昨日は我らがリーダーこと渡辺正行氏がふってくれた営業の仕事。
浅草ビューホテルにて行われる、とある企業の新年会での余興。

出演者は我々以外に『ななめ45°』さんなどを含むリーダーがセレクトした芸人5組。

出番まで楽屋で待機していると、ある情報が耳に入ってくる。

(なんでも終わった後におひねりタイムがあるらしい…)

まぁ、でもこの不景気な時代。知らん芸人に渡すおひねりなんてタカが知れてる。

「へ〜、そうなんだぁ…」とあえて興味ないフリをする。ただ目は「¥」になっていた。それどころか楽屋内には静かな殺気が立ちこめていた。

そんな中、『ななめ45°』の土谷さんが提案してくる。
「じゃあ、恨みっこなしでさ!それは全部、山分けしよう」

「そ、そ、そうっすね…」と私もぎこちなく返事をする。

余興の時間になり、オープニングで芸人5組がステージに上がり、企業の方々に挨拶をする。
すると、企業の社長さんから最後に予定しているおひねりコーナーのルールが説明される。

参列者50人くらいがそれぞれガチャガチャのカプセルを持っており、そのカプセルには二千円、五千円、一万円、三万円が入っているというのだ。
そして1人につき2個も出せるという驚きのルール。

出演者の目の色が完全に変わった。
これはアレか?カイジの世界か?この仕事を紹介してくれたリーダーは兵藤会長か?

不意に訪れたビッグマネー獲得チャンスに、みな「鉄板」ネタ、いや「ダイヤモンド」ネタ、いや「ロンズデーライト」ネタを余すところなく披露して、爆笑に次ぐ爆笑の宴になった。

で、おひねりタイム。
我々の袋には結構なカプセルがドカドカと入る。卒倒しそうになるのを堪えながら、おひねりタイム終了。
他の皆はどうだったのだ?そう思いながら、楽屋へと戻る。


すると『ななめ45°』の土谷さんが言ってくる。

「よし!恨みっこなしでさ、みんなで分けよう!」

一番の先輩が言っている粋な計らいに同調しなければならない。『ななめ45°』さんだって、きっと大量にもらっている筈。
けれども今日の余興が盛り上がったのは皆のおかげ。自分一人の力と思い上がってはいけない。
だからおひねりの額が少ない奴も多い奴も皆平等。「1人は皆のために。皆は1人のために」だ。それがラグビーだ!

そもそもリーダーが取ってきた仕事。皆が笑顔で帰ることはあっても、いがみあってはいけない。
今日初めて会った後輩芸人に「あ〜、この人たちは優しいなぁ。自分たちの取り分も皆平等に分けてくれて」そう思われるのが粋な先輩としての在り方だ。ラガーマンとしての在り方だ。


「三好!お前はどうする?分ける?それとも分けない?」


おひねり袋の中にあるカプセルを確認する。

「おい!見るな!!見て決めるのはナシだ!三好、お前が分けるか分けないかを決めろ」


今後の事や人間関係を考えたら、絶対に分けるべき。平等に分配することが一番の平和的解決。それが共産主義。それがラガーマン。




「………わけない」


資本主義の犬に成り下がってしまった!!
というか、俺は別にラグビーなんてやってない!!


「もう一度聞くぞ。分けるか分けないか?どっちだ?」


「……いやぁ…分けるとか分けないとかそういう話やめません?違う話しましょうよ」

「なんでだよ」

極々ストレートなツッコミが飛んできた。
そしてなんだかんだあったが、結局皆で分配する事で丸く収まった。

で、カプセルからおひねりを取り出して、テーブルの上にまとめる。テーブルの上に集められたお金の周りに囲む芸人5組は、まるで窃盗団がアジトで山分けをしているようだった。


分配してわかった事なのだが、平等に分けても分けなくてもそんなに額は変わらなかった。
だったら、今後の平和的解決のために分けた方が絶対に良かった。おかげで今日のメンバーとの間に鉄、いやダイヤモンド、いやロンズデーライトの結束みたいなものも生まれたし。

ラガーマンとか共産主義とか関係なく、それが正しい先輩としての在り方。

土壇場で裏切ろうとした私はダサい先輩としての在り方。


ちなみにロンズデーライトとは、ダイヤモンドよりも硬い物質。






今日思った事:黒髪、メガネ、細目だと中国人に間違われる。茶髪、コンタクト、大きい目の日本人に。