安彦良和さんの、日本古代史ものの作品です。
ヤマトタケルという人物は、ほとんど名前しか知らず、どんな生涯を送ったのかとか、全然詳しくなかったのですが、この漫画を読んでこんな人物だったのか…というイメージがつかめました。
一般的には、実際に存在したのかどうか定かではない、伝説上の人物…という位置づけのようですが。
邪馬台国の卑弥呼のような存在というんでしょうか。
でも、作者の安彦良和さんは、ヤマトタケルは実在の人物だった、という確信のもとにこの作品を描いています。
作品の中で、ヤマトタケルのたどった行程を地図で細かく描いたり、時代の考察や状況証拠を細かく説明してあって、まるで学術論文みたいだな~と思いました。
安彦良和さんの、この時代にかける思いというか情熱がひしひしと伝わってくるというか。
ほんとにこの日本古代史の時代が好きなんだな~と感じました。
作品の感想としては、個人的には『虹色のトロツキー』など、他の作品ほどには、主人公のヤマトタケルに思い入れはできなかったのですが、ヤマトタケルは悲劇の皇子…というか、不運な生涯だったんだなーと思いました。
ヤマトタケルが勇猛果敢で人民に人気があったために、父である大王に疎まれたのか、警戒されたのか、西国に行かされたり、東国遠征に行かされたり。
普通なら、自分の跡取りが有能な人物なら国は安泰、と思うんじゃないのかと思うのですが、逆に、自分の地位が脅かされるという危機感を抱くんでしょうか。
跡取りは、多少足りない方が警戒されなくていいんでしょうか…。
戦国の世の、理不尽な悲しさですよね。
そんなわけで、何年もの間、東国遠征に行ってきて、それが苦難の連続で、戦いや自然災害に見舞われ、ようやくボロボロになって帰ってきた…と思ったところで、とうとう力尽きて倒れてしまいます。
ようやく会えると思った、妻や子の顔を見ることも叶わず…。
でも、途中途中で恋人も作っているんですけどね(^_^;ゞ
しかし、弟橘姫が、荒波を鎮めるために、自ら海に入るシーンは泣けました…(T_T)
この作品の中では、何人もいる妃の中で、ヤマトタケルは弟橘姫を一番大切に思っていたのかな…と思いました。
今まで、あまり実像が掴めなくて、自分の中でナゾだったヤマトタケルという人物のことを少し知ることができて、興味深い作品でした。