※例によって主観上等+ネタバレを完全に含んでいますので、音声を先に聴いてから、お楽しみくださいね。

さて、超長文感想、本日はこの方です。


『答えをうる術は、それしかないのだから』

シリア・アス・ノーマ役 : 日下部朱里さん



事実上今回のメイン張ってると言っても過言ではないシリア嬢。今回は展開上ちょっとツラい立ち位置でしたね。
日下部さんの澄んだお声で沈みがちに語られると、問答無用で胸がきゅうぅぅんと締め付けられるのですが……これが恋?(違います)

前回の『はじまりの言伝』でのシリア嬢が、とても明るく朗らかで、そしてなんと言ってもリア充爆発してた(実質らぶらぶ新婚夫婦だった←)のも、今回の『さだましもの〜』とのギャップを際立たせていましたよね。
そんな状況で日下部さんがどのようにシリアを演じてくださるのか……音源が届くのをとても心待ちにしておりました。

で。いざ届いた音源を聞いてみると……

ガチ切ねえ!(想像以上)

シナリオでそう仕向けたのは繭玉なんですけど、想像以上に切なさ乱れ打ち←
どうしよう、これはアーツのみならずシリア嬢ファンクラブの面々に鉄拳制裁喰らうレベルだヤバい((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
しかしながら、心の片隅で『今にも泣き出しそうな美女って眺めてたくね?』と不謹慎な萌えが首をもたげたもので……結局そのまま突っ走ってしまいました(非道)フクロ確定。

前半は完全にシリアとカガンのターンです。冒頭に同僚のシリュエスタ信徒(CV.藤崎絵留さん)との会話を差し込んで、奉仕活動している様子を演出しましたけど、ここはまだ前回同様に明るくてカワイイ!
『箒を手にテキパキお掃除して回るの図』が容易に頭に浮かんできました。そのぐらい身近にありそうで、キラキラ天使かよキラキラと思うほどに優しくほがらかです。日下部さんのお声の持つ清らかさ、そしてハキハキとしたさまは、こういった日常の風景の中でなおきらきら輝きを増しますね!
は〜癒やし〜和み〜照れラブラブなどと目を細めていたのもつかの間。同僚にあとを託された直後の深いため息。このため息ひとつで内に抱いている苦悩というか悲哀の深さが感じられて、「どうしたの!彼氏となんかあったの?!おばちゃんに話してごらんなさいッ」っておせっかい焼きたくなっちゃいます。バリエーションがまた豊富でね……はぁ、とかふ、とか、それだけでご飯何杯でもいける(キモいです)

そこへカガン登場。でも悩める乙女にはその声がしばらく届かなくて。やっと気づいたときの「えっ、はいッ?!」ってちょっとうわずった反応にサムズアップ(*´ω`*)
「ああカガン、来ていたの」とか、おっさん認知されてなくてガクーするとこだけど、「いやだ、そんなに? ごめんなさい」が本気で恥ずかしそうで申し訳なさそうで超絶カワイイから許せる(笑)
そしてここからがとても切ない。不安や戸惑いがまるっきり声色に出ています。そりゃそうだよねぇ、上司の突然の思いつきで彼氏が急に遠隔地に出張とかさ(状況としてはそう見える)。
シリアは両親を遠い戦地(カマラン)で亡くしているのでマジ気が気でないんですよ。大切に思う人に万が一何かあったらどうしようって。でもなんとか自分を奮い立たせようと、不安を押し込めようと努めてるのが声からもわかりますよね。短いセリフの中にも、そういう背景をしっかり反映させてくる、日下部さんの演技が繊細そのものでふおぉぉぉってなりますわフオォォォォえーん
それが証拠に、「なんでもないわ」って気持ちを切り替えようと半ば無理矢理に明るさを取り戻してるのとか、自分では隠しきってるつもりだろうけど、無理してるのがバレるレベルで、ホント健気過ぎて泣けてくるえーんすごい表現力だ……感動。

そしてカガンからザイガンの手紙を見せられ、
「渦中に飛び込むほかあるまい」と促す彼に再びの困惑が生じますが、真実を知る術はそれしかないと、おそらくは自分でもわかっているはずで。
「ワシが必ずお前たちを守る」と親代わりの誠意と決意を重ねて伝えられて、踏み込むための少しの勇気を得る。背中を押してもらって、「ありかとう」と顔を上げる。
「なら、いいな?」との最後の問いかけに「はい」と返すその声には、ここまでに至るつぶさな心の動きと共に、深い愛に包まれて、つかの間ながら自分を取り戻せた様子がうかがえます。

前半はカガンとの掛け合いに終始しているのですが、亡くなった実父(クレード)の代わりに父親役を務めてくれている彼ですから、心なしかシリアの声にも安心感・安定感がありますよね。
無意識かもしれませんが、この相手なら寄りかかれる、甘えてもいいのだといった親愛の情が、日下部さんのお声から読み取れます。
同僚との会話での声色と直接聴き比べると、割と違いが分かると思うんですが、ストーリーの流れとして聞いていると、切り替わりがナチュラルすぎて気づかないという。
音声作品や映像では、あえてこの違いを際立たせて(ex.意中の相手に媚びを売る、とか)相手に対する想いの差を知覚させる手法もあると思うんですが……そういう観点から見ると、日下部さんのこの演技は、とても現実的だと思うんですよね。
誰しも親しい相手には気を許すものですし、少なからず声にも緩みが反映されるわけですが、現実の生活においてその違いをはっきりと意識することはほぼないと思います。無意識と同レベルでのリアルさというか、ごくごく自然にそれを取り込んでくる日下部さんの再現力に感心します。


そして後編。
シリアの登場は比較的後半で、遠慮がちにアーツの前に立って以降、仲間が揃ってからはほとんど発言がありません。
その代わりに最後、もう一人の親代わりでもあるザイガンとの会話の中で、その複雑な心境が語られるわけですが……

マジ切ねぇ!(またか)

「おじさまは、なぜ私をここに呼んだのですか」
和気藹々とした仲間たちの様子を尻目に、ため息を皮切りに続くこのセリフですが、一度は前を向いた後で再び湧き上がる困惑が如実に声に現れていますね。少し震えているように聞こえるのは私だけ……?
そして「私はしがないシリュエスタ信徒です」と自虐的な発言が飛び出しますが、この時の声色が、珍しく取り乱して激高しているように聞こえません?
シリアはどちらかといえば大人しい穏やかな性格の娘ですから、これは非常に珍しいことです。受任した内容からして、戦闘や探査の技術は必至、集められた仲間たちは皆それぞれに技能を修得済みで、すぐにでも活動できる状況。明らかに実戦向きではない自分との能力差を、まざまざと見せつけられているようなものですから、そりゃあ呼びつけたザイガンを責めたくもなりますよね。実際ザイガンに向けたセリフからは、非難や再考を促す様子も覗き見えます。普段は現れないシリアの劣等感や負に向かう感情、きっと自分は同行者に相応しくない、アーツの役には立てまいとの絶望を、日下部さんの声がすべて暴き出して、その上さらに焦燥感や切迫感を上乗せしてくれています。
この部分は特に指示を出していたわけではなかったのですが、日下部さんがこのセリフに目を通し、この方針を選び演技したことは、本当にグッジョブグッお見事と言うほかないです。
そんなシリアに向かって、ザイガンは「それは無用な卑下だ」「お前にはお前にしかできないことがある」と諭しますが、シリアはそれにも非常に懐疑的です。これも低い自己評価の裏返し、弱さゆえ。本来の自分のありようが揺らぐ程に、身のうちの不安が高じているということが声からありありとわかりますよね。

そんな揺れ幅のある中で、やりとりの最後にシリアが放つセリフ。それが↑であり、私の推し台詞です。

結局、答えは自分で見つけるしかない。そのために歩まねばならない道を、避けて通ることはどうやってもできない。
「わからない」と苦渋に満ちていながら、それでもなんとか希望を見出そうともがいている、淡い光に手を伸ばすような儚いつぶやきが素晴らしいです。


シリーズのメインヒロインといえば、常に美しいはつらつとしたオーラに包まれていたいものだと思うのですが、今回それに反して弱さを露呈してくださった日下部さんには頭が上がりません。
心に根強く残る不安と共に、場面ごとに浮いたり沈んだりを繰り返す。リアルな乙女の機微を演じきってくださり、本当に感謝感謝です。


そしてエンディング。日下部さんに最後のシメも担っていただきました。こちらはいつものシリアですね。ああかわいい。

揺れる心の行き着く先。
それを描く機会が訪れたその時にこそ、きっと彼女の笑顔と共に、穏やかで晴れやかな声を再び聞けるんじゃないかと、今後への期待が募るものです。


……と、毎度のことながら長々敷く語ってしまいました。

日下部様、お忙しい中収録にご協力いただきありがとうございました!
今後とも、かわいいみんなの聖女様をよろしくお願いします!
そしてまた、ひたすらラブラブリア充な掛け合いの収録を依頼したいです。

砂糖なアーシリを見たいんだ私はッ!(なら書けよ←)