2023年12月27日読了

 

内容

明治三十八年、福井県麻生津村。

増永五左衛門は、この地に農業以外の産業を根づかせるべく苦闘していた。

そんな時、大阪へ出稼ぎに出ていた弟の幸八が、

当時はほとんど普及していなかっためがねに着目、村でのめがね製造を提案する。

村人たちの猛反対の中、輝く地平を求めて、二人は困難な道を歩み始めるのだった--。

「金の角持つ子どもたち」等で注目を集める作家・藤岡陽子の新たなる代表作の誕生!

 

おしょりんというタイトルだったので、

人の名前だと思って読んでいたら、そうではなく、

積もった雪が夜の冷え込みで固く凍った状態ということでした。

そんなタイトルだったので不思議だなと思いながら読み進めていきました。

 

明治時代 福井県麻生津村 松永五左衛門と幸八の兄弟が村の発展へと

眼鏡作りに奮闘する。そしてこの二人を支えた妻むめの物語。

 

冬は雪深い土地柄で農業以外での産業がないので貧しい人達が多いと

思っていた松永兄弟。

そこに弟が大阪へ出稼ぎしたことによって、これから必要とされる

眼鏡に先見の目を持ち一から眼鏡作りに着手していきます。

初めは兄は乗る気ではなかったものの、

兄と弟で知恵を合わせて畑違いだった地元の宮大工だった人や

眼鏡に一切かかわったことのない人達と一緒になって

眼鏡作りに試行錯誤して苦労を重ねて一流品の眼鏡を

作り出していく様子はとても涙ぐましい様子でした。

 

学問を受けられなかった人には働きながら学問を学ばさせ、

そして眼鏡作りとしての腕も一人前として腕をつけさせて、

この時代にしてはとても粋な計らいをしていたなと思いました。

何も惜しげもなく眼鏡工場で働く人達に力を注ぎ、

そういった心配りが仕事の能率も上げて眼鏡作りの

腕も上がっていったのかと思われます。

兄の言っていた「技量が不揃いなもんが力を合すから、

大きな仕事をやっていくための心が育つんやで。」

という言葉がとても印象的でした。

 

むめの結婚当初のちょっとした思い違いで、

五左衛門との行き違いが日々の中で見え隠れしていましたが、

眼鏡作りを一緒にすることによって、夫婦の愛情を再認識をし、

職人さんと同じ気持ちで毎日を生きられて楽しいと語っていて

生き生きとされていくのが読んでいても嬉しく思えました。

 

今では福井と言えば眼鏡のシェアが一番というのが

当たり前のようになっていますが、ここまでになるまでは

この物語のような松永兄弟の努力の道のりがあったということを

この作品で初めて知りました。

小学生の頃から眼鏡は必需品となっているので、

改めて眼鏡の有難さを思い知りました。

そして日本人のものづくりに対してのこだわりや大切さを

教えられた気がして心の温もりをとても感じられました。

 

帯にもあるように「おしりょん」を是非多くの方に読んで頂き、

日本人の心をより感じてもらえたら良いなと思いました。

 

 

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