春の行方-11-
春の行方-11- 12月になった。街は、早々とクリスマス・ムードである。飲んでいるときに、大室がみんなに冬の休みにスキーに行かないかと声を掛けた。最初に行きたいと言い出したのは、久恵ほかの数人だった。行きたい者と考えている者がいる。その様子を見た大室が、「じゃあ、行きたい者は来週の日曜日までに俺のところに言って来て欲しい。その後で計画するから。」と言って、その話題はそれで終った。 光太郎は、どうしようかと迷った。久恵が行くなら、是非行きたい。スキーの経験はないが、そんなことはどうでも良かった。しかし、佳津枝には、暮れには帰ると言ってある。無論、両親特に母親が心待ちにしていることも確かである。スキーに行くか行かないか、仕事をしながらも、そのことを考え続けていた。 しかし、佳津枝の期待を裏切ることはできない。結局、光太郎は故郷に帰省することにして、大室には「この次は行きたいから。」と言って、参加を断った。 翌日の通勤のとき、久恵が言った。「三永君、スキーは行かないの?」「うん、お袋が待っているんだ。スキーはしたことがないので、本当は行きたいんだけどねえ。」「そう、残念ね。」久恵が、ちょっと寂しそうに言った。 次の飲み会では、久恵達はスキーの話題で持ち切りである。そんな話を聞きながら、光太郎は寂しい思いをしていた。 その間も、佳津枝からは、光太郎が帰って来るのを楽しみにしているというメールが届いていた。佳津枝のメールを見ていると、スキーを断って良かったと思う。 年末の会社のスケジュールも決まった。先輩達の配慮で、他の人達より一日早く休みに入ることができることになった。翌日、光太郎は新幹線の切符を買いに行った。 運良く希望の日の切符を手に入れることができた。そのことをメールで佳津枝に連絡すると、楽しみに待っているという返事が来た。 休み前の休日、一人で秋葉原に行って、佳津枝のためにゴールドのネックレスを買った。 光太郎は、他の人達より一日早い年末、年始の休みに入った。前の晩、久恵のところに挨拶に行き、自分は明日から故郷に帰るが、スキーを楽しんで来てと告げた。 新幹線だと広島までは僅かに4時間半の旅である。午後に出発しても夕方には着くことができる。佳津枝は仕事であるから、早く着いても時間が余ってしまう。 光太郎は、東京駅で自分の家族へのと佳津枝の家族への土産を買って新幹線に乗った。周囲は故郷に帰る人達であろう、列車は満席であった。 広島駅からバスで佳津枝のマンションに向かう。夕暮れの街は、すっかり師走の雰囲気である。 車窓の情景を眺めながら、光太郎はOLになった佳津枝がどう変わっているのだろうかと考えていた。 -続く-