僕が1歳迎えようとしていた頃、家族会議の末、僕の第二世を見てみたいと言う話が持ち上がった。


 僕は家族に溺愛されていて、ママには「目の中に入れても痛くない」 と、まるで初孫のような可愛がり方をされており、また、ゆみちゃんは「子供ができたらこんな感覚なのかなラブラブ」 と、自分の息子のように可愛がっていた。そして、パパもたまに帰ってきては、僕がどこへでもチョコチョコ付いて回るため、まるで監視されているようだ…と思いつつ、僕の愛嬌たっぷりのおフェイスとしぐさとパパに対する愛に洗脳され、やはり、僕を愛してくれていた。



 まぁ、そりゃ、僕を自分の家族と思って可愛がっているのだから、僕の子孫も見てみたいと思うのは、とても自然なことだ。 


 僕はとても大人しくかわいいのだけど、意外と手がかかる。お金もかかっている。

 お嫁さんを貰い、更に子供をもうけるとなると、今よりももっと手がかかるし、お金もかかる。


 悩んだ末、かかりつけの動物病院に相談すると、

「子作りは癖になる。一度経験したら、忘れられなくなってしまうよ。」と、

「去勢したほうが、オス特有の病気にもかかりにくくなるし、家でも大人しくなるよ」と、去勢を勧められたのだった。その頃、マウンティング行為をするようになっていた僕に、家族も少々困っていた。それならば…と、手術を行う決意を固めたのだった。


 手術の日は、ゆみちゃんは仕事の休みをとり、パパもわざわざ赴任先から自宅に帰ってきており、家族が全員集合したのであった。


 朝のうちから動物病院に預けられた僕は、家族とはなれた経験がないために、「アンアンア~ン」と鳴きまくった。しかし、僕の不安な気持ちを知っているにも拘らず、家族は悲しい目をしながら去っていった。


 この動物病院は何度か足を運んだことがあり、ここでは採血されたり注射されたりと、痛い思いしかしたことがないため、嫌な予感がしていたのだ。嫌な予感は的中し、僕は注射なんかよりもっと恐い思いをすることになった。

 

 あまりに鳴き叫び過ぎたせいか、再び僕が家族と顔を合わした時には、声が嗄れてしまっていた。

 あまりの痛さと恐怖感で震えながらも、えいっとママにしがみついたが、「下半身が痛い。痛すぎる。痛い~!!!」というわけで、再び「キャンキャンキャン!!ウキャキャキャキャン!!」と声を上げてしまった。

 僕のそんな泣き声をきくのが初めてだった家族は、全員血相を変え、医者に状況説明を求めて詰め寄るが、動物病院の医師にしてみたら、そんなの日常茶飯事だったようで、バッサリ「問題ない」と切られてしまった。



 家に帰ってからも、いつものようにごはんを要求してモリモリ食べる元気も、ソファにジャンプしたり、痛みに打ち勝って動き回る気力もない。

 ひたすら震えながら痛みに耐えている僕。

 いつもはすぐにだっこを要求する僕なのだが、今は痛すぎて、誰かに触られそうになるたびに「ウキャキャキャキャン!!」と鳴いてしまうしかない。

 家族はこの時ばかりは、手術なんてするんじゃなかったと、後悔した。しかし、後に、「やっぱり手術してよかった」と思うのであった。



ということで、第二世を見る夢は、本当の夢に終わった。


今でも、時々僕の子供はどんなだっただろうと思うことがある。


でも僕は、家族の愛を独り占めできる今の幸せに十分満足している。




最近落ち葉で地面を埋め尽くされている近くの公園にて。僕のオシリ。