昨日東洋館の楽屋にいると、『母心』の関くんが聞いてくる。

「この後、ひでや師匠に誘われてるけど、三好ジェンも行かない?」

「あ〜、いいね。」

いいねとは言ったものの、新山ひでや師匠に私は誘われてない。

新山ひでや・やすこ師匠とは芸歴47年の夫婦漫才。
3年ほど前に突如カツラであることをカミングアウトして、ネタでカツラを前面に出した漫才を行い、一大センセーショナルを巻き起こした。


「飲みに行きたいけど、誘われてないからなぁ。」
「大丈夫でしょ」

そんな会話をしていると、タイミングよくひでや師匠が若手楽屋に入ってきて、『母心』の関くんに話しかける。

「じゃあ、関くん。舞台終わったら、飲みに行こう。美味しくて、いい店があるんだよ」
「ほんとですか!!ありがとうございます!」
「すごくいい店だからね」
「うわぁ!楽しみです!ねぇ、三好くん」

関くんのナイスパスが飛んできた。

ありがとう!関くん!
ごっつあんです!!

心技体、全て揃った見事なフォームで、腰を45度に曲げ、手もみをして近づく。

「僕も連れてってもらってもいいでしょうか!?」


「あ。いや!ん?……それは、えっと……フフフ。なっ……ん〜〜…」

く、口ごもってる!!

苦笑いして、明らかに焦っている。
焦り過ぎて、頭の上で「カチッカチッ」とアタッチメントが外れる音がした。


「あ!う〜ん。……まぁ、まぁ……」
そのまま後ずさりをして楽屋から出て行ってしまった。


お〜〜い!!
断られたぞ!!

「関くん!恥をかかすんじゃないよ!!」

隣で笑う関くんの横で、私は茫然自失だった。ショックのあまり、髪が全部抜け落ちてしまった。
慌てて髪の毛を全て拾い集め、簡易的なカツラを作り、頭の上に乗せた。

「もう一回聞いてみれば大丈夫かもしんないよ」
「そ、そ、そうだな」


私もこうなったら、しつこくいってやると思い、再チャレンジでもう一度誘ってもらうようアプローチした。

根負けしたひでや師匠は
「うん。じゃ、じゃあ若手何人かも連れて一緒に行こう」


結局私と後輩数人を飲み屋に連れてってくれた。
きっとひでや師匠は、『母心』の関くんと膝付き合わせて、何かを話したかったのだろう。

とんだお邪魔虫だったにも関わらず、我々を飲みに連れてってくれるひでや師匠の心の広さに脱帽した。






今日思った事
おじいさんはパジャマで最寄りのコンビニくらいは行ける。