もうすぐオスカーなので、昨年度の映画パンフレット大賞を決めたいと思います。
これは単に映画好きのわたくしが、デザイナー視点で「いい仕事してるなあ」とリスペクトする作品を勝手に褒め称えるものです。
パンフレットそのものと作品の評価や好き嫌いは関係ありません。
映画は素晴らしかったけど、パンフレットは残念な場合もあるし、その逆もある。
近年はパンフレットがないケースも増えてきましたし、売り切れている場合もあります。
そもそも観ていない作品は対象外になるので、すばらしいパンフレットはじつは対象外に見つかるかもしれません。
ですので、「こんなにいいいものがあったのに!」というのをご存知の方はぜひおしらせください。
で、4本目は昨年7月公開の『プロミシング・ヤング・ウーマン』です。
劇場用パンフレットというと、以前はA4 中とじ20~24ページくらいの冊子が一般的でした。
最近ではA5くらいのコンパクトサイズからそもそも規格サイズではない正方形、変形のものまで実に多彩です。
単に「目立てばいい」からそうしているのではなく、映画の世界観を大切にした結果、大判でスクリーンの迫力に近づけたいとか、スパイの手帳を意識したからこのサイズといった、作り手の意図が伝わってきます。
このパンフレットもAB版の変形で、かなり珍しいサイズ。
正方形に近いけれど、ちょっと天地が短い。
シアンとマゼンタ、キッチュでポップな色彩がコメディでホラーな復讐劇を彩ります。
最近はホラー映画も従来のカテゴリーにおさまらないものが増えています。
コメディテイストだったり、ビジュアル的には明るく晴れやかな画面だったり。
この作品も勝手に“キャンディスイートホラー”と名づけていました。
そんな世界観は、血糊やリップマークといったどぎついあしらいを甘い色を表現するギャップで見せてくれます。
レイアウトはグリッドにきっちりおさめる優等生タイプで、“前途有望”だったはずの若い女性の本質が垣間見えるようです。
デザインは奥付に「ダイアローグ」とあるので、映画宣伝美術やブックデザインを手がけておられる編集プロダクションの(有)ダイアローグさんでしょう。
ダイアローグさんのブログは海外文芸のレビューが多数更新されていて、映画の読み解きも安心感があります。
次回作も楽しみです。