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2024年5月9日読了

 

内容

事故により重度の障害を抱える妻を献身的に支える夫。

彼の日課はブログに生活を綴ることだった――。

一方、設計士の一志は編集者の妻・摂と将来の家について揉めていた。

子供部屋をつくるか否か。摂の考えが読めない一志は彼女の本心を探るが――。

四つの物語が問いかける「人間の尊厳とは何か」。著者渾身の長編!

 

「デフ・ヴォイス」を読んで良かったのでこちらの作品も手に取りました。

 

脊髄を損傷して肩の下からの麻痺して動けなくなってしまった妻を介護する夫、

妻が過去に妊娠中絶をしたことを知った建築士の男性、

上司と不倫をする女性、四肢麻痺をした障碍者が介護者に「自分になりすましてほしい」と

頼みSNSで知り合った女性に会いに行く男性、

四つのエピソードが同時進行で進んでいき、一見関係がなさそうなエピソードが

後半に向けて徐々に繋がっていきそうだと思いながら読み進めました。

 

それぞれの章で心や身体に傷を負ってしまった人の身体的、精神的な事柄が

鮮明に描かれているので読んでいる時にはとても重く苦しく感じました。

けれどこれが現実で傷を負ってしまった人達の本音だと思うと

更に重く受け止めなければいけないと思いました。

特に重度障害者とその介護は知らないことが多々あるだけに、

驚くだけでなく過酷で辛い状態だというのがひしひしと伝わりました。

そしてラストの年譜が入って吃驚でした。

こんな方法のミステリーというのは初めてだったので、

思わず本の帯にもあるようにもう一度この本を読みたくなってしまいました。

 

「生きていればいいことがある」と柴田さんの言った言葉。

どんなに過酷な状況下におかれてもこんな気持ちになるのは

難しいと思いますが、この一言には重みがありました。

これがあったからこそ、この作品はワンダフルな人生になれたのかとも

思いました。

 

人が生きるということについて様々な点から考えさせられ、

人間の尊厳というものを更に見つめさせられて重厚な作品でした。

 

「デフ・ヴォイス」の読了後も良かったですが、

この作品も心を揺さぶられるものが多々あったので、

この作品以外にもまた丸山さんの作品を読んでいきたいと思います。