金曜は「鳥取芸人冬の陣 目指せ！ふるさと大使」というイベントだった。
新橋にある鳥取のアンテナショップ内にあるイベントスペースに、鳥取出身の芸人たちが一堂に会し、鳥取の良さをお客さんにプレゼンするという企画。
司会は安田大サーカスの団長さん(高校の時、鳥取)と元日本テレビアナウンサーの上田まりえさん(鳥取出身)、そして来場してるお客さんも鳥取出身という右を見ても左を見ても鳥取という布陣でイベントは行われた。
さらに鳥取県の偉い方々や各マスコミ関係者も来場していて、鳥取出身の水呑芸人たちはブルブルと緊張をしていた。
そんな中、横浜出身の私はリラックスした状態で鳥取県民のプレゼンを高みの見物で見ていた。
相方の田中は若干の緊張を携えながら、伝家の宝刀「名探偵コナンの作者が自分のいとこ」トークで客のハートを掴み優勝をしていた。
完全な漁夫の利で、ネタとガヤだけやっていた私まで優勝という事で、沢山の鳥取グッズを頂いた。
そんな鳥取イベントで「鳥取」よりも私のハートをがっちり掴んだのは、太田プロ所属のピン芸人『岩ちゃん』だ。
プロレスラーの棚橋弘至に似ている(髪型のみ)ので、「棚ボタ弘至」というモノマネ芸人としても活動し、その影響なのかボディビルも始めて、体はあり得ないくらい筋肉隆々。
ただ生来の人の良さからなのか常にニコニコしているが、体中の毛穴という毛穴から馬鹿が吹き出している。鳥取でも有名な馬鹿高校を卒業したらしく、それを弄られると「いやぁ！ちょっとぉ！！もお！！」と馬鹿特有のボキャブラリーの少なさを発揮させていた。
そんな『岩ちゃん』は今回のこのイベントで新ネタを披露していた。
「鳥取県の偉い人やお客さんも沢山来るので、皆さん鉄板ネタで」とあらかじめ周知されていたにも関わらず、新ネタ。
「いや〜、新ネタなんすよー！どうしよう！」
どうしようじゃない。
今すぐ鉄板ネタに切り替えればいい。
「なんで新ネタ持ってきたんすか？」
とリハーサルの時に私が尋ねると『岩ちゃん』は
「それが鳥取魂す！！」と訳の分からない回答。
筋肉を鍛えると心も強くなるというが本当だな。全然折れない。ちゃんとしたイベントになぜ新ネタを持ってくるんだ？怖くないのかしら。
「ネタの中で音響などのきっかけがある方は今ここでお願いします」
リハーサルの時にスタッフさんが我々芸人に伝えてくる。この音響のきっかけを教えるというのが、我々芸人にとって中々恥ずかしい。なぜなら他の芸人たちが見守る中、ネタを返して音響きっかけを伝えるのだ。
見ている芸人は当然笑わないし、「へ〜、こんなネタやるんだぁ…」と思われる。
「あ！僕、音キッカケあるんですが、このCD流してくれるだけで大丈夫です！」
『岩ちゃん』がスタッフに伝える。
「いや、どのタイミングで音響をかければいいのか知りたいので舞台で実際にネタをやってください」
「大丈夫です！流して頂ければいいんで」
と頑なに舞台上でネタをやることを拒否。
「いや、それだとわからないんで。お願いします」
「いや、大丈夫です！」
と訳の分からない拒絶に、皆も「いいからやれよ！」と野次を入れる。
結局照れた様子で舞台上でネタを適当にやり、適当に音響キッカケをスタッフに教えていた。
割と複雑に音響のきっかけが多いネタだったので、あんな適当で大丈夫かなぁと心配してしまった。
そして本番。
トップでネタを終えた我々は壇上に残り、他の人のネタを見てリアクションをする。
漫才あり、リズムネタあり、1人コントありとバラエティに富んだラインナップ。
数組のネタ終了後、『岩ちゃん』がブーメランパンツ一丁で登場した。
筋肉ムキムキの体を見せながら、ゆっくりとポージングをした後に、音響が止まり、鳥取の名産品を言うというネタ。
ただ音響のきっかけを適当に教えたため、音響が止まるタイミングがことごとくおかしい。
さらに新ネタという事も相まって、グズグズという音が実際に聞こえるくらいグズグズだった。
音が変なタイミングで止まる。
「あ！ちょ、ふ、風呂敷まんじゅう！！」
またポージング。曲がなる。
変なタイミングで止まる。
「お、ちょ！あ、ふ、風呂敷まんじゅう！」
また曲がなる。ポージング。止まる
「ほ、ちょっ！風呂敷ま、饅頭！！え〜、皆さん！お分かりの通り、鳥取には名産品が風呂敷まんじゅうしかございません！」
フィニッシュ！！
前衛的かつ未完成すぎるこのネタにお客さんは呆気にとられていた。
が、私は腹を抑えて悶え笑っていた。
なんでリハーサルであんな適当に音響きっかけ伝えたんだよ！
というか、そもそもなんで新ネタなんだよ！
色んな思いが蘇り、面白すぎてゲラゲラ笑ってしまった。
司会の安田団長が『岩ちゃん』にツッコむ。
「何で新ネタ持ってきたんや？」
「いや、これが鳥取魂す！」
また訳のわからない事を言っていた。
今日思った事:高校生は「しゃぶ葉」行きがち。