『Macdonald of Glenco, from The Clans 

of the Scottish Highlands』

(スコットランド・ハイランドのクラン

グレンコのマクドナルド)

ロバート・ロナルド・マシアン

(1845)

 

 

 

【スコットランドの旅人が歌う悪魔】

 

 

スコットランドの旅する歌い手。

ジョンおじさんの歌を再び。

 

 

John MacDonald 『The Elfin Knight (Child 2)』(1969)

 

 

For there once was a fair maid went a-walk,
Blaw, blaw, blaw ye winds blaw;
Ay, between yon salt sea and yon sea strand,
And the dreary wind's blawed my plaidie awa'.

For as she met a devil by the way,
Blaw, blaw, blaw ye winds blaw;
And to her he did give a task,
And the dreary winds did blaw her plaidie awa'.

For you'll make to me a holland shirt (etc.)
Without either seam or needle-work (etc.)

For you'll wash it up in yon draw-well,
Where there never was water or a dew-drop fell.

For it's when I do that task for you,
Surely you'll do one for me.

For you'll fence to me three acres of land,
Ay, between yon salt sea and yon sea strand.

For you'll plough it up wi' a double ram's horn,
Sow it o'er wi' one peck o' corn.

For you'll harrow it o'er wi' a tree o' black thorn,
And ye'll reap it up wi' one blink o' sun.

For you'll shear it down wi' a pea-hen feather,
And you'll stook it up wi' a stang o' a nether, 

(sting of an adder)

For you'll yoke two sparrows in a match-box,
And you'll cart it home to my own farmyard.

For it's when you do that task for me,
You come back and you'll get your sark,
And the dreary winds'll blaw my plaidie awa'.

 

 

**

 

 

a fair maid
・・・という言葉が出てきますが。

 

もしや。

 

『Scarborough Fair』の

「Fair」のもとは。

 

これだったりする?びっくり

 

 

この言葉は、

「麗しき娘」

・・・とか、

「最愛の娘」

 

・・・とも訳せますが。

 

 

ここではきっと。

「麗しの乙女」

・・・と訳すのが、

一番ぴったりくるのだろうと

思います。

 

 

maid」には、
「処女」という意味もあり。

 

この歌の場合、

そこに一番重要な意味があると

思うからです。

 

 

以前も書きましたが。

 

plaidie」(プレイド)は、

「貞節」のメタファーでしたし。

 

それが風で吹き飛ばされる。

 

・・・ということは、

つまりは。

 

「理性が吹き飛ぶ」

 

・・・ということと、

ほぼほぼ同じ意味であり。

 

 

なので。

 

the dreary wind's blawed my plaidie awa

 

・・・というリフレインは、

直訳すると。

 

「陰鬱な風が私のプレイドを

吹き飛ばした」

 

・・・になりますが。

 

 

それはこの「麗しの乙女」が、

今にも「処女」を失いそうに

なっている。

 

・・・ということを、

意味しているのでしょう。

 

 

**


For as she met a devil by the way

「その乙女は悪魔と会ったので」

・・・とあります。

 

 

ある時、

麗しの乙女がむこうの海と

海岸の間を歩いていると、

悪魔に出会いました。

 

 

・・・みたいな話になっています。

 

 

動画の説明欄によれば、

このジョンおじさん版のように、

 

「悪魔」

 

・・・という言葉が

ハッキリと使われているものは

めずらしいのだそうです。

 

 

ジョンおじさんのような

「旅する歌い手」の人達。

 

かつての

吟遊詩人のような人達が、

いつしか、

 

このバラッドに登場する

「妖精の騎士」と「悪魔」を

関連付けていったようで。

 

 

そういうところから。

 

『スカボロー・フェア』の

歌詞の解釈についても、

 

主人公に語りかけてくる相手は、

実は悪魔で。

 

下手に返答すると

魂を持っていかれる~ガーン

・・・とする説が、

生まれたのかもしれませんねおやすみ

 

 

**


ただ、個人的には。

 

なんとなく。

 

その悪魔。って。

もとは、

「その乙女を狙う男」

・・・のメタファー。

だったりしなかったのかな?うーん

 

・・・なんて

思ったりもしますおやすみ


日本でも。

「男は狼~」

・・・とか言っていましたしニコニコ

 

 

日本神話を読んでいても

思いますし。

 

大昔の風習や

土着の信仰を見ていても

思ったことですが。

 

昔の人って、

なにかと本能に素直で。

 

なんでも、性的なものと

結びつけて考えていたように

見えることが多くて。

 

 

それは、日本に限らず。

 

世界中のどこでも

そうです。

 

 

そして昔は。

 

純潔を失うと、

女性はお嫁にいけない。

 

・・・とされている割には、

男性は傍若無人でしたので。

 

 

だからこうして。

 

バラッドを通して、

 

娘たちに教訓。というか、

警告を伝える。

 

・・・みたいなことも。

 

このバラッドには込められて

いたのかもしれないなぁ。

とも思いますおやすみ

 

 

「妖精」に関する伝説や伝承は、

あの地には昔から。

 

それこそ、ケルト時代から

たくさんあったでしょうから。

 

そういった「概念」が、

意識の根底に根付いていた

民族の中では。

 

「妖精の騎士」を

「喩え話」に使う。

 

・・・ということも、

解るような気がするのですおやすみ

 

 

*******

 

 

ジョンおじさんが歌っている

このヴァージョンを

もとにしていると思われる、

 

現代版の、

 

『エルフィン・ナイト』

 

・・・もありましたにっこり

 

 

ノーマ・ウォータソンは、

マーティン・カーシーの

奥さんで。

 

イライザ・カーシーは

お二人の娘さんです。

 

 

Norma Waterson & Eliza Carthy with the Gift Band

『The Elfin Knight』(2018)

 

 

*******

 

 

もうひとつ。

 

スコットランドのパースシャー

ブレアゴーリー

アンドリューおじさんの歌う

『妖精の騎士』。

 

 

Andrew Stewart

『The Elfin Knight (Child 2)』 (Fragment) 

(1956)

 

 

You'll dip it in thon deep draw well 

Blow, blow, blow the wynd blow 

And for your life let one drop fall 

And the weary wind blows ma plaidie awa'. 

 

You'll hang it on thon green thorn bush 

Blow, blow, blow the wynd blow 

Where there never was a bush 

since Adam was a boy 

And the weary wind blows ma plaidie awa 

 

Since you gave those three tasks to me 

Blow, blow, blow the wynd blow 

Let me give three tasks to you, 

And the weary wind blew ma plaidie awa'. 

 

You'll bring to me a green-toppit thrush 

Blow, blow, blow the wynd blow 

...

...

 

 

**

 

 

この歌のリフレインは。

 

Blow, blow, blow the wynd blow

 

 

これもまた、

スコットランドの、

 

「風が吹く~」

 

・・・ですねにっこり

 

 

上の歌詞には

載っていないのですが。

 

アンドリューおじさんは

歌の途中で。

 

devil

 

・・・という言葉を

口にしています。

 

 

おじさんはこの歌を、

お母さんから教わったのだ

そうですが。

 

所々の歌詞を

忘れてしまっているようです。

 

 

また、

この動画の説明欄にも、

 

「悪魔」が含まれているのは、

スコットランド旅人版の

『妖精の騎士』に共通の特徴。

 

・・・と書かれていましたが。

 

ただ、

ほとんどのテキストは

断片的すぎて、

 

この点を明確にすることが

できない。

 

・・・とも言っています。

 

 

アンドリューおじさんは、

これ以上の歌詞は

思い出せなかったようですが。

 

この歌の最初に、

 

羊飼いに変装した悪魔が

丘の上にいる。

 

・・・というものがあった。

 

・・・ということは、

なんとなく覚えている

そうです。

 

 

また、この歌の

最後のスタンザには、

 

「火の玉になって飛んでいった」

悪魔を倒すためには、

 

どのように聖書を

引用すればいいのか。

 

・・・というような内容が

含まれていた。と。

 

おじさんは、

話していたそうです。

 

 

ハイランド地方にも。

 

古くからカトリックが

根づいていたようですし。

 

そうやって

バラッドの中に。

 

つまり、

「民衆の意識」の中に、

 

「聖書の概念」が

浸透していき。

 

その延長線上に。

 

「妖精の騎士」=「悪魔」

 

・・・なんていう発想が。

 

いつの間にか

生まれていったのかも

しれませんね。

 

 

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【スカボロー・フェア聴き比べ】

 

 

Mediæval Bæbes

英国のグループ。

中世の音楽。

 

・・・っぽいものを、
やってる人達のようです。


The Mediaeval Baebes 『Scarborough Fair』(2005)

 

 

Amy Nuttall


英国の歌手で、
女優さんです。

路線がちょっと。
サラ・ブライトマンと

かぶる気がしました。

 

 

Amy Nuttall 『Scarborough Fair』(2005)

 

 

 

The Grassmasters


よく分かりませんが。

 

アメリカのナッシュビルの

ミュージシャンたちの

プロジェクトかなにかの

ようです。

 

よく参加している

ミュージシャンは。

 

Charlie Chadwick - Bass
Bill Hullett - Guitar
Vic Jordan - Banjo
Andy Lewis - Fiddle
Fred Newell - Guitar (Acoustic), Mandolin
David Spicher -Bass, Guitar (Bass)
Darrin Vincent - Vocals
Tommy White - Dobro
Andrea Zonn - Fiddle, Vocals

 

 

この『スカボロー・フェア』も

好きですにっこり

 

 

The Grassmasters 『Scarborough Fair』(2007)