そういえば一昨日、東洋館の自分らの出番30分前。
師匠楽屋を通ったら、『おぼんこぼん』の『こぼん』師匠から呼び止められる。

「あのさ、三好はスマホとか詳しい?」

「はい。詳しいですよ」

「じゃあさ、けんにちょっとLINEとフェイスブック。あとツイッターやらせてやってよ」

芸歴48年、『Wモアモア』の東城けん師匠がiphoneに変えたらしく、LINEなどのアプリをインストールして欲しいという注文だった。

けん師匠は私に一枚のメモ帳を渡す。

「これ、パスワードね。」

そのメモ帳にはアップルI.D.とパスワード、googleのIDとパスワードといった他人にそんな簡単に見せてはいけないセキュリティ情報が満載されていた。

すげぇな、これ。

もし私がこのIDとパスワードを覚えたら、「ファインドIphone」という機能を使ってけん師匠の詳細な居場所を、いつでもどこでも知る事が出来る。
まぁ、知ったところで何の意味もないが。
「なるほど。今鶯谷のスナックにいるな」とか知ったところで、何の得もない。

あとIDとパスワードを知っているので、けん師匠のiphoneの中に、私のiphoneを使って勝手に遠隔でアプリを入れる事も出来る。

「よーし、知らぬ間に美肌機能付きの自撮りアプリをインストールしてやろう」とかやった所で、けん師匠のSNSの写真が可愛くなるだけだ。



話を元に戻そう。

私はけん師匠のIphoneにまずLINEをインストールして、操作方法などを簡単に説明をした。

すると隣で『おぼんこぼん』のこぼん師匠が言う。

「じゃあ、次はフェイスブックお願い」

ところがフェイスブックは大容量のアプリのため、WiFi環境がないところではインストールできなかった。

「あー、師匠。WiFiがつながってないのでインストールできないみたいですね」

けん師匠が言う
「じゃあさ、WiFi繋げようよ」

「いや、東洋館の楽屋にはWiFiが飛んでないんですよ」

すると横からこぼん師匠が言う

「じゃあさ、フェイスブック入れてあげて」

「あ。WiFiがないところではフェイスブックのアプリは入れられないんですよ」

けん師匠は言う
「え。でもこのiphone、WiFi繋げられる奴でしょ」

「はい。もちろん繋げられるんですが、今この場所にWiFiが飛んでないんですよ」

横からこぼん師匠が言ってくる。

「とりあえずさ、フェイスブック入れちゃおう」

……………

この無限ループから逃れるには、話題を変えるしかない。

「あー、じゃあ一旦ツイッターを入れますね」

「おー、そうして」

ツイッターをインストールし、簡単に操作方法を説明する。

こぼん師匠が言う

「じゃあさ、フェイスブックと連携させよう」

「あ。いや、WiFiが飛んでないのでフェイスブックが入れられないんですよ」

「WiFi繋げちゃおう!」

「師匠。そろそろ自分らの出番があるんで。すいません!」

「おー、そうか。じゃあ、行っていいよ」

挨拶を済まし、師匠楽屋を退出する。


出番を終え、若手楽屋で着替えているとけん師匠から呼び出される。

「早く続きやって!」

急いで師匠楽屋に入ると、こぼん師匠に言われる。

「じゃあさ、フェイスブック入れてあげて!」


This is 漫才協会!!









今日思った事
「べっぴんさん、べっぴんさん。一つ飛ばしてべっぴんさん。」で飛ばしているもの:親子の縁を切った父、鬼の形相でみつめる白竜、お世話になった保護観察官、べっぴんさんの遺影