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2023年12月1日読了

 

内容

メモ魔の窓際刑事VS多国籍IT企業
秋田県能代市で、老人施設入居者85歳の死体が近隣の水路から発見された。

雪荒ぶ現場、容疑者として浮上したのは、施設で働くベトナム人アインである。
外国人技能実習生のアインは、神戸の縫製工場で働きながら、

僅かな収入を母国の家族へ送金する日々を送っていた。

劣悪な労働条件に耐えかね失踪。列島を転々として東北にたどり着いた。

重篤なガンを患っていた入居者に請われて、自殺を幇助したとの自供を始める。
これで解決か……。捜査官らは安堵したが、

ひょんなことから捜査に加わった警視庁継続捜査班の田川信一は、死体の「手」に疑いを抱いた。

捜査線上にあがったのは、流通業界の覇者として君臨する世界的IT企業サバンナだった――。
日本経済の末路を予言した「震える牛」シリーズ最新作!

 

BSプレミアムのドラマで「ガラパゴス」を観て興味深いことが

題材となっていたので、こちらの作品も読んでみたいと思い手に取りました。

 

秋田県で老人施設入居者の女性が水路でから死体で発見された。

介護士のベトナム人アインが自殺を手伝ったと供述。

しかし亡くなった女性の手の向きに疑念が湧いた田川刑事が解いて

暴いていくうちに日本の現代が抱えてい格差社会、海外からの技能研修生問題、

ブラック企業などが浮き彫りとされるミステリー。

 

ミステリー小説という形となっていますが、

田川刑事の捜査を辿っていくと次々と目の当たりにする

今の日本経済でも問題となっている巨大企業の在り方、

海外から技能研修生や外国人労働者への過酷な労働などと

社会の闇の部分が嫌というほど浮彫りにされていました。

普段ニュースで何気なく耳にしていることであっても、

実際にこのような不当に扱われていることが

こんなに沢山にも日本のあちこちであるかと思うと

これから日本経済は一体どうなってしまうのだろうかと思いました。

 

今まで日本は先進国と言われて鼻高だったけれど、

そうではなくもはや世界では日本で働いて稼ぐという国ではなく、

現在飛躍的に伸びている国々に移り変わってきているという

事実を各企業が自覚しなければ、外国人労働者も減ってきてしまい

本当に日本経済が落ち込んでしまうのでのではないかと不安になりました。

 

自分が下層に落ちることの恐れ、そして自分の娘が将来下層にならないため、

そして自分の身を守るために、人の身も心も滅ぼしてしまった

人の罪は本当に深いものだと思いました。

不遇な境遇で働く人達が増えないようにと、

これからの日本人は貧しくとの矜持を失わずに生きていかなければ

いけないと思いました。

 

初見の作家さんでしたが、

社会問題に深くメスを入れて切り込んでいき、

取り上げられて問題が様々とありストーリーとしても

とても興味深く面白かったです。

現実の日本社会を突き付けられるのはとても苦しい思いをしましたが、

これが現実なのだと思うと冷静に受け止めることも出来て良かったです。

この作品をきっかけにして他の作品も読んでいこうと思いました。

 

この作品もドラマ化されないかと密かに望んでいます。