昨晩はビートたけしさんの年末特番に今年も出演させて頂いた。

今年は完全にネタゴングショーのみの構成だったので、400組くらいのオーディションの中から60組が選ばれた。

去年出演した時から、照準をこの番組に絞っていたので出れて本当にありがたい。

収録6時間前の入り時間すらもありがたく、何だったら前日からTBSに前乗りしたいくらいだった。

ただ90分の番組で60組の有象無象の芸人たちがネタをやるとなると、1組あたりの持ち時間なんて最長30秒が関の山だ。文系の私でも出来る簡単な計算。やっててよかった、公文式である。

「だいたい10秒くらいしかネタやれないと思いますんで…。すみませんが、皆さまご協力お願いします」
低姿勢にディレクターさんが大部屋楽屋でたむろしている本日出演予定の水呑芸人たちにそう告げた。
考えが甘かった。
90分の番組なんだから、CMやらオープニングトークやらを入れたら、正味70分だ。最長30秒だって出来る訳がない。だいたい10秒だ。20秒出来たら万々歳。

我々はこの番組のオーディションに20秒のネタ2本と40秒のネタ1本を持っていった。
ディレクターさんからは「本番やるネタは、どれでもお好きなネタでお任せします」との事だった。



話は変わるが2日前、イギリスのロックバンド『QUEEN』の軌跡を描いた映画「ボヘミアン・ラプソディ」を鑑賞した。当時3分でなければラジオで流せないという理由から、尺が6分ある「ボヘミアンラプソディー」はレコード会社上層部からシングルカットで発売することを大反対された。
けれどもフレディ・マーキュリーを含む『Queen』のメンバーはそれに猛反発し、シングルで発売する事を断行する。その挑戦の結果、「ボヘミアンラプソディー」は世界的な大ヒットの曲となった。


そんな映画の影響を受けてしまっている私は、TBSで相方に会うなり「40秒のネタで行こう」と伝える。
レコード会社田中は「いや!長いだろ!」と反対する。けれどもうっすら口髭が生えて、徐々にフレディ化している私にはそんな声は届かない。
「いや、40秒の方で行こう」
ネタ合わせをして、時間を確認する。46秒もあった。ネタ合わせで46秒ということは、大きい声でやったら50秒だ。大きな劇場でやったら1分だ。途中でダンスを入れたら5分だ。ネタの途中、コンビニに行ってしまったら30分だ。

「いや、流石に長くないか!?」
が、すでにびっちり横分けになっている私にそんな声は届かない。
話し合いの結果、40秒のネタで行く事になる。


本番までの数時間、楽屋で色んな芸人さん達と談笑する。

中でも印象に残ったのは、目をマッサージする電化製品を使ってリラックスする『めいどのみやげ』の「ティーチャ」(83歳)さんだ。


サイボーグじいちゃん誕生である。
昨日「ロボコップ」観て、影響されたのかな。
バーチャルの世界で悪党を逮捕して欲しいものでる。


そして隣には何のネタをやるべきかノイローゼのようにブツブツと口ずさむ『KICK』



楽しい時間はあっという間に過ぎ、いよいよ本番。


例年通り、たけしさんの采配により瞬殺されていく芸人たち。
ただこの番組においては瞬殺されるのが正解である。
続々と瞬殺されて行き、番組開始30分経って合格者は5秒だけネタをやった『BBゴロー』さん、ただ1人。


まもなく我々の出番が近づいてきた。レコード会社田中が私に「やっぱり20秒のネタの方がいいんじゃない」と日和ってきた。
冗談じゃない!もう私は口髭をびっしりと生やし、ピタピタの白タイツを着て、胸毛もモッサリ生やしてしまっている。完全なフレディ・マーキュリーだ。
「いや、40秒の方でいく」

我々の出番になる。
幕が開き、自己紹介をした瞬間に幕を落とされた。

早すぎる!!2秒だ!
そして幕を落とされた瞬間に気がついた。
いらない自己紹介に10秒くらい使っていた!
さっさとネタに入ればよかった!!

後悔していると、たけしさんの恩情により再度幕が開く。

無我夢中でネタをやった。
せっかくもらったチャンス、無駄にしてなるものかと食らいつき、夢中でネタをする。
ネタの途中でたけしさんから「合格!」の声、沸くスタジオ。
ただ全く聞こえなかった。なぜなら夢中になり過ぎて、完全にこうなっていたから。





空気を読まず「ショーマストゴーオン」の精神でネタを続ける我々はスタッフさんに止められ、合格席のコタツへと移動する。
2年連続合格を頂き、たけしさんの後ろで収録に参加できる幸せを噛み締めながら去年と同様、収録中に果ててしまった。

そして合格したにも関わらずネタを続行してしまった事を知り反省する。






番組終了後、出演者全員で軽い打ち上げ。
そして毎年恒例のたけしさんによるありがたいお言葉。

「バラエティーの演出上、早めに幕を閉めちゃったけど悪く思わないでね。これをテレビで観た人が劇場に足を運んでくれればと思っての事だからね。
今の時代、テレビは30秒や1分のネタが求められるけど、芸人としては15分のネタが出来ないとダメだから。皆さん、今日は本当にありがとうございました」

深々とお礼をするたけしさんに皆、感動した。

さすが伝説のチャンピオンだ。







今日思った事:目覚ましよりもインターホンの音の方が起きる。