漫才協会の理事として、私は東洋館での興行「漫才大行進」の担当となった。

行進する皆様が迷わないように、先頭で旗を振ったり、口笛を吹きながら歩く係だ。


まぁ、実際はこんなご陽気なものではないし、行進だってほんとはしていない。


さしあたって私が行うのは、平日の東洋館で先月から行われた企画コーナーにおける企画立案と出演者の割り振り。

この割り振りがまぁ、面倒くさい。
香盤表と企画参加希望者を照らし合わせながら、ベテラン、中堅、若手をバランスよく割り振るのが難解なパズルみたいだった。

そういうのを自動でやってくれるアプリはないものかと考えたが、そんなニッチなアプリはない。
東洋館の出番と参加希望者を割り振るアプリ。誰がインストールするんだ、そんなもの。


そして企画も平日に来場している高齢者のお客さんにも伝わるようなわかりやすく、かといって既視感のない企画を立案しなければならない。

だからと言って「フリスクの中に入っている小石を食べたらダメ対決ー!」なんてやったら、スベること間違いない。20分持たないし。

なので、どんな企画がいいものか考えていた。

ベテランから若手までの演者が楽しめ、さらには最若手でもスベる危険性がない企画を考えないといけない。

ライブやネット番組の企画を普段から考えているので大丈夫かと思ったが、これが中々難しい。
東洋館の企画コーナーは平日毎日やっているので、自分が出演しない時も想定しなければならない。
さらには客層なども想定して台本をあげるという事が初めてだった。

まぁ、何とかして、いくつかの企画台本を書き上げ、「X-GUN」西尾さんと「新宿カウボーイ」の石沢さんとの入念なシュミレーションを経て、お客さん参加型の1つの企画に絞った。


そして企画初日。
自分は出ないが、企画の責任者として舞台後ろの調光卓から企画を見る。

気分は演出家だ。つかこうへいがしているような薄いサングラスを買ってくればよかったと後悔した。

で、企画コーナーを熱視線で見守り、わかった事がある。
自分が出てないからこそめちゃくちゃ緊張する。

緊張しながらも企画コーナーを見守り、改善点を炙り出す。

さらに翌日も演出家として企画コーナーを見て、さらにその翌日も企画コーナーを確認する。

企画に対してのいくつかの改善点が見つかり、次回からは演出家らしくサングラスをかけて、投げつける用の灰皿を持って見る事にしようと思った。


で、今日。いよいよ我々が出演する企画コーナー。

私が企画を考えている時も、企画コーナーを演出家として見続けている時も、改善点を皆に告げている時も、つかこうへいみたいなサングラスを買おうと選んでいる時も終始距離を取り続けてきた相方がMCである。

大丈夫か、こいつ。
何の企画やるのかわかってるのか?
急に台本に書いていない「え〜、今月の企画は…餅吸い大会ー!」とか言い出したら、ぶん殴ってやる。舞台上で。野坂昭如ばりに。

企画が始まる前も特に何も聞いて来ず、一抹の不安が募った。マジで大丈夫か。

が、その不安は杞憂だった。
いざ始まったら普通に盛り上がった。
この企画の教科書のような感じで盛り上がった。

企画が終わり、楽屋で他の出演者の方々にお礼を言って、その流れで本当に自然にMCをした相方にも「ありがとう」と感謝を述べてしまった。


すると相方も自然に「おぅん」と返してきた。


いや、「おぅん」じゃねぇよ!!

なんだ、当然だろみたいなあの感じは!!
灰皿投げつけてやる!





今日思った事:演劇の稽古あるある:聞いたことないメーカーから販売された2リットルのミネラルウォーターを常備。