『アダムとイヴの誘惑』

木版画 フランス

(1500年頃)

 

 

 

『蛇の誘惑』

 

 

1 主なる神が造られた

野の生き物のうちで、

 

もっとも賢いのは

蛇であった。

 

蛇は女に言った。

 

「園のどの木からも

食べてはいけない、

などと神は言われたのか。」

 

 

2 女は蛇に答えた。

 

「わたしたちは園の木の果実を

食べてもよいのです。

 

 

3 でも、園の中央に生えている

木の果実だけは、

 

食べてはいけない、

触れてもいけない、

 

死んではいけないから、

と神様はおっしゃいました。」

 

 

4 蛇は女に言った。

 

「決して死ぬことはない。

 

 

5 それを食べると、

目が開け、神のように

善悪を知るものとなることを

神はご存じなのだ。」

 

 

6 女が見ると、

その木はいかにもおいしそうで、

目を引き付け、

賢くなるように唆していた。

 

女は実を取って食べ、

一緒にいた男にも渡したので、

彼も食べた。

 

 

7 二人の目は開け、

自分たちが裸であることを知り、

 

二人はいちじくの葉を

つづり合わせ、

腰を覆うものとした。

 

 

8その日、風の吹くころ、

主なる神が園の中を

歩く音が聞こえてきた。

 

アダムと女が、

主なる神の顔を避けて、

園の木の間に隠れると、

 

 

9 主なる神は

アダムを呼ばれた。

 

「どこにいるのか。」

 

 

10 彼は答えた。

 

「あなたの足音が

園の中に聞こえたので、

恐ろしくなり、隠れております。

 

私は裸ですから。」

 

 

11 神は言われた。

 

「お前が裸であることを

誰が告げたのか。

 

取って食べるなと命じた

木から食べたのか。」

 

 

12 アダムは答えた。

 

「あなたがわたしと共に

いるようにしてくださった女が、

 

木から取って与えたので、

食べました。」

 

 

13 主なる神は女に向かって

言われた。

 

「何ということをしたのか。」

 

女は答えた。

 

「蛇がだましたので、

食べてしまいました。」

 

 

14 主なる神は、

蛇に向かって言われた。

 

「このようなことをしたお前は

あらゆる家畜、あらゆる

野の獣の中で

呪われるものとなった。

 

お前は、生涯這いまわり、

塵を食らう。

 

 

15 お前と女、

お前の子孫と女の子孫の間に

わたしは敵意を置く。

 

彼はお前の頭を砕き

お前は彼のかかとを砕く。」

 

 

16 神は女に向かって

言われた。

 

「お前のはらみの苦しみを

大きなものにする。

 

お前は、苦しんで

子を産む。

 

お前は男を求め

彼はお前を支配する。」

 

 

17 神はアダムに向かって

言われた。

 

「お前は女の声に従い

取って食べるなと命じた

木から食べた。

 

お前のゆえに、

土は呪われるものとなった。

 

お前は生涯

食べ物を得ようと苦しむ。

 

 

18 お前に対して

土は茨とあざみを

生えいでさせる。

 

野の草を食べようとする

お前に。

 

 

19 お前は顔に汗を流して

パンを得る

 

土に返るときまで。

 

お前がそこから取られた土に。

 

塵にすぎないお前は

塵に返る。」

 

 

20 アダムは女を

エバ(命)と名付けた。

 

彼女がすべて命あるものの

母となったからである。

 

 

21 主なる神は、

アダムと女に皮の衣を作って

着せられた。

 

 

22 主なる神は言われた。

 

「人は我々の一人のように、

善悪を知る者となった。

 

今は、手を伸ばして

命の木からも取って食べ、

 

永遠に生きる者となる

おそれがある。」

 

 

23 主なる神は、

彼をエデンの園から追い出し、

 

彼に、

自分がそこから取られた土を

耕させることにされた。

 

 

24 こうしてアダムを追放し、

命の木に至る道を守るために、

 

エデンの園の東にケルビムと、

きらめく剣の炎を置かれた。

 

 

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ミッション・スクール時代の

「苦味」の経験のせいか。

 

私は未だに。

 

こういうものを読むと

自分の中に

 

「イラッむかつき

 

・・・という反応が

起こるようですショック

 

 

まぁ。

 

それもまた

一瞬のことですが。

 

 

経験によって作られた

反応癖。というものは。

 

やっぱり、

とても根強いもの

なのですねにやり

 

 

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本物の蛇に出くわしたら。

 

私は多分、

 

一目散に逃げると

思いますがニコニコ

 

 

でもなんとなく。

 

自分は「蛇」には、

どこか縁があるような。

 

そんな感じが

しているのです。

 

 

諏訪の

ミシャグジさまとかおやすみ

 

 

以前、

吉野裕子さんの

「蛇・三部作」を

読みましたが。

 

 

そこにはたくさんの、

「蛇」に関する

面白いお話があり。

 

 

古代の日本には、

 

確実に蛇信仰が

あったのだな。

 

・・・ということを、

確信させられました。

 

 

日本だけでなく

世界各地で、

 

蛇はもともとは、

 

神として

崇められていました。

 

そして蛇は。

 

象徴的にも様々な意味を

持っています。

 

 

それがなぜ。

 

聖書では。

 

蛇は、

こんな役を演じさせられる

羽目になってしまったの

でしょうね?うーん

 

 

カバラでは。

 

こういうところでも

聖書を「深読み」します。

 

 

カバラの世界では、

 

聖書には、

伝統的に四通りの読み方が

あると言われている。

 

・・・と以前も

書きましたが。

 

 

この物語を、

「額面通り」に。

 

つまり、

植物意識で読んだ場合は。

 

蛇はただの「悪者」に

なるのでしょう。

 

 

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ハレヴィさんの本に、

面白いお話がありましたので。

 

抜粋しておきます。

 

 

(<神>の)最初の戒めは、

 

<知識の木>の実

(つまり<知恵>の実)を

食べるなかれ、

 

であった。

 

この戒めから、

アダムとイヴの人間夫婦は

カルマについて

学ぶことになった。

 

 

カバラではこのカルマを

 

「尺には尺を」

 

(或る行為には

それに見合う行為を)

 

と表現している。

 

 

<聖なるお方>は、

アダムとイヴは何をし、

 

ルシファーと天使は

どう反応するか、

 

それを完全に

ご存じであった。

 

 

アダムもイヴも、

また蛇も、

 

誰のせいにもできず、

自分を戒めるしかなかった。

 

 

ヘブライ語でHet、

つまりそれに対する

英語はSin(罪)であるが、

 

それは

(本当の意味は罪ではなく)

 

「的を外す」

 

の意である。

 

 

それでその語、Hetは、

熱狂的な聖職者たちが

主張するほどに

 

呪いの意味合いを

持っているわけではない。

 

 

~『図説カバラ世界入門』P.40~P.41より~

 

 

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こうやって、

あるレベルで読むと。

 

このお話は、

 

「カルマの法則」

 

・・・についての説明。

 

・・・になりますが。

 

 

更に違うレベルで読むと。

 

 

蛇がイヴを

唆すことも。

 

アダムとイヴが

掟を破って楽園を

追放されることも。

 

「神」にとっては

すべてが計画通りのことで。

 

 

だからそれは、

 

・・・というか

それ「も」

 

完璧な出来事だった。

 

・・・となりますね。

 

 

その深度の中では、

 

蛇はそこで。

 

大事な役割を

演じたもの。

 

・・・となりますから。

 

 

そこには、

 

「悪役」はあっても、

「悪者」というのは、

 

いなくなるのですおやすみ