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2024年3月4日読了

 

内容

無名の陶芸家が生んだ青磁の壺が
売られ贈られ盗まれ、
十余年後に作者と再会した時――。
人生の数奇な断面を描き出す名作!

シングルマザーの苦悩、すれ違う夫婦、
相続争いに悩む娘の言葉を聴いてドキリとする親…

人間の奥深く救うドロドロした心理を
小気味よく、鮮やかに描き出す絶品の13話!

 

多くのベストセラーを輩出している作家さんだということは昔から知っていましたが、

今までに一度も作品は読んだことが無く、現代ではなく昔の小説も読んでみたく、

帯に惹かれてこの作品を手に取りました。

 

無名の陶芸家が作った青い壺が人から人へと渡って転々としていき、

それと同時に様々な人間模様が描かれた短編集。

 

第一話の読み始めから物語に引き込まれました。

生き生きとした会話、そして流れるようなストーリー展開。

どこを読んでも退屈な場面もなく、ムラもなく、

様々な場面で喜怒哀楽な気分を楽しむことが出来ました。

何処にでも日常的にありそうな場面が多いですが、

それ故に身近に感じることが出来て会話の面白さや深みが満喫できました。

特に印象的で身につまされるような内容だった第九話。
女学校の卒業から半世紀が経ち、

久しぶりに京都で女学校時代の友達と集まることとなった物語でした。

女性同士の会話がまるで目の前で見ているような

生々しい会話も良かったですが、青春時代を懐かしむ女性の

現実の悲しさや虚しさが心の奥底に響きました。

 

人間関係を読み解く面白さもありますが、

それと同時に青い壺の行方でした。

行き着く先は以外な所もあり、

これがまたユーモラスで童話のようで心が和みました。

 

有吉さんの作品は初めてですが、きっと他の作品も

この作品のように人の心にすっぽりとツボのように嵌ることだと思いました。

良い作品というのはいつの時代になっても変わることなく伝わるものだと

思うので、これをきっかけに他の作品も読みたいと思いました。