【内観 実況中継 ケース①飛行機機内にて】





飛行機に乗り遅れた。





車を運転中、時間はずっと気になってた。

渋滞にイライラしてた。

途中、マジで遅れるかも?と心から不安に思ったら、顔から血の気がひいた。






曲がってトンネルが見えた時、

トンネルなんてあったっけ?

え?もしかして道を間違えた?!

さらに血の気が引いて、乗り遅れが決まった。

諦めた時、まじかー、と笑った。

そこから、待っててくれるんじゃ無いか?

なんて淡い期待をした。

私ってかなりのポジティブ。

それとも、認めたくないだけ?こっちだ。

仕方ないって思わなかったから。






チェックインカウンターにて。

まだ、淡い期待をもっていた。

お姉さんが、余りにも淡々と話すので、

イラッとして怒りたくなった。

哀れに思われてると思った。






3万3千円と言われた時、払いたくないって思った。

お金がなくなる〜って思った。

だけど、払うしかない。イヤイヤ払った。

もうやだ〜って泣きたくなったけど、外に出ないように抑えた。

乗り遅れた飛行機チケットのキャンセルを

することを教えてもらえて、嬉しかったし、

有り難かった。







2階のイスに座った時、複雑な心境だった。

やってしまった後悔。

自分を責める自分。

責めてはいけないとまた責める。

お金がなくなった欠乏感。

更にないにフォーカスしてしまった。

ため息と共に、なんで私がこんな目にという思いが出た。

一方で、ネタだと笑おうとするも、

まだ心から笑えていない自分がいて、

ちゃんとネガティブを出そうとした。

これ、何だろ?分からない。






Facebookを開いたら、トップにお金について語るスレッドが出てきた。

イラッとした。

私に何を語れと?悲しみと怒りと哀れみ。






飛行機に乗る時、やっとお金に感謝するんだった!

と思い出して、飛行機代があったことに感謝した。

涙が出た。






書き出すうちに、やっと何を出せばいいかわかった。悲嘆だ。

あー、やってしまった。悲しい。

仙骨の上辺りに溜まっていた悲しみが消えた。







操縦席からのアナウンス。

声の感じから、若いパイロットだな、と思った。

右側に琵琶湖と京都が見えると教えてくれた。

写真を撮る。ちょっとウキウキした。

気分が上がってきた。いい感じ。







しばらくして、またアナウンス。

今度は右側に、若狭湾が見えるらしい。

雲が無くて、晴れているからこそ見える景色。

いつもは空を見上げるけれど、

今は地球を見下ろす。

真逆の視点。貴重な景色。







不意に、私の世界は美しい、と浮かんだ。

空も、雲も、山も、海も、湖も、街も、港も、飛行機も、そこに在る。

存在してくれることに感謝が湧いた。







人は、みんな優しかった。

チェックインカウンターのお姉さんは、チケットを手配してくれた。

お土産もの屋さんも、領収書を下さいって言うのが遅くなったのに、イヤな顔ひとつせずに出してくれた。

パイロットが、素敵な景色が見えると教えてくれた。

CAが軽食とドリンクを持ってきてくれた。

隣の人は、私が席に座る時、座りやすいように一度席を立ってくれた。

なんて優しい世界。









確かに、私は飛行機に乗り遅れた。

乗り遅れた飛行機は何事もなかったように飛び立ち、私は次の飛行機のチケットを手に入れて、今、ゆったりと飛行機の席に座って緑茶を飲み終わった。

お金は、なくなったように見えたけれど、お金があったから、こうして飛行機に乗っている私がいる。

お金のお陰。お金さん、ありがとう。






お金のエネルギーは、チケット、飛行機と姿を変えたけれど、ずっと私の元にある。

このあとそのエネルギーは、飛行機が福岡に到着したら、福岡という場所、電車、友達、と姿を変えて、私の元にある。

そうするうちに、また、私の元に更に大きなお金になって現れるのだろう。

お金は無くなっていなかった。

お金は在る。いつも。