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2024年2月10日読了

 

内容

愛する人の本当の心を、あなたは知っていますか?
「母を作ってほしいんです」――AIで、急逝した最愛の母を蘇らせた朔也。
孤独で純粋な青年は、幸福の最中で〈自由死〉を願った母の「本心」を探ろうと、

AIの〈母〉との対話を重ね、やがて思いがけない事実に直面する。
格差が拡大し、メタバースが日常化した2040年代の日本を舞台に、

愛と幸福、命の意味を問いかける。

 

平野さんの作品は「マネチでの終わりに」を読んでから

この作品を手に取りました。

 

母親と死別した息子朔也。

何故母親が自由死を選んだのか理由を知りたくて

AI技術を駆使しVF(バーチャルフィギャー)を作り対話をしていくうちに

思いがけない事実に直面するという物語。

 

亡くなった母親に今の自分の姿で会って話をしてみたいという

ただ単純な思いになるのは、実際に大切な人を亡くしてしまった

人だったら一度は同じような思いになると思うので、

この息子の切なる気持ちが最後まで消えないのは

よく分かり涙をそそられました。

けれどAIで作られた母親と会話を重ねていくうちに

現実とAIでの世界の狭間で起こっている違和感に気が付き、

作られる前以上に本当の母親のことが知りたくなってしまい

どんどんと突き詰めていく心情がとても切なかったでした。

生きていた母親の人生を責めることにもなったり、

自分自身の今までの行動も責めたり、後悔をしたりして、

本当にVFを作って良かったのだろうかと思えました。

最近では現実でもバーチャルな世界でもこのようなことが

出来るレベルとなっていきているので、とても他人事とは

思えなくなる一方で果たして同じようなことをしてしまって

良いのだろうかと疑問も感じました。

どうしても亡くなった人のことを美化してしまい

思い出も美化してしまう傾向があるので、

万が一自分の思いにそぐわないことがあったら

人はどうするのだろうかとも考えてしまいました。

 

亡くなった母親への切なる思いもよく理解できますが、

母親の自由死を選んだ理由の一部も理解出来る気がしました、

真実の部分は分からないですが、

母親が子供を思う気持ちも考えると胸が熱くなります。

 

この作品のようにAIで母親を例え作ったとしても

本心が分かるわけでもなく、それよりも生きている

生身の人間と意思疎通をしっかりとしなければ

現実と向き合うことも出来なくそれこそ未熟な人間に

なってしまいそうなので、生きている間にしっかりと

身近な家族とは会話をしなければいけないなと感じました。

 

バーチャルな世界を交えながら、

一方では貧乏や格差社会、lgbdsの問題などと

多くの社会問題のテーマを織り交ぜながら

自分の存在意義や生き方を問いながら物語が展開されているので

重厚感のある作品でした。

 

重いテーマと現実な部分と非現実的な部分も重なりあっていくので、

所々分かりにくい部分もあったので、

映像化する方がより分かりやすいと思うので

映画の方が理解しやすいかと思いました。

映画を観る機会があったら観てみたいと思います。