11月1日の東洋館。
舞台を終え、楽屋に戻ると相方は予定があるようですぐに着替えて帰る準備をしている。

私はというと特にその後予定らしきものがなかったので「ネタでも考えるか」と思っていたが、「面倒臭いな」という気持ちの方が勝っていた。

ネタを作らない何かいい言い訳を探すため、相方が帰っても私は楽屋に残っていた。

すると楽屋に舞台を終えた『春風こうた・ふくた』の『春風こうた』師匠がご機嫌な様子で入ってきた。

出た!いい言い訳!

「お疲れ様です!」

「おぅ〜。やってるかぁ〜!」

と何もやっていない私めがけて、曖昧な挨拶をしてきた。

「はい。やってます!」

「そうか、そうか。そりゃいい事だ」

『春風こうた』師匠はリズムで返答をして、ソファに腰をかける。
私はバッグからビール券を取り出して、師匠に言う。

「師匠!そういえば、さっきお客さんから舞台終わりにビール券を貰ったんですよ!!」

「なに!ほんとうか!!」

目を爛々と輝かせ、麻薬中毒者がシャブの入ったパケをみつけたように、素早い動きで私からビール券を奪う。

「よし!これでビールを買ってこい!」

そう命じられて、すぐ劇場近くのコンビニへ向かいビールを買いに行く。
芸歴も年齢も30年ほど下の後輩のビール券にたかる師匠という違和感に、いい言い訳を探していた私は全く疑問に思わなかった。

楽屋に戻り、ビールを3本ほど献上すると師匠は私にお駄賃として千円くれた。

「いや!そんなつもりでは!」
「馬鹿野郎!いいから取っておけ!」

そう言って師匠は貪るようにビールを飲んでいた。砂漠で水を飲むようにゴクゴクと。

その後、私とこうた師匠は劇場を出て定食屋に移動する。2時間ほどビールを飲んだ後帰ることに。

家に帰りネタを考えるも、何も思い浮かばない。
やっぱりアレだな。酒飲んじゃうと何も出ないな!
そういう言い訳で1日を終えた。






今日思った事:銀座線あるある:神田あたりから仏壇屋の看板が増える