聖路加のセカンドオピニオン
一週間前までに、診療情報を提供するよう、
提供する内容の細かい指定もいただき、
提示しました。
病院受付には、外国人の患者さんも何人も
いて、案内や掲示物も英語併記で、
何だかホテルっぽい雰囲気。
国際病院だけありますね。
院内にチャペルもあるし、ホスピスもあるし、
いいなぁ、と、、。
セカンドオピニオンを待つ間、
リビングウィルや終末期医療に関する
問診票(すごく、たくさんの質問)に
記入しました。
文化的には、私の感覚に合ってそうな
病院だなぁ、と感じました。
セカンドオピニオンに対応して下さった
先生は、主治医T先生と似た感じで、
加えて、餅は餅屋(腫瘍内科)の説得力で、
私の聞きたいことに、臨床経験を踏まえた
先生の感覚も含め、端的に即答して下さり、
この先生のセカンドオピニオンで、
私は、それなりにすっきり、
FECの追加は諦めることが
できました。
今振り返れば、副作用リスクも高く、
かなり無謀だったと思いますので
(3年間再発転移しなかった結果から、
余計、そう思えるのだろうとは思いますが )
感謝しております。
■FEC2回追加の是非
診療室に入ると、まだ、座る前に、
開口一番、
・結論から言うと、ご希望(FEC2回追加)
には、沿えない。
(申し訳ありません、と、頭を下げられて
しまいました。
結論だけでなく、自分の納得性のために
セカンドオピニオンを入れた旨、
申し上げました)
■FECを追加できない理由
副作用の怖さと、
現時点での必要性の乏しさ
・昨年(2014年)12月に、
「FEC6回とAC4回で
効果が変わらなかった、
死亡者はAC4回:1~2名に対し、
FEC6回:数名と多かった、
副作用(感染症、だるさ、血球減少など)
が、FEC6回の方が多かった。」
という、臨床試験結果の報告あり。
(サンアントニオ)
▼効果
Q:効果測定の指標は何ですか?
A:再発率。
Q:
ステージやタイプの混在した試験で
効果を正しく測れるか、疑問に思うの
ですが。
A:
100人を50人、50人に割ったレベルの
試験であれば、指摘はもっともだが、
この試験は2700人規模の試験であり
乳癌の場合、
9割の患者に効果があるので
タイプの差も、影響のない誤差とみなして
よいだろう。
Q:
FECやAC(アンスラサイクリン)
は9割に効くのですか?
A:
効果の大小はあるが、9割に効く。
ほとんどの患者さんが効いたと思っている。
そのくらい効かなきゃ、副作用で辛い治療が
術前療法として成り立たないでしょ。
トリプルネガティブで効かない人がいる。
そういう人は、抗がん剤を中止して、
手術に切り換える。
Q:
トリプルネガティブにはよく効くと、
読んだ記憶があるが。
A:
トリプルネガティブは全く効かないか、
すごくよく効くか両極。
(後でセカンドオピニオン記録を渡して
読んだ主治医T先生も同感だと言って
いました)
Q:
FEC6回とFEC4回での比較試験は
ないのでしょうか?
A:
ない。
AC6回とAC4回の比較試験は
ある。効果は変わらなかった。
この試験も3800人集めて試験している。
(2002ー2010年)
その結果を受けて、
AC6回、FEC6回をやる
病院は、ほぼなくなった。
▼FEC対AC
Q:
FEC6回とAC4回で効果が変わらない
ということは、FEC4回とAC4回では
AC4回の方がよくて、FECじゃなく
ACをやっておけばよかった、という
ことでしょうか?
A:
否。FECもACも変わらない。
FECはヨーロッパ開発、ACは米国開発
という違いなだけで、
FEC4回とAC4回の
効果は同等と思ってよい。
副作用はFECの方が若干多い。
日本では、病院によって好き好きで、
どちらも使う。
Q:
聖路加ではFECとACとどちらを
使っているのですか?
A:
聖路加は多彩な医師の集まりなので、
どちらを使う医師もいる。
効果が同等で薬価が安いし、
投与時間も短くて済むので、
僕はACを勧める。
日本人は、薬価が高い方が効くのでは
ないかと思う人が多くて、薬価の話は
セールストークにならないから、
しないことにしてますが
。
![ウインク](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/004.png)
患者さんも、外で色々聞いてきて、
FECがいいという人もいるので、
どちらでも対応しますが、
術前・術後の補助療法で、
FEC6回はやらない、
やったことがない。
聖路加は他院からの
転院者も多いが、
FEC6回やったことの
ある人に会ったことはない。
Q:
M病院でもACを勧めてくれれば
よかったのに。
A:
FECの方が効果が大きいと
期待されていたから。
期待されていたほどの
効果が出なかった
という結果が、昨年(2014年)12月に出た、
ということなので。
Q:
5-FUが、高い割に効果がなかった、
というのことですか?
A:
薬価については、否。5-FUは安い。
薬価の違いは、E(エピルビシン)と
A(アドリアマイシン)の差。
5-FUの効果が出なかった
ことについては
FECとECの比較試験で、
効果が 変わらない
という結果が出ている。
▼副作用
・アンスラサイクリンの
心毒性は蓄積されて
抗がん剤を休止しても
戻らない。
・副作用の発生率は投与量の比例ではなく、
4回では0.5~1%弱なのが、8回では5%、
10倍近い。
日常診療で、200人に1人であれば、
偶々そういう人もいた、と、気付かない
レベルだが、
20人に1人となると、医者として
怖くて使えないレベル。
白血病の発生もある。
・8回までの何回かで、ということになるが
副作用が怖い上に、
あれだけはっきり、
効果が変わらないという
エビデンスが出てしまったら
FECを追加することは
できない。
普通の医師は、まずしない、
できないだろう。
▼必要性の乏しさ
Q:
私の場合、 FECでは顕著に腫瘍が縮小し
FECを追加すれば、転移リスク軽減の
効果は出る可能性が高いと思うのですが。
A:
今、縮小させればメリットがある腫瘍が
あって、効果が期待できるなら、
検討の余地がある。
実際、転移後の患者さんの場合、
勿論、患者さんの了解のもと、
積算投与量が制限を超えても使った
ことはある。
が、今、何も身体上の問題が
ない状態の術後補助療法で、
副作用のリスクを冒して
まで追加することは、
考えられない。
■他の抗がん剤追加の是非
ハーセプチンに他の抗がん剤を追加
できないか?
Q:
私の場合、ハーセプチン+ドセで
腫瘍があまり縮小せず、
効いていない感じがしたので
ハーセプチンの残り14回に加えて、
抗がん剤を追加するなどの代替索は
ないでしょうか?
A:
画像を見たが、1.2cmまで縮小している。
かなり効いていると思う。
Q:
私もMRI画像では劇的に小さくなって
いてFECがかなり効いたと思っていたの
ですが、術後の病理検査結果の効果判定は
1b、やや有効ということでした。
やらないよりは、やった方が、少しは
よかった、というレベルですか?
A:
病理検査結果の区切りは、特にGrade1は
幅が広すぎるから、あまり気にしなくて
いい。3(完全奏効)ではなかったけれど、
かなり効いている。
特にリンパ節転移がpCR
しているのは大きい。
胸骨傍リンパ節も消えた
可能性も高い。
その上で放射線照射も
しているから、
期待してよいと思う。
Q:
リンパ節の個数4個と異常に少ない、
のですが、抗がん剤で元の組織も
なくなるのでしょうか?
A:
・・・
(この質問だけ、先生は答えに詰まって
いました。
がん研有明の先生のイキイキ回答
~抗がん剤のことから一転、表情も
変わってイキイキ回答してくれた~
と考え合わせると、外科マターなのか⁉
と思い、次の質問に移りました)
Q:
毎回主治医にエコー測定してもらった
のですが、
FECで腫瘍は5.5cm強➡3cm弱まで、
順調に小さくなったのですが、
ハーセプチン+ドセで腫瘍はほとんど
小さくならなかった、
あまり効いていなかったと思うのですが。
A:
1cm程度までになると、効いていても
感覚的によく分からないことが多い。
効いていなかったことはないと思う。
元の勢いから考えれば、
本当に効いていなかったら、
リンパ節転移がpCRせずに
また大きくなった可能性
もあるし、
原発腫瘍も大きくなった
可能性もある。
▼ハーセプチンの効果
Q:
ハーセプチンが画期的によく効くと
聞いて期待していたのですが、
それほど効かなかった感じですが。
A:
よく効くと言っても、
ハーセプチン単剤の奏効率は、
(その場で1件、臨床試験結果を検索して
下さいました。その奏効率は16%。)
先生と一緒に画面を覗いていた私に、
先生、いきなり英文のまま説明しかける、
私もアメリカ?(西洋)の感覚の方が
合っている人間ではありますが、なので
娘にフランス人やオーストラリア人
シッターさんをお願いしてた時期も
ありますが、
テクニカルターム入りの英文、
先生と同じ速度では読めません![キョロキョロ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/016.png)
![キョロキョロ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/016.png)
私の反応が遅いことに、ふと気付かれた
先生、日本語に訳して下さいました。
16%は少し低い気がする。
20~25%、4人に1人
といったところ。
ハーセプチンがよく効く、というのは、
製薬会社の宣伝も大きい。
あくまで、いくつかの薬剤のうちの1つ。
ACとかFECといった抗がん剤を、
数十年、変わり映えなく使い続けている
中で、久々に効果のある薬剤
が出た、という意味で、画期的ではある。
ハーセプチンが出る前の
HER2タイプの
予後の悪さが、
大きく改善された、
という意味でも、画期的ではある。
Q:
ハーセプチンがあまり効いている感じが
しなかったのですが、14回することに
意味はあるでしょうか?
(少しでも効いていたかもしれないので、
出来るだけのことはしておきたい、
という気持ちから、することに異議が
あるわけではなかったのですが、
念のため、見解を確認)
A:
勿論、やった方がいい。
効かなかったと
言い切れないでしょ。
効いていると思う。
抗がん剤をやめるのは、
腫瘍が大きくなった時。
ハーセプチンは、
1年と2年で効果が変わらなかった、
半年と1年では効果に差があった、
という臨床研究から、
1年やりましょう、
ということになっている。
Q:
ハーセプチンの副作用、心毒性は、
14回、再発したらずっとやり続けて
問題ないものでしょうか?
A:
ハーセプチンの副作用は、
ほとんど最初に出る。
初回に出なければ、
ほぼ大丈夫。
ハーセプチンの心毒性は、
アンスラサイクリンと違って、
投薬を休止すれば回復する。
再発転移の患者さんで、しばらく休止して
また使う、という風に、
騙し騙し使っている患者さんもいる。
▼ハーセプチンに他剤を追加できないか
Q:
ハーセプチン単独よりは抗がん剤と
合わせて使った方が奏効率が高い。
ハーセプチン+パクリタキセルの
臨床試験結果は、奏効率67%だったと
記憶してます。
ハーセプチンに加えて、抗がん剤を
組み合わせることはできませんか?
A:
臨床試験でやっているものはあるが、
確か募集は終わっている。
結果が期待通りでなかった臨床試験結果は
見向きもされないが、たくさんある。
期待通りの結果が出るのは、いくつかの
うちの一部だけ。
FECが10年経って期待されたほど
効果が出なかったと分かったように、
10年経って効果がなかったと
分かることも多い。
あまり、お勧めしない。
■私の病状、転移の可能性の見立て
Q:
今の状態で、転移の確率はどの程度と
見るか?
A:
6~7割。
転移しない可能性も十分
出て来たと思って いいんじゃない。
ここまで治療が効いて、
転移しない可能性も
高くなったんだから、
医療者としては、
もっと喜んで欲しいと
思っていると思うなぁ。
(6~7割という数字を、さらっ、きぱっ
と言われて、そうか、転移しない可能性も
十分あるのかと、妙に納得してしまえる、
いいキャラの先生でした)
Q:
(聖路加の再発転移治療と緩和ケアに
ついて質問)
A:
そんなにネガティブに
ならなくても、
転移しない可能性も
十分あると思う。
最期のことを考えるのは大切なことだけど
病院の体制や仕組みも変わるだろうから、
今、あまり考えなくてもよいのでは?
Q:
HER2タイプは1年内とか、早い
タイミングで転移する可能性も高い、
転移後も足が速いと言われているので、
最期のことも考えて準備しておかねば、
と思いまして。
転移するとして、転移後の生存期間を
どの程度とみますか?
A:
最近、HER2タイプの再発転移患者を
集めた臨床試験で、患者を集めにくく
なっている、
確実に再発転移患者が
減っているように思う。
我々が、術前・術後の治療を
しっかりやるよう
頑張っているから、
生存期間も、確実に長く
なっている。
最後に、ドアまで送って下さった先生、
お役に立てず、申し訳ありません。
逆(FECを6コースもやりたくない、
という相談)だったら、お役に立てたの
ですが。
と、頭を下げて下さいました。
予想外の出来事に、こんなお医者様も
いらっしゃるんだなぁ、と感動するやら、
恐縮するやら。心から、
いえいえ、とんでもないです。
納得のいく、
分かりやすいご説明を
いただき、
すっきりしました。
ありがとうございました![!!](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/176.gif)
![!!](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/176.gif)
再発転移したら、また、お願いするかも
しれませんが、その際は、
よろしくお願いいたします。
と申し上げました。
先生、名札を指し、再度、お名前を
名乗って下さいました。
(大丈夫です、最初に覚えましたから
)
![照れ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/007.png)
![ダウン](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/175.gif)