精神科医であり作家でもある、香山リカさんの本。2016年の本で、香山さんがこの本を書かれたときは55歳で、子どもはいない。
 
男女雇用機会均等法が施行された年に社会人になった香山さんは、まさに" 仕事か出産か "の二択を迫られた時代だったよう。
 
 
この本では、子どもを産まない女性を「ノンママ」とし、その理由や背景をご自身の心情も交えながら紐解いている。
 
 
まず「生涯子どもゼロ」の女性は25%以上、約3割にも上るという事実を踏まえて。
予想以上の数でした!
※2010厚労省による「出生に関する統計」
 
 
 
「子どもを産まない・産めない」の背景にはとても多くの事情が絡んでいた。
 
 
○仕事に夢中で気がついたら微妙な年齢になっていた
○子どもを愛せるかわからない
○不妊・セックスレス
○動物のほうが好きだから(満足している)
○経済的余裕がない
○産後サポートを得られそうにない
 
などなど
 
 
個人的に、印象深いというか忘れないでおこうと思ったものが「子どもを愛せるかわからない」という理由。
 
わたし自身は子どもは大好きだ。
けれど、たしかに全ての世の女性が、子どもが好きとか、自然に子どもが欲しいと思うはずだ、という決めつけはいらない。
 
そもそも子どもが欲しいと思っていない人に、「子どもは産んだほうがいい」なんて言う権利は誰にもないのだ。
 
 
たしかに「少子化」はとても大きな問題ではあるけれど、まずは個人の心や志向が尊重されるべきだと思う。
 
欲しいと思わないから産まない人ではなくて、
 
「産みたいけど経済的理由や、産後や子育てのサポートに不安がある、仕事を辞められない」人たちが安心して産める環境を整えることに注力すればいい。
 
 
 
「脱性愛化」という言葉も的を得ている。
香山さんご自身もネコを6匹飼っているようだが、ペットブームが少子化の「結果」起きていると考えるのとは別に、少子化の「原因」にもなっているんじゃないか、と考察している。
ペットへの愛情は「性愛」とは対極の性質だから、という見解だ。
 
この推測は、ノンママが増えている原因の一つとして、大いにあり得そうな気はする。
 
「愛玩欲求」という、自分より小さくて弱い存在を可愛がりたいという欲求が大人になると出てくると、酒井順子さんも書かれていた。
 
その愛玩欲求が、ペット(家族でもある)を可愛がることで満たされるので、すると、とりあえず今は子どもはいいかなあ〜と思いがちだと。
 
 
 
 
そして今は「子どもをあきらめるのがむずかしい時代」とも。
 
なぜかというと、ひと昔前は医療が発達していなかったので、不妊の場合はあきらめるしかない。子どもができない女は離縁された時代もあった。
 
 
それに比べて今は生殖医療が発達し、体外受精や凍結卵子、代理母などが可能になった。
加えて、未熟児や大きな病気を抱えた赤ちゃんも生まれてこられるようになった。
 
 
個人的には、自分も相手も負担の大きい不妊治療を長期でやることについては疑問をもっているのだけど。
 
 
 
結婚、妊娠、出産
わたしたちの価値観やカラダや環境は、とても大きく変わってきた。
 
 
一人一人が、多数派の意見や決めつけに流されるのではなくて、「いま何を一番優先するのか」「自分の性・肉体はどうしたがっているか」
「どう生きたいのか」ここをきっちり考えていくと、ムダな悩みやストレスは少しは減るかもしれない。
 
 
もしも少しでも、子どもが欲しいという気持ちがあるのなら、肉体には期限があることをもう一度思い出して、何か行動を起こすといいと思う。
後悔のないように生きるってこと。
 
 
わたしも色々、考えさせられました。
 
 
 
 
山田 宮由紀