧しさ、ペタペタ歩き老人の自虐のスケッチ、ではないですよね。──白浜和照

*着ぶくれて体が思うように動かず、もはもはとぎごちなく可愛く歩くのは自分でしょうか、向こうから来る子供でしょうか。

はじめてきくオノマトペ「もはもは」が面白い。──きなこ

*北の有名な動物園。恒例のダイエットのための行進。長い時間待ち 人間は着膨れて 最後尾まで見る。──武内

2点句

(特選)カコ(選)安達

母の忌を独り供養す水仙と (武内)

 *水仙を供え母上の供養。ちょっと寂しくもあるが母と向き合い語り合うひとときかもしれないと思ったら水仙花が楚々として相応しく暖かな気持ちになれた。そして何故かほろっとした。──カコ

*仏壇に挿された水仙、墓石の傍らに咲いている水仙、いずれにせよ〈深き心をおこして〉、作者は母上を追悼しておられる(ただし事情があって、今日は一人)。作者の選び取った「水仙」が、おのづから、母上の凛としたお人柄を立ち上がらせてくれるようです。

ただ、「独り」は何らかの意味で「一人」を強調していると思われますが、この句の場合、その強調が上手く働いているかどうか、スミマセン、少し疑問に思えました。──安達潔

(選)きなこ 半田

数の子を噛むこここここことアルファー波 (掃部けいじ)

 *数の子を嚙む音は他の食べ物のどれにも似ていない。

ここここここのオノマトペが独特。字数からいくと「ここ」が一つ多いような気もするが、強調されて印象的。──きなこ

*こここここれは、やりましたね。ひたすら噛む、無心で噛む。だって数の子は、いつまで噛んでいればいいのか、正解が今だにわからないんだもん。

そのうちに、恍惚になるのだと、この句が言っている。──半田真理

(選)かしこ 白浜

枯蓮とんとんとんと日が当たる (安達潔)

*オノマトペが気持ち良い。日が当たるより日の当たるのほうが調べが澄んでいるように思います。──さとうかしこ

* 枯蓮とそれを見る作者とをいたわる様な、冬晴れの陽ざしなのでしょう。枯蓮にも初期中期晩期とありますが、初期ならば枯蓮に晩期ならば枯蓮に重ねた作者へと移行する陽ざしなのでは。──白浜和照

(選)かしこ きなこ

寒烏犬亡き庭にカアと鳴き (文代)

* 飼い主も鴉も犬を偲んでいるのが伝わります。──さとうかしこ

 *ウウッと胸に迫る寂しさ、喪失感。もうお前はいない・・・カラッポの庭。カラスの鳴き声がむなしく響く。──きなこ

(選)かしこ 文代

みっしごんごら大根引く折れにけり (白浜和照)

*みっしごんごらというオノマトペがわかりません。しかし、大根をようよう引いたら折れちゃったというのが、なんだか伝わります。──さとうかしこ

*子供たちと種蒔いて育てた大根、さあ抜くぞ、太いずっしりした大根は、みっしと音たてて折れ、ごんごらと転がった子供!思い出すなあ──文代

(選)文代 武内

冬の星ラピスラズリの深い色 (半田真理)

*ネパールの山に登った娘が言った。濃紺の空に、満天の星。ラピスラズリの煌めく星。山々は、かつて海の底だったという。静けさの中で、ここが空なのか、海の底か、わからなくなってくる。そして、微かに日が射してくると、ぐるりと囲んでいる白いヒマラヤ山脈は、うっすらと薔薇色に染まっていく。深い海の記憶。ラピスラズリの深い色。──文代

*幸運を招く石。色は地球のように青い。一時期 パワーストーンを収集。我ながら欲張り。──武内

(選)掃部 武内

同じならほほゑみ生きる日脚伸ぶ (三空)

*季語「日脚伸ぶ」が良く働いている。──掃部けいじ

*悩みのない人はいない。いろいろなことがあるから人生は面白い。私も笑顔を忘れず生きていきます。──武内

1点句

(特選)武内

ひりひりと足元冷ゆる永平寺 (さとうかしこ)

 *骨冷えの季節に訪れたとき 修行僧の足元は裸足。しもやけ ヒビ切れ。血が滲んでいました。──武内

(選)三空

冬の川しなの鉄道かしゃかしゃと (さとうかしこ)け

* 「かしゃかしゃ」によりその電車の形態が見えてきます。冬の川を交えた信濃の風景も見えてきます。──三空

(選)三空

しゃらしゃらと落葉の音をいくたびも (さとうかしこ)

* 「しゃらしゃら」という擬音語がいいですね。沢山の小ぶりな落葉がアスファルトのような硬い面を流れる景を思い浮かべました。──三空

(選)安達

ちくちくと柚子湯はしみる長湯して (さとうかしこ)

* 冬の肌荒れ。長湯すればするほどチクチクと滲みて…。でもせっかくの柚子湯だし、烏の行水では湯冷めするし、ま、このチクチク、もちょッと我慢するか。ああ、ニッポンジン!──安達潔

(特選)かしこ

初釜の釜の六音チンチンと (武内)

* 釜の六音という、特殊な音をまとめてチンチンとしてしまったのが面白い。確かにチンチンしか聞こえないけれど。──さとうかしこ

(選)三空

 松明のパチパチはぜる能始 (武内)

* 臨場感があって、生き生きとした句です。──三空

(選)カコ

凍った土押しのけて咲く福寿草 (武内)

*確かに押しのけてが相応しい。芽吹きから蕾、そしてパァと開く寒さの中で一番先の花だろ。──カコ

(特選)掃部

ツツピーツツ今日は良い日だシジュウカラ (きなこ)

*「ツツピーツツ」が明るく楽しい。「シジュウカラ」をカタカナ表記にして中七の仮名・漢字表記を挟んだところに工夫が効いている。視覚的表記のハッピーな一句。──掃部けいじ

(特選)安達

風紋のしろじろ黒し冬の海 (白浜和照)

*冬の浜辺の風情を的確に言い留めた中七。つくづく感心しました。句の奥から立ち上がってくる冬の海の存在感は、中七あってのこと。ふ~む。──安達潔

(選)武内

水仙の束さし出され香の満つる (文代)

*カップ咲 ラッパ 八重。花弁から香りがこぼれていて 私も大好きな花。──武内

(選)きなこ

柚子湯の香チャポンふわぁと手足のぶ (文代)

*柚子湯は湯船に入る前からお風呂場がホンワリ香りますね。「チャポンふわぁ」が秀逸!──きなこ

(選)半田

柴折戸のいつから開かぬ冬深し (文代)

*この風景は、栗島俳句の世界のようにも思える。いつの間にか失ってしまったという、開かなくなった世界。ところで、冬深しではない季語、何か他にないかしら。ちょっとだけ、なにか。──半田真理

(選)文代

初夢の香りの残るあなたかな (半田真理)

*どんな初夢?逢いたい人にあえたのかなあ。初夢の香りっていいな。包まれてあったかくて、ふんわりして幸せそうな句でした。──文代

(選)白浜

蝋燭のフフフルルルと二日かな (半田真理)

*仏壇の蝋燭なのでしょうか。フフフは少し大きな人の動きへの反応、ルルルは戸の開け閉め小さな空気の動きへの微かな揺れでしょうか。蝋燭の炎の素晴らしい描写です。片仮名嫌いが居そうですが、二日の事始め活動を蝋燭の炎の動きで象徴する名句では。──白浜和照

(選)白浜

手鞠唄に兵隊さんが隠れてた (掃部けいじ)

*日清日露戦争頃の一見戦争とは無関係な数え歌でしょうか。「兵隊さん」は結果勝ち戦だった兵隊の子供への呼称で、内容は教育でもあるのでしょう。同時に現在の世相は如何にとの問い掛けでもありそうです。

戦争が廊下の奥に立つてゐるのではと…──白浜和照

(選)カコ

篝火の夜を明けはらふ初鴉 (掃部けいじ)

* 夜を明けはらふ の中七に上手い!と頷いた。夜明けでは月並みだろ。──カコ

(選)掃部

 滝音に冬の夕映さだまりぬ (安達潔)

*凍らない冬の滝。「夕映え」が穏やか。──掃部けいじ

(選)安達

 日脚伸ぶ樹にこんもりと鴉の巣 (三空)

*冬ざれの樹。ふと見ればカラスの巣。あれはきっと去年のだねえ、もうじき春だけど今年も使うのかしら。身の回りに見つけた「日脚伸ぶ」の感じがよく出ていると思いました。──安達潔


総評(出句一覧を見ての感想)

* 賢治童話は多彩なオノマトペで知られていますが、庄野潤三さんの小説『ピアノの音』の中にも、

〈朝食の後、書斎の机の上を拭きながら、「英二伯父ちゃんの薔薇に芽がいっぱい出ているの。今朝気が付いた」と、妻が言う。(中略)

「小さい(赤)のがムジムジといっぱい出ているの。・・・葉じゃなくて、芽なの」

(そこで庄野氏は、見に出てから)

「あれは芽だな。ムジムジとでている」というと、妻はよろこぶ。〉

という場面があって、日常の中でのオノマトペのやり取りというと、この一節を思い出します。

 暮らしの中でその対象に、気付かないうちいつの間にか共感している、そんな積み重ねが無いとオノマトペはなかなか使いこなせないなあと、今回身につまされました。──安達潔


* せりせり、かりかり、ひこひこ、…誓子の擬音擬態語は群を抜いた的確さがあります。が、青筋立った作者色も濃く纏っております。

今回の、ちりりちりりは気配の擬音として、フフフルルルは蝋燭の炎の擬態として、水の会の様な小さな句会で出会えるとは。

句と作者の間、観察者としての間があり安心して驚く事が出来ます。──白浜和照


 *沢山のオノマトペをまとめて見ることができて、とてもよかったと思います。ユニークなものが多く非常に刺激を受けました。──三空


* 今回は、選びたい句がたくさんあって困りました。──きなこ


*オノマトペに挑戦でしたが、なかなかピタリというのが難しい。今回は、軒つららの句、きんかんぽんが無理なく使われたように思います。

また、面白いお題を楽しみにしています。──半田真理


*オノマトペって難しいですね。ケルルンクックとか、ぴったんてとんてったんぴんとか、しんしんしんしんゆき降り積もるとか、みよみよみよみよ みよはここよとか、ゆやーんゆよーんゆやゆよんとか、ぽちゃんぽちょんちゅぴじゃぶざぶんばしゃ いけしずこのおと、昔読んだ詩の音が頭の中に居座って自分の言葉が出てこない。感覚の摩滅?皆さんのいろんなオノマトペをなるほどと思い、やっぱり私には難しい。──文代


[ 選句選評の感想 ]

58の句、真理さんが「冬深し じゃなく、何か、」と指摘して下さいました。「冬の月」は?失った世界に沈んでいるより、いつか出て行けるかもしれない。柴折戸は開かないけど冬の月が静かに見守ってくれる。文代


[ 兼題出題 ]

☆掃部けいじ

◎兼題1.「初鴉](「寒鴉」も可) 普段は何かと邪悪視される鴉ですが、雀と同様日常の環境にいつもの奴。お正月には、季語「初鴉」の栄誉を得ております。とにかく身近な鳥です。是非、目視嘱目の句を。 

◎兼題2.「オノマトペ」を入れて一句。 一句の成功・失敗はすべて「オノマトペ」に懸ります。通常罷り通っているものは駄目。あくまでも独創的であり且つ、成る程と思わせる説得力を要します。本来、音を持たぬものにも与える事が出来ます。 思いっきり個性的な一句を。