記事を書くに当たって、せっかく久し振りに
乳癌診療ガイドラインを眺めたので、
乳癌の治療方針や予後予測のための因子
の「確からしさ」?についても、
再度、はっきり書いておきたいと思います。
※過去に何度か、ご批判コメントを
いただいたけど、
「科学的根拠」(と医学界が言ってること)
を書いたからって、
他人のブログを批判するのは、
やめていただきたいものだ(笑)
【乳癌診療ガイドライン(日本乳癌学会)】
・先の記事
で、
「
・根拠と科学的データに裏付けられた情報
といっても、確からしさには、かなりの
幅があり、
(強くそういえるものから、十分なデータは
ないが、これまでの慣習で、
そう信じられているというものまで)
また、全くデータのない事項も少なからず
ある。
」
と言っている、と書きました。
診療ガイドラインには、エビデンスによって
「確からしさ」が区分けされていて、
乳癌「病理診断」のガイドラインでは、
A: 確実
B: ほぼ確実
C1: 可能性あり
C2: 証拠不十分
D: 大きな関連なし
と区分けされている。
そして、
▼ホルモン受容体 : A
・ 内分泌療法(ホルモン治療)の効果は
ERに依存。
ER発現量が高いほど奏効率が高く、
予後良好。
・全ての原発乳癌に対して、内分泌療法の
適応決定のために、ホルモン受容体の
発現状況の検索は必須。
▼HER2 : A
・HER2は予後予測因子である(予後不良)
と同時に、
抗HER2療法を使用するかどうかを
決定するために、
乳癌の治療方針決定にHER2検査は
強く推奨される。
※10~24%程度、原発巣と転移巣でHER2
発現状況が異なるため、転移・再発巣でも
可能な限りHER2検査を行うべき。
▼Ki67 : C1、C2
C1: 予後予測の意義から浸潤性乳癌の
Ki67の評価を行ってもよい。
C2: 特定の治療に対する効果を予測する
目的で浸潤性乳癌のKi67の評価を
行うことは、基本的に勧められない。
※かつて、私事で超立て込んでいた際に、
「なおさん」からKi67もある云々
本題と異なる、言いっ放しの
ご批判コメントをいただき、
その後の過去記事でも若干述べましたが、
私がKi67を敢えて書かない理由は
上記、治療予測の「確からしさ」でした。
この機会に、日本乳癌学会診療ガイドライン
に書かれている見解を書いておきます。
▼センチネルリンパ節生検 : A
(全症例への免疫組織化学的方法 : C2)
・臨床的腋窩リンパ節転移陰性乳癌で
腋窩リンパ節郭清の省略可否の判定に
センチネルリンパのHE診断は有用、
強く勧められる。
⬆ 画像診断、細胞診で明らかな
腋窩リンパ節転移があれば、
腋窩リンパ節郭清をするので、
センチネルリンパ節生検はしない。
・HE診断で検出されず、免疫組織化学的
方法のみで検出される微細な転移は、
臨床的意義は医療経済的に疑問視され、
適用は小葉癌などに限定すべき。
▼術前化学療法後の
センチネルリンパ節生検 :
術前化学療法前に転移なし : C1
術前化学療法前に転移あり : C2
・術前化学療法前にリンパ節転移なしの
症例では、外科医、病理医、放射線科医から
構成された熟練したチームで行われる
センチネルリンパ節生検であれば、
腋窩リンパ節郭清は省略してもよい。
・術前化学療法前にリンパ節転移ありの
症例におけるセンチネルリンパ節生検の
精度は信頼できない可能性が高く、
日常診療として行うには時期尚早。
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