『ハーツイーズ(三色すみれ)の妖精』

シシリー・メアリー・バーカー

(1930)

 

 

 

***2019年12月26日の日記***

 

 

当時のお店仲間で、

印象に残っている人の最後は。

 

繊細な彼女や、

甘えん坊の彼と同じ年の、

 

もう一人の男の子。

 

 

彼もまた平日の昼間に、

お店でアルバイトをしていました。

 

高校は、

中退したのだそうです。

 

 

その頃彼は、

通信制の高校で勉強していて、

 

大学受験の資格を取るつもりだ。と。

 

そんな風に話していました。

 

 

ものすごくクールな子で。

 

感情をまったく

見せないような子でした。

 

冷静。というよりかは、

世の中に冷めている。

 

・・・という感じでした真顔

 

 

あの頃は。

 

今に比べたらまだ少し

世の中に熱さが残っていたような

気がするのですが。

 

そんな中でその子はすごく、

冷えていました真顔

 

 

けれども彼はきっと。

 

頭の中ではいつも、

小難しいことをたくさん

考えたりしているのだろうな。と。

 

そんな感じがしていました。

 

 

その子はあの店長の攻撃も、

無感情でサラリとかわし。

 

かと言って、

反抗的な態度なわけでもなく。

 

店長のご機嫌を伺うわけでもなく。

 

 

自分に何かを

仕掛けてこようとする相手に。

 

逆に静かに、

「混乱」を投げ返す。

 

・・・みたいな。

 

 

そんな感じで、

店長をかわしていました。

 

 

そうやってクールな彼には、

いつも隙がなく。

 

おまけに仕事はちゃんと

出来たりしたので、

 

店長も、

彼には何も言うことが出来ず。

 

彼にいつも、

自分のペースを崩される店長は、

 

おそらくあの彼のことは相当、

苦手だったのではないのかな。

 

・・・なんて思います真顔

 

 

店長も店長で、

彼もまた頭の良い人でした。

 

いくら思うことがあっても、

その場の感情とか好き嫌いで

理不尽な八つ当たりをする。

 

・・・みたいな。

 

そんな

子供っぽいことはしませんでした。

 

そういう「愚かなこと」を

するのはおそらく。

 

店長のプライドが

許さなかったのでしょう。

 

店長は、

そういうところは自分自身に

厳しい人でしたから。

 

 

けれどもだからこそ。

 

すごくやりづらそうでしたにやり

 

 

あの二人は二人とも、

頭のきれる人達。

 

・・・という点では

同じでしたが。

 

店長は、

表面的にはクールを装いながらも、

 

実はその内側にものすごく

「ホット」なものを抱えているのが

透けて見えていました。

 

 

けれどもクールな彼からは。

 

そういう「熱」は、

一切感じませんでした。

 

 

今どきの若者。というか。

 

多分彼は、

 

「人」に対して、

あまり関心がないのだろう。と。

 

そんな風に見えました。

 

 

これもまた。

 

「私から見たらそう見えた」

 

・・・というだけですが。

 

 

*******

 

 

そんなクールな彼とも、

いろいろ話をしました。

 

話した。というよりかは、

 

私が彼の話を聞いていた。

 

・・・ということが、

ほとんどでしたがにやり

 

 

あの頃の私はまだまだ。

 

「人」に対して

とても興味があったので。

 

人の話を聞くこともまた、

楽しかったです。

 

 

でも、

今にして思うとそれは。

 

もしかすると。

 

「その人」に興味があるから。

 

・・・というよりは、

 

「人間観察」

 

・・・に近かったような

気がしないでもなく。

 

 

だから私は。

 

本当はすごく、

冷たい人間なんだな。と。

 

そんな風に思うことが

よくあります。

 

 

その人に、

感情的に寄り添うのではなく。

 

「人間というものを理解したい」

 

・・・という気持ちから、

話を聞いていたり

するのですからにやり

 

 

私も。

 

人の「情」の物語には、

あまり共感が出来ないところが

ありました。

 

「想像」

 

・・・なら、

できましたが。

 

 

けれどもそんな私以上に、

 

あのクールな彼は、

「情」の世界からはだいぶ、

かけ離れたところにいた子

だったように感じます。

 

 

*******

 

 

彼がなぜ

高校を中退したのか。

 

その理由はなんとなく、

想像することが出来ました。

 

 

多分。

 

馬鹿馬鹿しく感じて

いたのだろうと思います。

 

この、

人間の世界を。

 

 

そんな彼の話を。

 

私は否定も肯定もせず、

ただ聞いていましたが。

 

心の深いところでは、

共感していました。

 

けれども私のその気持ちを、

彼に伝えることはしませんでした。

 

 

もしここで。

 

私が彼の思いに共感したら。

 

彼は自分の思いにますます

自信を持ってしまって。

 

でもそうしたら。

 

彼はこの先。

 

ますます「苦悩」が

増えていくだろう。と。

 

そう思ったからです。

 

 

私自身も。

 

彼の荷物を一緒に背負う。

 

・・・とまでは、

思っていませんでしたし真顔

 

 

「人間って本当に、

愚かな生き物だ」

 

・・・と。

 

そう思うこと、

そう思う時期。

 

・・・というのは、

誰にでもあると思います。

 

 

でも。

 

たとえそう思っていたとしても。

 

それでも私たちはここで、

 

人間としてなんとかして

生きていかなくては

いけないのですし。

 

 

たくさんの経験をして、

もがいたり溺れたりしているうちに

いつか。

 

「でもやっぱり、

自分も人間なんだ」

 

・・・と。

 

しみじみ思う日が

くるのでしょう。

 

 

そうやって。

 

人間の弱さを愛しく思える日も

来るかもしれないのに。

 

そういう可能性を、

私の一言で潰すことになったら、

責任重大だな。と。

 

そんな風に思っていました。

 

 

だから、大人として。

 

ここで彼に共感してあげることは、

してはいけないんだ。と。

 

そんな風に思っていたのです。

 

 

そうこうするうちに、

彼は大学を受験して。

 

そのお店を辞めていきました。

 

 

*******

 

 

彼の在り方は、

 

当時の私にはちょっと、

かっこよく見えました。

 

 

常識に囚われず、

自分でちゃんと考えて、

 

自分で自分の道を

歩いているように見えたからです。

 

 

向かい風はとても、

強そうでしたけれども真顔

 

 

私も高校生の時は、

彼のように冷めていて。

 

学校に行くのが

馬鹿馬鹿しくて。

 

卒業式の日を、

指折り数えて待っていましたが。

 

 

でも実際は、

 

本当に学校を辞める勇気は

ありませんでしたし。

 

先のこと。

 

将来のことを考えると。

 

「普通の道」から外れることは、

恐かったです。

 

 

だから、

不満を持ちつつも我慢して。

 

普通に高校を卒業し、

 

普通にその先の学校に進み。

 

普通に就職し、普通に結婚し。

 

・・・と。

 

無難な人生を送ってきましたが。

 

 

でも、まぁ。

 

そういうことを後悔している

わけでもなくおやすみ

 

 

今はただ。

 

それはそれ。と。

 

眺めているだけに過ぎません。

 

 

そしてあの頃の私には、

あのクールな彼の生き方が、

 

少しかっこよく見えたり

しましたが。

 

今はそれもまた、

 

それはそれ。

 

・・・として。

 

ただ眺めているだけになりました。

 

 

*******

 

 

古い日記を読み返してみると、

あのお店にいたのは、

 

3年間くらいだったようです。

 

 

「こっそりヒーラー修行」

 

 

・・・という目的を持ちながら。

 

 

そしてこのころは。

 

パートに行っていただけでなく。

 

それと同時進行で、

他にもいろいろなことを、

 

経験していたりしました。

 

 

つづく

 

 

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