『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』
2022/監督:ウィル・シャープ






猫をモチーフにしたイラストで人気を集めたイギリスの画家ルイス・ウェインの生涯を、ベネディクト・カンバーバッチ主演で描いた伝記映画。

1860年、イギリス上流階級に生まれたルイス・ウェインは早くに父を亡くし、一家を支えるためにフリーのイラストレーターとして働くように。

やがて妹の家庭教師エミリーと恋に落ちた彼は、周囲から身分や年齢の違いから猛反対を受けるが彼女と結婚。

しかしエミリーは、末期の乳がんを宣告されてしまう。

そんな中、ルイスとエミリーは庭に迷い込んできた子猫にピーターと名付け飼うことに。

エミリーを喜ばせようと描いたピーターの絵が、後の彼の人生を決定付けるものとなる…



1人の絵描きの、繊細で無垢で、とても難しく生きづらい、そんな一生を静かな美しさで描き切った映画🎞️
ただ描きたい、ただ内にある衝動や輝きをカタチにしたい、芸術家なら誰しもが持っている想い。
でも、それに従い生きるには、あまりにも世界はルールと制約が多すぎる。
背負うべき社会のコトが多すぎるし、大きすぎるし、無垢で純粋な創作は悪意によって搾取されてしまうことも。
亡くなってから有名になる芸術家がほとんどだった昔の時代では、こうして苦悩のままに貧困で亡くなっていった芸術家がかなり多いのかなと感じる。

誰にも理解されず「変わり者」でまとめられ、窮屈な生き方をしてきたルイスも、
やっと心に“電気”を感じる人に出会える。
分かり合えて、支え合えて…でも長くは続かない…
彼はエミリーを失うことに絶望感を感じ、地球で生きるのは難しすぎると言うが、
エミリーは「世界は美しいから、見て、それを多くの人と共有して」と、彼に言い残す。
自分が居なくなっても、彼が世界と繋がって生きていけるように、その彼の素晴らしい独特な感性から生み出される世界観をたくさんの人に知ってもらえるように。
そんなエミリーを喜ばせようと描いた「ネコ」が、その後の彼の人生の呪縛にもなったし、生きる支えにもなったんだろうなと感じる。
奇しくも、芸術家の空想や描く動力になるのは「悲しみ」だと私も感じている。
「嬉しさ」「楽しさ」よりも、はるかに深く心を揺さぶる「悲しみ」は、より自分の中の芸術を花開かせて行く。
ルイスも、生きづらさ、失った悲しみ、色々な恐怖と戦いながらも、自身の“描く”行為から逃げずに生涯動き続けた。
“描き続ける”。これが、彼の最も素晴らしい芸術活動だと、私は思う。
心から愛し、自身を全て明け渡せるほどのエミリーの存在があったからこそ、
そのエミリーと共に出会った“ネコ”という存在があったからこそ、
そして誰からも理解されない「悲しみ」、失う「悲しみ」、生きる「悲しみ」を背負い描き続けたからこそ、
ルイスの絵は、今なお愛される作品なんだと思う。
絵を描く者として、とても心が揺さぶられる、美しく素敵な映画に出会えたなと思った照れ
そして、外の世界に何を言われようと、自分の内側の声、直感、世界を信じて愛して、描き続けること、描き続けて良いんだということを、
とても温かく、再確認出来た映画でした✨


「ネコをペットとして愛好する」「ネコへの敬意と愛」を確立した人でもあるそうなので、
ネコ好きな人にも嬉しい映画かもしれませんおねがい
たくさんネコが出てくるわけではないけれど、またそこがネコの気ままさを感じさせてくれる、良い演出だなと思った。
うちにもネコが居るので、ネコの美しさや可愛さは痛いほど分かるし、
意外にも、犬よりも遥かに愛を感じる行為が多いのも、ネコの魅力だと思う。

芸術家として、ネコ好きとして、とても背中を押してもらえる、悲しくも美しくあったかい、
そんな素敵な伝記映画🎞️
またルイス・ウェインの展覧会も開催されたら行きたいなと思う照れ