木曜日、仕事終わり時間が空いたので『ナンセンス』の原田師匠のお見舞いに行こうと思った。

結成54年『ナンセンス』師匠。
「赤上げて!白上げて!赤下げないで白下げる!」という伝説の旗上げコントの創始者。




この写真の左にいる方が、原田健二師匠。
白髪の部分がちょうど葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を彷彿とさせる。
名画のようなメッシュ白髪。




そんな原田師匠が今月あたまに骨折をした。で、病院で検査をしたら骨折よりも大変な病気が見つかり入院する事になってしまった。

数日前に、たまたま漫才協会の事務の方から入院している病院を聞いたので、お見舞いに行こうと思い立つ。


そう思い立ったはいいが、病院の場所が小岩。微妙に遠い。
今いる新橋から電車で40分。遠いな。

さらに原田師匠は携帯電話を持っていないので、連絡が出来ない。なので、あらかじめお見舞いに行くというアポが取れない。

そしてお見舞いの品に、何を持っていくのが適しているのかさっぱりわからない。

さらにさらに、私と原田師匠との今までの総会話量が1ページにも満たないのである。
きっともし行ったら、師匠は「え。なに、こいつ〜。急に来て。喋ることもないし、見舞いの品もないし。気持ち悪いんだけど!」となるだろう。


以上の点から、「やっぱり行くのはよそう」という気持ちへと思い直す。


思い直すも、「やっぱり行ったら行ったで喜んでくれるのでは!それに何かエピソードも拾えるかもしれないし。こういうのは気持ちが大事だからな」と再び思い直す。

1人新橋駅で行くべきか行かざるべきかという葛藤の後、「誰か後輩を連れて行こう」という結論に達する。

ついては常識的な奴であれば、私の非常識な行動に「待った」をかけてもらえる。

誰がいいか?
しばらく逡巡して、小岩の近くに住んでいる『カントリーズ』の「えざお」に連絡する。


すると「雨が降ってるんでやめておきます」という非常識な返答。

まぁ、「えざお」は今年の1月から休業しているほどのヘルニアなので雨は天敵なのだろう。
湿っぽいと腰痛に響く。原田師匠が入院したという湿っぽい話題にも反応して、腰痛を起こしていた。


次に連絡したのは、『左利き』の「ダッシュ三浦」。

ダッシュ三浦くんは、私よりも漫才協会に4年長くいる常識もしっかり兼ね備えた後輩である。

連絡すると、たまたま私のいる新橋の近くにいたらしく「急いで行きます!」という回答。さすがダッシュ君だ。


来るまでの間、新橋駅前のSL広場で時間を潰していた。SL広場では古本市を開催していて、沢山の古本屋の露店が立ち並んでいた。

いくつかの古本をぼーっと見ていると、「北斗の拳 全巻2000円」の値札を見つける。

お!安い!!
これはお見舞いの品にいいぞ…。

いやいやいや!言い訳がない!
「お前はもう死んでいる」なんて台詞を見たら卒倒してしまう。
危ない、危ない。常識的な後輩が近くにいないとすぐこれだ。


しばらくすると、ダッシュ君が駆け足でSL広場前にやってきた。

「おぉ。悪いね。急に呼んじゃって」
「全然大丈夫です!」
「で、見舞いに行く事、連絡してないんだけど大丈夫だよね?」
「そうなんすか。まぁ、ほんとは連絡した方がいいですけどね」
「そっか…。あと見舞いの品も無いんだけど、大丈夫だよね?」
「まぁ、ほんとはあった方がいいんですけどね」


と「ほんとは〜〜」というオブラートに包んだ言い方で、さりげなく非常識な私に注意をしてくれた。



横須賀線に乗り込み、小岩に向かう。

車内での話し合いにより、現地に着いたらまずはアポを取るため漫才協会の事務局に連絡。その後見舞いの品を調達という流れになった。


そして現地に到着。

とりあえず事務局に連絡をしようとすると、栃錦のブロンズ像があったのでまずは記念撮影。



そして事務局に連絡をする。事務局の方が電話に出て、衝撃の事実を教えてくれた。

「受付で原田師匠の本名を言ってくださいね。原田師匠の本名は〇〇です」

なんと!!
原田健二というのは芸名だった!!
で、本名の方が芸名っぽい名前だった!!

驚愕の事実を知ったのち、見舞いの品を調達する事に。

近くのドンキホーテでタオルを購入し、病院に向かう。


病院に到着すると、受付で何やらもめている50代のおじさん。


「井崎正弘(仮名)という方は入院しておりません」
「え!嘘でしょ!?よく調べてよ!」
「ん〜…やはり当病院にはそういった方はいないですねぇ」
「え〜〜、参ったなあ…」
「一度その方にご連絡してみてください」


そう言われて、そのおじさんは携帯を片手に病院を出ていった。

迷惑な人だ。よく調べてから来なさいよ。

我々も受付をする。


すると


「〇〇という方は入院しておりません」

まさかの2連チャン!

「え!ほんとですか!!」

「はい…」
半ば呆れ顔で対応する受付の方。

「じゃ、じゃあ!原田健二では?」

全く違う名前を言ってきたので訝しむ受付。
「え?原田健二さん?…ん?え?どういったご関係ですか?」

「ナ、ナンセンスの!」

ナンセンスなのは我々だ。

「そういった方も入院していないですねぇ…」




退院していた。



ズコーーーー!!!





今日思った事:新小岩は短髪でサングラスをおでこにかけたおじさんが非常に多い。