そういえばこないだの「清和漫才協会」のライブで、新宿カウボーイのかねきよ大先生が絶不調で面白過ぎた。
かねきよ大先生の絶不調というのは、逆説的に絶好調という事でもある。
苦ければ苦いほど美味いみたいな、サザエの肝的な美味しさがある。グルメには堪らない。
ライブのオープニング、MCのエルシャラカーニ清和さんの「それじゃあ本日のゲスト、浅草漫才協会の皆さまです!!」という呼び込みで我々は舞台に登場する。
かねきよ大先生も舞台に登場するなり、そのまま舞台を降りて、おもむろに一番前の空いてる客席に座るというボケで先制パンチを浴びせる。
さすがノーセンスユニークボケ王と感じさせるこの豪腕なボケに、清和漫才協会勢も怯んでいるように思えた。
事態が急変したのは、二発目のボケからだ。
ウエストランドの井口くんが「何すか!漫才協会ってただのおじさんの集まりじゃないですか!!」というツッコミに対し、かねきよ大先生は反射的に返す。
「おじさんじゃないよ!おばさんだよ!!」
この謎のボケに対し、演者、お客さんともに疑問符が浮かび上がり、その瞬間空間が歪んだ。
ん?どういう事だ!
なにかボケなければという思いが、きっと反射的に「ただ反対の事を言う」という行動を出してしまったのだろう。
これは2歳児によく見られる親の言っている事に対して反抗したり、わざと反対の事を言う「イヤイヤ期」と同じ症状だ。
その後も奇妙奇天烈、奇々怪界、支離滅裂のボケの百花繚乱だった。
このまま「CR新宿カウボーイ かねきよ大爆発」はリーチすら出ないハズレ連発の大ハマりゾーンへと突入していく。
おい!どうなってんだ、この台!!
ぶっ壊れてんじゃねぇか!と台を叩きまくってしまうレベル。
しかし、そんな中でもチャンスは訪れる。
漫才協会と清和漫才協会のネタ順をどちらから先にやるかを決めるというくだりになったのだ。
これは!!!
かねきよ大先生が動き出し、舞台の中央に現れる。
「漫才協会と清和漫才協会、どっちがネタを先にやるか?」という台詞を言い、皆が期待に胸を膨らました。
両の拳を握り、「こっちが漫才協会、こっちが清和漫才協会としましょう」とやった時は客席からも歓喜の声が漏れた。
拳役物が動き、激アツ演出。
これは!大当たり確定だろ!!
後は「どっちが先か!ピー!ピピピ!!……リラックマ!!」と言って、そのまま両の拳を頭に置いて体を90度横に曲げれば、「どっちだよ!!」というツッコミが決まり大当たりだ!
フェイバリットギャグの完成に大歓声。
見事、確変状態に入る。
「どっちが先か!?」
さぁ、来い!!
固唾を飲んで見守る。
………
「相武紗季!!」
残念!!
ハズレ!!
おい!!!
何やってんだよ!!
ドッチラケムードに、場内は非難の嵐。
せめて「ピー!ピピピ!」さえあれば、ツッコめたのにそれすらもない絶妙に変な間での「相武紗季」。
台を叩き過ぎて、店員さんに注意されるレベル。
しかし、奇跡的にまた大チャンスが訪れる。
清和漫才協会の協会員になるため、契約書にサインをするというくだりになったのだ。
「急にサインしろ!なんて言われてもペンなんか持ってねぇよ!!」
「いや、かねきよが持ってるだろ!」
皆がかねきよ大先生の胸ポケットに入っているペンを指摘する。
ついに来た!!
激アツ演出だ!!
「え……、これペンじゃないですよ」
ペン役物が動き出す。
大当たり確率80パーセント。
ゴゴゴ……
ペンを取ろうとする
ゴゴゴゴゴゴ……
「これペンじゃなくて……」
やっとだ!
やっと来る。
「これペンじゃなくて、〇〇ですよ!」と言えば大当たり。スリーセブン確定!
「これペンじゃなくて……」
………
「あれ?…えっと…ペンじゃなくて……これは…あれ?……抜けない!」
残念!!
ハズレ!!
まさかの小道具が、ポケットに引っかかって取り出せないという未曾有の大ハズレ。
全員膝から崩れ落ちた。
「どうしちまったんだよーー!」
やっとの事で取り出した。
ペンの先には醤油の瓶が付いていた。
「これペンじゃなくて、醤油ですよ」
残念!!
大ハズレ!!
所持金ゼロ!!
といった具合だった。
今思い返すと、ジワジワと面白い。
予定調和では終わらない、あれはあれで大当たりだったかもしれない。
これからも目が離せない愛すべき先輩だ。
今日思った事:そこ指摘してもしょうがない事:落語家や紙切りの師匠が枕でよくやる「こないだ変なお客さんがいた」漫談。絶対「こないだ」ではない!!10数年前!
もしくはそんな客いなかった!!
そこ指摘しても何も生まれないし、しょうがないが!!