2024年1月1日読了

 

内容

オール書き下ろし新作
次世代ミステリー作家たちの警察小説アンソロジー
「孤狼の血」スピンオフ、「刑事犬養」シリーズ新作収録

収録作
葉真中顕 「上級国民」 刑事事件化されなかった交通事故に隠された真実
中山七里 「許されざる者」 東京オリンピックの裏で起きた悲劇
呉勝浩 「Vに捧げる行進」 街で頻出する落書き犯の驚愕の意図
深町秋生 「クローゼット」 バディを組む上野署の刑事が抱える秘密
下村敦史 「見えない刃」 性犯罪の捜査に乗り出した女刑事が見たもの
長浦京 「シスター・レイ」 半グレたちのトラブルに巻き込まれた謎の女
柚月裕子 「聖」 ヤクザに憧れ事務所に出入りする少年が目指すもの

 

警察という組織の中で生きる人達の警察小説の短編集。

人気ミステリー作家さんたちのアンソロジーというだけあって、

どの作品も読みごたえのあるものばかりでした。

葉真中顕さん、中山七里さん、柚月裕子さんを除いては

初めて読む作家さんだったので新鮮でした。

 

葉真中顕微鏡さんの「上級国民」は実にリアルで、

この作品の似たような交通事故の裏に隠された

事実があったのを思い出されました。

けれどこの作品の場合はその裏を逆手にとっているトリックが

あったので更に面白みがありました。

 

中山七里さんの「許されざる者」はこの短編集の中で

一番現実に近い作品でコロナ禍の東京五輪を題材にしているので

更にリアル感たっぷりでした。

ここでもいじめの代償は一生つきまとうものだと確信されました。

 

呉勝浩さんの「Vに捧げる更新」は王道の警察小説でしたが、

この作品もコロナ禍が題材となり、

サビれた商店街のシャッター通りのペンキで描かれた落書き騒動で

世の中を浮彫にしているのが興味深かったです。

 

深町秋生さんの「クローゼット」はこの短編集の中でも

少し異色な感じだけあって印象深かったです。

警察という中でも多様性が問われる作品となっていて、

主人公の相棒との距離がとても意味深で面白く、

今後のストーリーも思わず読みたくなってしまう感じでした。

 

下村敦史さんの「見えない刃」はこの短編集の中で唯一女性警察官の登場です。

女性警察官が携わることによって性被害にあった女性が

男性警察官には伝えられないことや見えなかったことが

見えることによって新たに性被害者を取り扱うことに対しての

難しさやセカンドレイプへの対処などが作品の中で良く描かれていて

知ることも多い作品でした。

 

長浦京さんの「シスター・レイ」はアジア系の外国人に対しての

差別的な扱いをする警察の実態が描かれていて、

シスターと呼ばれる警察嫌いの玲のアクションシーンが

盛り込まれていることで映画のヒロインのような痛快ぶりが印象的でした。

 

柚月裕子さんの「聖」はヤクザに憧れる少年と謎めいた男との交流が

描かれていますが、柚月さんらしく最後には人情話でほろりと

させられて意外性のある展開でした。

 

このアンソロジーで新しい作家さんとの良い出会いがあったので、

これをきっかけに他の作品を読んでみたいと思いました。

 

 

 

 

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