『アトランティスのこころ』
2001/監督:スコット・ヒックス
スティーブン・キング原作の映画。
早くに父を亡くした11歳の少年ボビーは、自分のことしか頭にない母と2人暮らし。
ある日、2階に引っ越して来た不思議な魅力と力を持つ老人テッド。
テッドは、ボビーが欲しいものを買えるようにと、新聞読みのバイトを依頼し、親睦を深めていく2人。
ある日、テッドの意味深な発言を機に、静かで事件など起きない街とボビーの平穏な生活に、“現実”という深い闇が忍び寄る…
とても静かで優しく、根底に憂いを帯びた悲しくも美しい映画🎞️
不慮の事故で若くして亡くなったアントン・イェルチンの子供時代の映画でもあり、本当に惜しい人を亡くしてしまったなと感じる。
また、テッド役のアンソニー・ホプキンス。
ハンニバルのイメージが強い彼だが、なんともイケメンダンディな優しい老年の男性…こんな素敵な隣人との出会いは、一生忘れられないし、
ボビーにとって、彼を形作った存在だと言えるだろう。
子供の心の中にある“幻の国(アトランティス)”。
純粋で汚れのない、楽しみと幸せと夢に溢れた心の中の国。
そこでは全てが思いのまま、感情だって感じるまま。
その国を心にずっと持ち続ける事が出来れば、どんなに幸せだろうか…
しかし、世界は残酷で、“現実”がどんどんどんどんその国を侵略していき、やがてどこかもっと心の奥へと押しやって、固くその扉を閉ざしてしまう。
悲しみ、虚しさ、世間の不条理さ、怒り、諦め…“幻の国”に居ては、それらには太刀打ちできない。
いつか、その幼い自分に「もうワガママだけでは通用しない。感情だけではうまくいかない。愚図ってもダメ。大人にならなければ、コントロールしなければ。」と、現実を突きつけないといけない。
世の無情、
思い通りに行くことのほうが少ないかもしれない、そんな世界で、
“自立”して行かなければならない。
そんな世の中でもへこたれないような、立ち向かえるような、そんな強さを育てなければならない。
…いつか、大人にならなければならない。
ボビーにも、“幻の国”を去る階段を1歩登る時が来たことが、この映画では描かれている。
子供から大人へ。切ない現実を乗り越えるたびに、“幻の国”は奥底に追いやられて行き、憂いを抱えながら大人へのステージを上がっていく。
でも、私は、
そうして大人になったとしても、ふと1人になった時や昔を懐かしむ時、
心の奥底に追いやった“幻の国”が入った宝箱を、
そっと取り出して眺めて愛しんでもいいと思う。
消し去ることの出来ない、自分を形作る、大切な大切な思い出や、その時の想い。
それは、大切に、大切に…持っていたい。
そして、誰かと共有出来なくても、独りでも、その国を愛して行くことは出来ると思う。
純粋なまま生きて行くことは難しい。
それをなんとも思わず踏みにじる人もたくさん居る。
でも、“幻の国(アトランティス)”は、心の大事な場所に、宝箱に入れて、
私の一部として、一緒に生きていけばいい。
そんな、特別な自分だけのモノを感じさせてくれるような、とても心に響く映画🎞️
静かな時間に癒されたい方には、とてもオススメ出来る映画だと思う