公立中学校で教員をしています。

 

4月、いよいよ新たな学年が始まります。

以前に僕が担任をしている時、4月の始めには新しいクラスで自己紹介タイムをおこなっていました。

(いろいろな学校のクラスでもされていると思います。)

 

次のような流れです。

①始業式の翌日、担任からの自己紹介を受けて生徒それぞれに自己紹介シートを書かせる。

②(書ききれない生徒は宿題にする。)

③その翌日に、2コマを使って自己紹介タイムをおこなう。

 

違う小学校やクラスから集まってきた新しいクラスでの自己紹介です。

緊張する生徒もたくさんいますが、大切なクラスの始まりです。

 

以前、実際に自己紹介タイムをおこなった時の様子を学級通信に書いて、さらに翌日配布していました。

その学級通信を、以下、紹介します。

 

踏み出した大きな一歩
4月11日(木)、4限5限に自己紹介タイムを行いました。

それぞれみんながそれぞれの場所から集まってきた3年5組。

自己紹介をすることで、少しでも分かりあいたいという思いで行いました。

ルールは、以下の3点。
・自己紹介シートは使わなくてもよい。自分の口で言いたいことを伝える
・時間は30~60秒
・発表順は、立候補制

 

「教室の前に立ち、しっかり聞いてくれる仲間の前で、がんばって発表することは、とてもプレッシャーがかかって緊張するもの。でも、単純に決められた順番に決められた内容を言うだけでは、成長はない。その緊張感を乗り越えることは、大人への成長の大切な一歩だ。」というのが、僕の考え方です。
しっかり、みんな緊張していました。

1番目の立候補もなかなか出てきませんでした。

その状況を乗り越えるからこそ、中学3年生として成長できるものです。

でも、やっぱりさすが3年5組。

みんなで協力して、参加者32名がしっかり自己紹介できました(○○・○○・○○が欠席で参加できなかったのは、ホントに残念…)。
 

誰も立候補がない空白の8分間の後、出だしを飾ったのは、○○・○○・○○・○○・○○グループ!

仲良くジャンケンでスタートを飾ってくれました。

こうやって、誰かが先陣を切らないと何も始まりません。

スタートを切ることで、周りの仲間はホッとして、後が続くものです。えらい!
 

その次に続いた○○がまたえらい!!

みんなが感じる押しつぶされそうなプレッシャーの中、大きな一歩を踏み出しました。
 

それにしても3年5組のみんなはえらい!
 

その後も、立候補者が出ないような時でも、誰かが大きな一歩を踏み出して立候補をした。

特に、○○、○○、○○、○○、…。

よくがんばった!

そして、他のみんなもよくがんばった!!

そして何より、雰囲気がずっとあったかかった。

誰も立候補しない空白の時間があっても、誰も責めない。

自己紹介を聞いて、ほんわかする笑いが起こる。

『中傷する笑い』、『自分たちだけがよかったら良いグループだけの笑い』ではなかった。

ほんわかした。

これが、クラスの団結力を生みます。

やっぱり、今後に期待が持てました。

 

 

 

1番のポイントは、立候補制です。

これは、僕が担任をしている間、ずっと続けていました。

理由は、生徒が大きな成長の一歩を踏み出すためです。

内容がどうであれ、みんなの前に立って何も見ないで話す事には、とてつもない勇気がいります。

それを、全員達成することは、クラスの団結を作る第一歩としてふさわしいと思っています。

 

「立候補が出ない限り、ずっと待ち続ける」旨を、事前に伝えておきます。

そして、立候補が出なくても沈黙の中、ずっと待ち続けます。

下手に、立候補を煽るような言葉がけはしません。

(この沈黙が、好きです。生徒が心の中で葛藤をしながら大きな一歩を踏み出そうとしている瞬間だからです。)

 

立候補制だと言い切って、かたくなにこだわり続けるのには、次のような理由もあります。

○今年度の担任は、言った事を絶対にやりきる担任だと思わせるため

○新年度のはじめ、立候補をしようとする誠実な生徒は必ずいるから、その流れで絶対に全員がやりきれるから

(ポイントは、2コマ使うことです。1コマ目でどれだけ立候補が出なくても待ち続ける担任の姿を見て、生徒は焦り出します。そして、休み時間の間に誰が始めに立候補するかをコソコソと相談し始めます。それも世渡りの大切な手段だと僕は思っています。)

 

また、上記の学級通信では生徒の名前をたくさん掲載して個別に承認しています。

最近では、生徒の名前を掲載できない学校もたくさんあるかもしれません。

でも、1人1人緊張しながらも立候補をしているので、名前を挙げて褒める効果は絶大です。

 

さらに、学級通信の後半部分では、生徒の模範になるような行動(ほんわかする笑い)を掲載して褒めています。

中学生は、中傷につながる笑いを作りやすく、それはイジメにもつながりかねません。

どんな笑いが正しい行為なのかを、暗に示している内容の文章です。

こんな風に正しい行動を伝えていく事が、イジメや生徒指導事象の未然防止につながっていきます。

「イジメはダメだよ」とか、「中傷につながる笑いはやめよう」というような注意喚起より、よっぽど効果があります。

 

何はともあれ、自己紹介タイムで沈黙の時間があったとしても、新しいクラスのみんなで乗り越えようとしている大切な大切な時間に思えて、僕自身も沈黙を嫌がらなくなりました。

 

以上です。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。