2023年1月8日読了

 

内容

幼女二人を殺害した女性死刑囚が最期に遺した言葉――
「約束は守ったよ、褒めて」
吉沢香純と母の静江は、遠縁の死刑囚三原響子から身柄引受人に指名され、

刑の執行後に東京拘置所で遺骨と遺品を受け取った。

響子は十年前、我が子も含む女児二人を殺めたとされた。

香純は、響子の遺骨を三原家の墓におさめてもらうため、

菩提寺がある青森県相野町を単身訪れる。

香純は、響子が最期に遺した言葉の真意を探るため、

事件を知る関係者と面会を重ねてゆく。
 

幼児二人を殺害した女性死刑囚。

彼女が最期に残した約束とは何だったのか。

その真意を知るために遠縁の香純が事件の真相を

追っていくという長編犯罪小説。

 

読み進めていくうちに、

同じような事件が実際にもあったなと思い

畠山鈴香容疑者の秋田県児童連続殺人事件ということが浮かびました。

恐らくその事件をモチーフとして書かれたかと思うので、

薄らいでいた記憶の中で当時の報道を思い出しながら読んでいたので、

響子の過去を辿っていた所はとても辛く、

そして死刑が執行されるまでの過程はとてもリアルで胸の詰まる思いでした。

 

響子が育てられた環境が窮屈だったこと、

更にはその窮屈で閉塞的な環境は響子の母にまで遡り、

この土地は仲間意識が強く、一度仲間外れにされたら

関係を修復するのには難しい土地。

そして父親からの厳しい躾の影響で、

精神的に追い詰められ、そしていつも見られているのでは

ないかということから育児ノイローゼになってしまい、

そこから自分の奥底に秘められていたものが何かの

きっかけに出てしまって悲劇の扉が開いてしまったのかと

思ってしまいました。

けれどそれだけの要因ではなく、

響子が「約束を守ったよ、褒めて」という言葉の本当の意味を

探ることによって響子の真意が分かって、

更にこの事件を起こしてしまったことが悲しく思えてしまいました。

真意に近づけば近づくほど響子の虚しさ、切なさが増していき、

行き場のない気持ちになりました。

せめて閉塞感のない土地だったら、

せめて誰かに頼ったり助けて欲しいと訴えることが出来たら

状況が今よりましだったかもしれないと思いました。

 

ただただ響子は寂しくて、辛くて、

助けてもらいたくてたまらなかったんだろうな

という一言に尽きませんでした。

最期の響子には故郷で待つ母親のことしか頭に浮かばなくて、

ずっと傍らにいたかったのだろうと思いました。

 

柚月さんの作品は好きなのでこれまでに何冊か読んでいますが、

この作品は罪と罰というものを更に深く掘り下げいき、

事実と真実が違っているというものを明らかに見せて

くれたものだと思うと同時に、報道されているニュースや

新聞記事などの見方を一方向から見ることなく、

その裏側があることを考える力も大切だと思わされました。