出句一覧

1. 柱列の裏前世と萩の気配かな

2. 高千穂の神に感謝す収穫祭
3. 思うまま言えぬを言って酔芙蓉
4. スポとまた時間が抜けた秋なのか
5. 到来の葡萄マニキュアもその色に
6. 雨音を聴くと虫の音遠くなり
7. 茶聖(ちゃせい)人守破離(しゅはり)の教え利休や
8. いざよふ月あなたに言わないことがある
9. 曼珠沙華雄蕊とらへる天青し
10. 三日月の輝き三銃士のマント
11. 秋草を挿して小さな酒の壜
12. ひとむらの中の一花や曼珠沙華
13. 柿の葉のすこし色づき風匂う
14. 白ブドウ噛んで座れば地中海
15. 襖絵の鹿と葡萄の宝鏡寺
16. 金風や軸の牡丹は濃紫
17. 一葉づつ落ちて青空広くなり
18. 一本の無花果の木を饒舌な母と

選句選評

5点句

(特選)半田・かしこ・きなこ・カコ(選)白浜

秋草を挿して小さな酒の壜 三空

*この句の眼目は、小さな壜であるところ。挿した秋の草は、足元に揺れていたもの。儚げな草の様子。もしかしたら目立たないくらいの花をつけていたのかも。慎ましいながら、飾ったあたりが明るくなった。そんなことを楽しんでいる作者の人となりも想像する。しかもその壜は酒の壜。ちょっと親近感。秋草には透明な壜が似合うだろう。わたしなら、ボンベイサファイアの小壜でもいいなあ。──半田真理

*酒の壜の壜の字が良かった。瓶では、ねぇ。一升瓶になってしまう。秋草にはきちんとした花瓶ではなく、このような壜が似合う。──さとうかしこ

*さらりと素直な句だと思います。酒の壜であるのがいいですね。──きなこ

*墓参りであろうか。

心こもった手向の秋草が素敵。お酒がお好きな方かな。墓前で杯を交わされたに違いない。──カコ

*一合二合の地酒瓶は捨てるには惜しい物があります。ラベルを剥がした瓶にさて何を挿しているのでしょう、桔梗でしょうか。ささやかな豊かさ、男でしょうね。機会があれば一献傾けましょう。──白浜和照


3点句

(特選)武内(選)かしこ・カコ

一葉づつ落ちて青空広くなり きなこ

*一枚一枚と散り 向こうの山の稜線が見える。澄みきった青空の下 運動会や遠足。旅。心も晴れわたります。──武内

*まさにその通り。なるほどという思いと寂しさと。──さとうかしこ

* 確かに景が浮かび秋本番だ。──カコ

(選)半田・武内・かしこ

思うまま言えぬを言って酔芙蓉 きなこ

*普段なら言えないことも、言ってしまったよという句。それは酔った勢いなのかな。酔芙蓉は一日で散るので、言ってしまったことはすぐに忘れてくれという意味も込めているのか。──半田真理

*優雅に花びらを広げ ほんのり恥じらいピンクに染め 笑顔で包み込むような 好きな花です。──武内

*朝は純白。昨夜には濃いピンク。言ってしまえば白ではなくなるのか。面白い発想を頂いた。作者は現代仮名遣いですか?──さとうかしこ

(選)三空・白浜・きなこ

いざよふ月あなたに言わないことがある 半田真理

*作者の気持に十六夜の月がぴったり。──三空

* 先ず「いざよふ月」と言う季語を初めて見ました。例句も私の歳時記にはありません、珍しい機会なので例句捜しは後ほどに。いざよふ≒ためらう。十六夜は一年の最高とされる満月の次の日。果てた祭りの後、月の光量を運気と重ねると新月へと向かう衰退期。「言わないこと」強い意志が伝わりますがそれ自体がいざよふ原因かもとの自覚も。関係性転換点の不安感と矜持の詩でしょうか。──白浜和照

*なに?なに?ぜひ聞きたい(笑)──きなこ


2点句

(特選)白浜(選)カコ

一本の無花果の木を饒舌な母と 半田真理

*これは詩なのでしょうが俳句かどうかは選ぶ人の俳句観によります。「一本の無花果の木」は「一本の無花果」で足ります。しかしこの句は季語・切れを無くした造りでたゆとう感があり、その場合「の木」の冗長は意味以前に必要なのでしょう。象徴に満ちた句で、「ははのやうに月遣る春の未明」への返句とも感じられます。二つの句を併記してみます。

「ははのやうに月遣る春の未明」

「一本の無花果の木を饒舌な母と」

豊かな響き合いがあるのでは。「無花果の木」「饒舌な母」は創造の根幹に関わっている働きの様です。作者の句帳の最上位の句なのでは。ただ、栗島先生を知らない人の作とも考えられます。その場合、深読みを誘う天性の詩人なのでしょう。──白浜和照


1点句

(特選)三空

ひとむらの中の一花や曼珠沙華 さとうかしこ

*ズームアップするように曼珠沙華が艶やかに浮かび上がる。──三空

(選)半田

白ブドウ噛んで座れば地中海 白浜和照

*噛んでに実感がある。食べるのではなく、噛むということで、ブドウの果汁が口腔にいっぱいになった瞬間を表している。地中海には共感。ところで、座ればである、これはどう解釈すればいいのか。──半田真理

(選)武内

スポとまた時間が抜けた秋なのか  白浜和照

*ときめくことも少なくなり 生活にめりはりがない。実感します。──武内

(選)きなこ

雨音を聴くと虫の音遠くなり 三空

*集中すると他の音が遠くなる・・人間の耳のしくみの不思議。目も同じですね。──きなこ

(選)三空

襖絵の鹿と葡萄の宝鏡寺 武内

*爽やかな襖絵ですね。深まる秋を感じます。──三空

補遺

修正前の選評

これは詩なのでしょうが俳句かどうかは選ぶ人の俳句観によります。「一本の無花果の木」は「一本の無花果」で足ります。しかしこの句は季語・切れを無くした造りでたゆとう感があり、その場合「の木」の冗長は意味以前に必要なのでしょう。象徴に満ちた句で、「ははのやうに月遣る春の未明」への返句とも感じられます。「無花果の木」「饒舌な母」は創造の根幹に関わっている働きの様です。作者の句帳の最上位の句なのでは。ただ、栗島先生を知らない人の作とも考えられます。その場合、深読みを誘う天性の詩人なのでしょう。──白浜和照


茶聖(ちゃせい)人守破離(しゅはり)の教え利休や

作者コメント

*千利休生誕500年。茶の湯の継承につき詠みました。──武内

襖絵の鹿と葡萄の宝鏡寺 

作者コメント

*特別公開時に見学し 鮮やかな黄色の襖地に鹿と葡萄の絵に感動しました。──武内


総評

夏雲システムの練習句会でした。表示の変更も簡単でさすが俳人の作ったアプリだと思います。作者、野良古(のらふる)さんに感謝です。謝謝、多謝。投句時のルビや前書き等は次の挑戦です。

ブログは句会の記録だけになりました。

参加者ご希望の方は次号補遺に一週間程度載せるアドレス迄メールください。