読者さんからメッセージでご質問を
受けていた、
乳癌と診断されてから、
どのような経過をたどるのか、に対して、
(リンクあり)
で、まず、初期治療(ステージ3まで)と
遠隔転移後(ステージ4)の治療の目的と
治療概要を書きました。
次に、もう少し、初期治療の三大治療、
手術、放射線、薬物補助療法
それぞれの標準治療について、
『患者さんのための乳癌診療ガイドライン』
から抜粋転記して書いています。
ここまでの記事『手術』編で、
根治のために必須となる手術
(植松先生の放射線ピンポイント照射も
根治手段であると私は考えます。)
について書きました。
この記事では、
局所再発予防、根治補助
のための放射線治療について書きます。
⬛放射線治療の原理
・放射線が身体の中の細胞を通過するとき、
遺伝子(細胞増殖に必要な情報が書かれて
いる部分)にダメージを与え、細胞を増殖
できないようにして死滅させる。
・放射線は正常細胞も癌細胞も通過するが、
癌細胞の方が放射線によるダメージを
受けやすく、正常細胞は、ダメージを
受けても回復しやすい、
その差を利用して癌細胞を死滅させる。
・乳癌に対する放射線治療では、
『リニアック』という治療装置を使う。
⬛放射線治療の大切な特徴
・過去に照射したところに再照射できない。
・放射線の副作用のうち、いったん発生する
と治りにくい晩期副作用(照射完了後数ヵ月
以降に現れる副作用)の方が、より注意が
必要だが、
過去に照射したところに再び照射を行うと
初めての時よりも晩期副作用が出やすく、
効果<副作用リスクのため。
・例外は、全脳照射後の定位放射線照射
(ピンポイント照射)や骨転移への再照射。
⬛陽子線や重粒子線治療について
・乳癌では保険適応外。
乳癌の場合は、X線や電子線によって、
安全かつ効率よく治療できるため、
基本的には適応にならない。
・早期乳癌に対して重粒子線を用いた
臨床試験が行われているが意義はまだ
明らかでない。
・陽子線で乳癌を治療しようという動きも
あるが、綿密に計画された臨床試験でのみ
行われるべき治療。
⬛乳房温存手術後の放射線療法の目的
・断端陰性の患者に、放射線治療をすると、
しなかった場合に比べ、
乳房内再発が1/3に減る。(臨床試験結果)
・ただし、放射線照射を行っても、
乳房内再発を100%防げるわけではない。
・断端陽性、腋窩リンパ節転移あり、
若年性で、再発リスクが高い。
・腋窩リンパ節転移が4個以上あった患者は
通常の胸壁照射に加えて、
鎖骨上窩リンパ節照射も勧められる。
⬛乳房切除後の放射線療法の目的
・胸壁や鎖骨上窩リンパ節
などの局所再発リスクが
高い場合は、
薬物療法に加えて、
放射線療法も行った方がよい。
(臨床試験結果)
・胸壁や鎖骨上窩リンパ節再発が起こると
その再発病巣から全身に癌細胞が広がる
リスクがある。
放射線療法を行うことで、これらの場所の
再発を防ぐことで、結果として
遠隔転移のリスクを減らし、 根治の可能性を高める。
・放射線療法の対象は、局所再発リスクが
高いとされる、
次のいずれかに該当する患者
ー 腋窩リンパ節転移4個以上
ー しこりが5cm以上
ー 腋窩リンパ節転移が1~3個でも
『基本的には放射線療法をお勧め
しますが担当医と相談して下さい 』
(by乳癌学会)
では、行うべき治療。
※炎症性乳癌は必須です。
元々皮膚浸潤(疑いを含む)があれば、
強く推奨される。
※腋窩リンパ節より奥の、鎖骨上下、
胸骨傍、小胸筋の裏などのリンパ節疑い
があれば、原則必須。
術前化学療法でpCRした場合に、
患者の自己責任でしない選択をする場合、
省略可能というレベル感だと思います。
※局所進行乳癌の定義と照らし合わせて
見ていただくと、nonokoさんのケースは
かなり例外的であることがお分かり
いただけるかと思います。
nonokoさんの事例をご紹介しましたが
局所進行乳癌の多くの皆さんに当てはまる
わけではないことは、ご留意下さいね。
※私の場合、術前化学療法で画像上は
全てのリンパ節転移が消えていたので
主治医はしてもしなくてもよい、
するなら、再発後でなく今すべき、
との見解、
私の判断として、
目に見えない転移が残っている可能性は
ありますから、
胸壁+鎖骨上窩+胸骨傍
の放射線治療をしています。
・腋窩リンパ節郭清後に腋窩に放射線を
追加しても生存率は変わらず、
リンパ浮腫リスクが高まるので、
勧めない。
⬛放射線療法の治療内容
・通常、通院で行う。
・1.8~2.0グレイ×5日×5週間
=45~50グレイ
を毎日照射する。
・1回の照射時間は1~5分程度。
着替えを入れても15分程度の治療。
※治療そのものは痛くも痒くもない。
・放射線療法では、毎日続けて照射する
ことにより、癌細胞が次第に少なく
なっていく。
途中に長期間休みを入れてしまうと
同じ総線量を照射しても効果が薄れて
しまう点、注意。
⬛放射線療法と再建
・乳房を再建する場合、放射線療法を併用
すると合併症が多くなる。
・ 通常、自家組織より人工物を用いた
再建乳房を照射する方が合併症が多くなる。
・人工物による再建の場合、一般的には
エキスパンダー挿入中に照射すると
重篤な合併症が増えるため、
可能であればインプラントに入れ替えて
から照射することを勧める。
※局所進行乳癌で遠隔転移リスクが高ければ
再建は通常、勧められないはず。
⬛放射線療法の副作用
【急性期:治療中、終了後まもなく】
・脱毛や吐気、白血球減少はほとんどない。
※私は白血球が1000~2000ほど
減少したと思います。
なかなか戻らなかった、、。
(手術と放射線のどちらが原因か
正確には判別不能ですが。
ドセが効かない代わりに骨髄抑制も
なかったので、術前には戻っていた。)
かなり少数派だと思われます。
通常は、抗がん剤に比べたら
あっても微々たるもののようです。
・開始後3~4週間後くらいに、
日焼けのように赤くなり、痒くなったり
ひりひりしたりする。
全摘後の照射の方が照射する範囲が広く、
胸壁の皮膚へもしっかり当たるので、
皮膚の副作用は強くなる。
※私はおそらく範囲は通常より広かった
(胸骨傍があるので)ですが、
通常の日焼けを日焼け止めなしでする
よりは 軽かったです。
日焼けではしない色素沈着(黒くなる、
私は日焼けは赤くなって、あまり黒く
ならずに抜けるので色素沈着しにくい)
が抜けるのに時間がかかりましたが。
・鎖骨上窩にも照射を受ける場合、食堂の
一部にも放射線が当たることがあるため、
一時的に、喉の痛みや飲み込む時の痛みを
感じることがある。
※私は一切なかったです。
・これはガイドラインには書いていない
けれど
倦怠感、疲れ。
手術、化学療法でダメージを受けた後
だから、感じる人が多い。(私も)
【晩期:治療後数ヶ月後】
・重大な副作用の頻度は少ない。
・放射線肺臓炎 100人に1人
・二次がん はっきりしない
乳癌経験者は病歴のない人に比べ、
二次がんを生じる割合が高いが、原因は
特定できていない。
※リスクをヘッジする性分の私は、
もしも早期で放射線治療をしなくて済む
のであれば、したくないので、
その観点からも、温存はしない。
(温存手術する方を否定しているわけでは
ありません、あくまで私の価値観)
⬛放射線が先か抗がん剤が先か
・遠隔転移は生死に関わる可能性があるので
遠隔転移リスクを減らす目的の抗がん剤
治療を先に行い、その後で放射線療法を
行うのが一般的。
・乳房切除術と放射線療法が必要になる
ような進行乳癌の患者では、
抗がん剤による遠隔転移予防が重要。
標準的な抗がん剤治療を先に行って
放射線療法の開始が遅れても、
局所再発は増えないと考えられる。
したがって、通常は抗がん剤治療を先に
行う。
※抗がん剤の確度<放射線の確度
なので、 微妙ではありますが、
どのみち、抗がん剤が効かない場合は
遅かれ早かれ 遠隔転移するので、
(するリスクは高いので)、妥当かな。
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