4日の東京市場で目立った動きが2つあった。日米協調介入で155.31円まで押し下げられたドル/円が、そこから2円超のドル高・円安である157円後半まで円安に振れたことと、同日に実施された10年国債の入札が不調になり、長期金利が上昇したことだ。
2つの現象の裏で共通して作用したのは、自民党が3日に消費減税の実施を税制調査会と社会保障制度調査会の合同会議で事実上了承し、高市早苗首相が5日に消費減税の実施を閣議決定しようとしていることだ。明確な財源なき「減税」に対し、市場が警鐘(ウォーニング)を発し始めた。
<介入後の円高水準から2円超の円安に>
28年ぶりとなる円買いの日米協調介入の実施を受け、ドル/円は3日に一時、155.31円までドル安・円高が進んだ。
ただ、その後はジリジリと円安が進み、4日午後3時過ぎには157.73円までドル高・円安が進んだ。
<10年債入札は不調、最高落札利回りは96年以来の高さに>
一方、4日に実施された10年国債入札は、応札額を落札額で割った応札倍率が2.56倍と2025年5月以来の低さにとどまり、最高落札利回りは2.900%2と、1996年8月に記録した3.126%以来の高さになった。
ある市場参加者は、今の市場の地合いでは2.9%の10年債利回りなら買いが出てくるものの、2.8%台では買わないという市場参加者の意識が表面化したと指摘した。
<市場は消費減税の閣議決定に走る政府・自民党の動きを警戒>
複数の市場筋によると、外為市場と円債市場で発生した上記の現象は、共通の材料によって、その変化幅が増幅されたという。
その材料とは、政府・自民党が推し進める食料品を対象にした消費税率を2027年4月から現行の8%を1%に引き下げる内容を5日に閣議決定しようとする動きだった。
<首相支持派が合同会議で賛成派を動員>
自民党の3日の合同会議では、発言者75人のうち、賛成65人、反対9人、中立1人で、小野寺五典・党税制調査会長に対応を一任することを決めた。
その結果、5日の自民党総務会で了承を取り付け、5日に消費税引き下げを2年間限定で行う内容を閣議決定する方向となった。
時事通信によると、首相支持派の1人は「数で圧倒するため、仲間に出席を呼び掛けた」と明かしたという。
<財源特定されず、一部に介入差益を活用する案も>
この動きはマーケットの疑心暗鬼を呼び起こした。今回の減税案では年間で約5兆円、2年間で10兆円の財源を必要とするが、明確な財源の手当ては政府や自民党から明示されていない。
<介入差益の活用、「資産の切り売り」という市場からの批判も>
政府内では、今年4月末から5月にかけて実施したドル売り・円買い介入の実施と直近の介入実施で得た為替差益を合計すれば、それだけで財源になりうる規模になる、という声も出ている。
しかし、市場関係者の中では、特に海外勢を中心に「資産の切り売りによる収益確保」との指摘が出ている。
<10年債入札の不調、財政赤字拡大への懸念が表面化>
複数の市場筋は、この日の10年債入札の不調の原因には、日米協調介入による日銀の早期利上げの現実性が高まったことに加え、消費減税の閣議決定を急ぐ高市政権のスタンスをみて、財政赤字の拡大への懸念を強めている市場の声が表面化したと指摘している。
<外為市場でも浮上する財政悪化懸念>
また、外為市場での円売りの増大も、高市政権が日銀利上げに難色を示しているとの根強い観測があるだけでなく、消費減税による財政悪化を懸念する声が加わっているとの声が広がり出している。
一部の市場参加者は、インフレ圧力が増す中での消費減税という刺激策の実施は、インフレ圧力の増大を招き、日銀が早期利上げに踏み切っても、その後の利上げペースが緩慢であれば、ビハインド・ザ・カーブ(金融政策が後手に回る)に陥るリスクが高まるとみている。
<ドル158円が当面の焦点、日米金融政策次第で円安加速も>
外為市場では、ドル/円の200日線が通っている158円が重要な水準として意識されている。
協調介入で158円よりもドル安・円高の水準まで押し込んでいるが、円安の圧力を弱めるには、1)日銀が9月に利上げを実施、2)米連邦準備理事会(FRB)が9月利上げを見送り──という2つの条件がともに達成されることが前提になる、という見方が浮上している。
筆者もこの見方に賛成だ。もし、日本政府から日銀の利上げに難色を示す声が出るようなら、ドル/円は158円を突破して円安が加速しかねないと予想する。
28年ぶりの円買い協調介入を実施した日米当局にとって、想定を超える強い円安圧力に直面していると言っていいだろう。
