赤い糸・白い糸-28-
赤い糸・白い糸-28- 「あの~、これ随分くたびれた糸で、しかもかなり前の結び目の後が残っているんだけど大丈夫だべか?」 東北は青森から来た神様が不安そうに聞いた。「だって、おめえはまだあまり業績が上がってないんだっぺ。ここに来てからいくつ結んだ?」 茨城の水戸から来た神様が聞いた「まだ25組だんべ。」「そりゃあいかんな。早く結ばんと、故郷に帰るときみやげも買って行けなくなるっぺよ。」「うんだ、じゃあ、やってみっか。そっちに似たようなのはないべか?」「これが良かっぺ。同じようにくたびれているから。」 青森から来た神様と水戸から来た神様は、不器用な手つきで糸を結び始めた。 その頃、地上では・・・・・ 「1番ゲート、通過!」 大きな声が聞こえている。おじいさんやおばあさん10人ほどが集まって、公園でゲートボールに興じている。そこに、ひとりの上品そうなおばあさんがやって来て、ゲーム待ちをしていたおじいさんに聞いた。「あの~、わしもゲートボールの仲間に入れて欲しいんじゃが。」「どこから来なさったっぺ?」「すぐ近くじゃが。亭主に死なれて、最近、息子夫婦のところに引き取られたんじゃが、嫁と一緒にいると堅苦しゅうて。そんで昼間はできるだけ外に出ていたいんじゃが。」「ええけど、ゲートボールの経験はあるだか?」「うんにゃ、ねえ。」「道具はあるだか?」「それもねえ。」「それじゃあ、わしのを貸してやるべ。そんでちょっと練習してみるべ。」 おじいさんは、自分のスティックをおばあさんに渡すと、持ち方から教え始めた。「ちょっと打ってみねえ。」 おばあさんは言われるままプラスチックのボールを打った。しかし力が弱かったため、2メートルも転がらずにボールが止まってしまった。「だめだ、だめだ。もっと力を入れにゃあ。こうすんだ。」おじいさんは、おばあさんの後ろに回ると、後ろから手を添えて教え始めた。「耕介さ~ん、終ったよ。今度は、あんたの番だべよ。」ゲームが終って、仲間が教えているおじいさんに呼びかけた。しかし耕介おじいさんは言った。「わしゃあ、ちょっとここでこの人に教えとるけん、誰か代わりにやっといてくれ。」 結局、その日おじいさんはこの新入りのおばあさんに付きっ切りで基本から教えていた。そして夕方帰るときには、次の日に道具を買いに行くのを手伝う約束をしていた。 翌日、おじいさんは農業用の軽トラックでおばあさんを迎えに行き、そのまま町のスポーツ用品店に行って、スティックや靴やジャージなどを買った。 次の日から、おばあさんに対する特訓が始まった。公園のゲートボール場ではみんながゲームをしていてできないので、小学校の校庭に行く。おばあさんは決して運動神経も勘も良くなかったが、おじいさんは根気よく教えた。2週間もすると、何とかゲームに加わることができるようになった。 おじいさんが、おばあさんをみんなに紹介した。「こりゃあ、山本富士子さんだ。先月、八戸から息子さんのところに来なさった。まだゲートボールは始めたばかりだけんども、基本はわしが教えちょった。よろしう頼むだ。」 みんなは手を叩いて迎えたが、その中で一人だけ不快そうな顔をして横を向いているおばあさんがいた。 ゲームが始まった。本来は5人ずつのチームでやるのだが、ここでは人数の関係で変則ルールで6人である。「山本さんは初めてだから、わしと同じ組に入れてやってくれねえか。」 横内のおじいさんが言った。するとさっき横を向いていた千代子ばあさんが言った。「そりゃあ、いけねえ。みんなルールどおりにやるべよ。例外を作ったらおかしゅうなる。」 何人かがそれに同調したので、結局、いつもどおりにジャンケンで決めた組み合わせですることになり、富士子は耕造とは敵の関係、文句を言った千代子と組むことになった。 -続く-