そういえば19日、『ビックボーイズ』のなべ師匠に飲みに誘われた。
芸歴35年の漫才コンビ『ビックボーイズ』のなべ師匠。
「師匠というのは年寄りみたいだから、兄さんと呼んでくれ」と言っていったので、これからの表記を兄さんもしくはおじさん、あるいはなべさん(渡辺謙ではない)と表記する。
なべさん(渡辺正行ではない)は、漫才協会の共通イメージ《なんだかよくわからない師匠》の要素を多分に含んだ人だ。
体中の毛穴という毛穴からひょうきんが吹き出され、人間味のみで笑わせる。
簡単に言えば、近所の名物オヤジのような存在。
なので独特なエピソードに事欠かない。
いつ使う時が来てもいいようにバイアグラを常に財布の中に隠し持っていたり、志村けんに顔が似てるというだけで「笑っていいとも!」に素人として出演したりとエピソードの宝庫。
最近のエピソードとしては、たまたま飛行機のラジオで聞いた松竹芸能所属のベテラン漫談家『ナオユキ』さんの漫談の面白さに感動。その日の舞台で
「いや〜、こないだナオユキって子の漫談が凄く面白くてさ〜〜!笑っちゃったよ!!例えばこんな感じなのよ!」と言って、そのまま『ナオユキ』さんの漫談をうろ覚えでやり始める。
このパワープレイに呆然とするお客さん。
空気を察し、「あれ?ウケないな。やっぱり俺がやったらダメか!ヒャーハッハッハ!!」
と狂気を帯びた誘い笑い。
今から他の人の芸をやりますよとアナウンスして、公然と他の人のネタをやるという宇宙より謎めいた空間を作り出していた。
19日は、『ビックボーイズ』さんが東洋館のトリだった。
漫才の興行で、センターマイクを開始5分でどかして、パントマイムに手品、目隠ししてコントと何でもありの15分。
舞台を終え、袖に戻って来たなべ兄さん(61歳)は私に向かってこう言い放つ。
「いやぁ〜、トリにふさわしくない芸をやっちゃったよ!ヒャーハッハッハ!!!」
とまた映画「チャイルドプレイ」のチャッキーのような狂った笑いをする。
私はこの狂気的な笑い方が大好きなので、「いやいや、そんな事ないですよ!ヒャーハッハッハ!!」と真似をする。
余談だが、なべさん(渡邉恒雄ではない)の誘い笑いが凄く好きだ。
殺人鬼が悪の限りを尽くして悦に浸っているような狂気的な笑い方。
「ヒャーハッハッハ!!!」
気狂いピエロのような風情がある。
なべさん(キムチ鍋ではない)は、もしかしたら映画やドラマで快楽殺人を繰り返す殺人鬼の役をやったらハマるかもしれない。
「冷たい熱帯魚」のでんでんさんみたいな怪演が出来るかもしれない。
話を元に戻して19日。
「今日千秋楽だから飲みに行こう!」とその場にいた後輩たちに声をかけるなべさん(圧力鍋ではない)
ついていく事になったのは、私と『左利き』の2人、『アシッド宣言』の田中、『堀江』の5人。
「なんだよ!こんなに来んのかよ!参ったな!ヒャーハッハッハ!!」
劇場近くの300円均一の中華料理居酒屋に行くことに。
店に入るなり、威勢良く注文するなべさん(幕末の志士 鍋島直正ではない)
「とりあえず瓶ビール6本!!」
え!?
1人につき瓶ビール一本?
戦国武将みてぇだな。
そう思っていると、店に30代もしくは40代前半の女性が入って来た。
「どうも」
「おう!紹介するよ!ミエ(仮名)ちゃん!!」
挨拶する我々
「あ。ど、どうも。」
一体どんな関係なのか?そして何者なのか?といった野暮な質問はしない。
私を含む後輩5人とミエ(仮名)さん、そしてなべさん(鍋ぞう 新宿東口店ではない)という奇妙な7人で宴は始まる。
「今日俺トリだったんだよ〜〜」
「うん。知ってるよ。トリナベだね」
「お!うまいね!ヒャーハッハッハ!!!」
「なべさんって酔うとどうなるんすか?」
「俺?泣き上戸になるんだよ〜」
「そうだよね。なべさんって昔から涙もろいもんね」
「そうなの!ヒャーハッハッハ!!」
そんな感じで宴は、芸談や雑談の合間に響き渡る「ヒャーハッハッハ!」とたまにサブリミナルで繰り出されるミエ(仮名)さんの『ただならぬ関係』を思わせるオフホワイトな発言で彩られていた。
「じゃ、そろそろお開きにするか」
2時間半ほどで締めることに。
店を出ると、ミエ(仮名)さんとなべさん(サン・ペドロ・デ・ラ・ナーベ聖堂〈スペインの重要文化財に指定された教会〉ではない)は浅草の夜の街に消えていった。
おやおや!!常に財布に隠し持っているバイアグラを遂に使うのか!!!
ま。そんな事ないか。
それに万が一いや億が一にもないが、文春砲を食らったとしてもあの人は高らかに笑うだろう。
「ヒャーハッハッハ!!!!」
今日思った事
電話窓口あるある:「埼玉県の中山だけど」とか「長野県の鈴木っていうもんだけど」と出身県と苗字だけを最初に言う人、それで本人確認は出来ない!!