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2024年5月2日読了

 

内容

ぼくに与えられた使命、それは勝利のためにエースに尽くすこと――。

陸上選手から自転車競技に転じた白石誓は、

プロのロードレースチームに所属し、各地を転戦していた。

そしてヨーロッパ遠征中、悲劇に遭遇する。アシストとしてのプライド、

ライバルたちとの駆け引き。かつての恋人との再会、胸に刻印された死。

青春小説とサスペンスが奇跡的な融合を遂げた! 大藪春彦賞受賞作。

 

近藤さんの作品は「タルト・タタン(ビストロ・パ・マル)」、

「ときどき旅に出るカフェ」、「ホテル・ピーペリー」、

「それでも旅に出るカフェ」、「私の命はあなたの命より軽い」を

読んでからこの作品を手に取りました。

 

以前テレビで世界のロードレースの番組を観ていたので、

この作品もサイクルロードレースをモチーフとした作品だったので

よりロードレースのことが分かるかと思いながら読み進めました。

更に帯にもわるようにただのレースだけでなくサスペンスという

ところにより目がいきました。

 

主人公の白石誓はオリンピック代表を期待されるほどの元陸上選手。

けれど勝つためだけの走りに疲れ、疑問を持ち、

サイクルロードレースのアシストという役割に惹かれて自転車競技に

転向する。

ヨーロッパ遠征中に起きた悲劇から封印されていた過去の真実を描いた小説。

 

ロードレースをそれ程詳しくなくても、

この作品を読んでいるとさりげなく基礎的な知識が描かれているので、

知識に関しては心配することなく読むことが出来ました。

 

何の競技であってもレースや戦いとなれば勝つこと、

一番になるということを求められますが、

もちろんロードレースでもそれはつきものなので、

常に選手たちはプライド、挫折、葛藤、嫉妬など様々な

気持ちが混ざり合い人によってはこれだけの気持ちを

コントロールするのが大変だと思います。

けれど、ロードレースは陸上競技のランナーのように

個人競技ではなく、団体競技ということが一番のポイントで、

特に主人公のアシストという立場がいかに大変だというのが

描かれていました。

 

まだ新人の立場の主人公はアシストという気持ちを

大事にしながら走ろうとしているのがよく分かり、

今までの自分ではない自分になろうとしているのが

ロードレースを通して成長しているなと思いました。

 

だた、走りたいだけなのだ。何も考えずに、

今日のように、がむしゃらに走って、

疲れてゴールに辿り着けなくてもそれで良い。

という言葉が印象的で、

本当に走ることが好きなのだなというのが伝わるので、

主人公がレースを走っている時の息づかい、

レースの駆け引きなどをドキドキハラハラしながら

臨場感たっぷりに味わえました。

そしてこれに絡めて恋愛要素が入ってくるので、

色々な人間ドラマが展開されて面白かったです。

 

今までさほどロードレースには興味が無かったですが、

これからは少し注目をしてツール・ド・フランスの

生中継なども観てみたいと思いました。

そしてこの作品の続編もあるので読んでみたいと思います。

 

まだロードレースは日本では認知度が低く、

海外での活躍もなかなか難しい競技であると思いますが、

この作品を読んで少しでも興味を持つ人が

増えれば良いなと思いました。

いつか世界で日本人選手が表彰台に上れる日が来ることを

期待したいと思いました。