イランがホルムズ海峡の通航監視のため、オマーンと協定案を策定していると伝えられ、2日のNY市場でナスダックが上昇した流れを受け、3日の日経平均株価も1.26%の上昇となった。マーケットがホルムズ海峡の安全な運航確保に対して敏感に反応する地合いとなっていることが鮮明になった。

 ただ、同海峡をめぐる英仏中心の40カ国による協議が具体的な成果を生み出すかは全く不透明でなままだ。輸入の90%超を中東産原油に頼る日本にとって、この協議が空振りに終わった場合に備えて、新たな原油調達先の確保や原油使用量の削減にかじを切る政策転換が「必須の課題」だが、高市早苗政権の対応は遅く、後手を踏んでいる。どんなに遅くとも4月中には、備蓄原油の減少に即応した「緊急対策」を打ち出すべきだ。

 

 <イランがホルムズめぐりオマーンと協定案作成中、日経平均も大幅高>

 

 筆者は米・イスラエル連合とイランとの報復連鎖で、中東の広範な地域で石油や天然ガスの施設が大打撃を受け、ホルムズ海峡の封鎖が長期化することを懸念しているが、2日のNY市場の取引時間帯に国営イラン通信が、同国のガリババディ外務次官の発言として、イランがホルムズ海峡の安全通航を監視するため、オマーンと協定案を策定中であると報道。

 マーケットの悲観的な心理が一転して、和平期待に転換した。ナスダックは0.18%(3.28ポイント)上昇。3日の東京市場でも海外の短期筋が日経平均株価を押し上げ、一時、前日比で900円を超える上昇となった。

 

 <前週に4.4兆円の日本株売り越した海外勢、停戦関連ニュースに敏感>

 

 こうした動きをみると、海外の短期筋を中心にホルムズ海峡の安全通航への材料になるニュースが出れば、率先して日本株を買いたいという心理が強くなっていることがうかがわれる。

 財務省によると、3月22日ー28日の週に海外勢は4兆4481億円の日本株を売り越していた。

 複数の市場筋によると、イラン戦争の影響による原油高などを材料に短期筋を中心にした海外勢が日本株売りを積極化させていたという。

 ただ、このままリスクオフ心理一辺倒の投資行動を継続することに躊躇するムードも浮上しているとされ、3日の日経平均株価の反発は、停戦による株価上昇を先取りしたい、というマーケットの根強い「志向性」が浮き彫りになったかたちだ。

 

 <原油市場は懐疑的、WTI先物は112ドル台に>

 

 だが、足元のイラン戦争の状況は、原油先物市場の参加者の眼からは、早期停戦が「楽観的」と映っているようだ。ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)の先物価格は、3日のアジア市場の取引時間帯に1バレル=112ドル台に上昇。米国・イスラエルとイランの交戦状態の激化が起きれば、さらに上昇する可能性を秘めている。

 

 <イラン革命防衛隊、アマゾン関連施設など攻撃>

 

 実際、イランの革命防衛隊は2日、バーレーンのアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)と、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイにあるオラクルのデータセンターを攻撃したと発表した。

 両国や攻撃を受けた2社が被害の詳細を公表していないため、正確なダメージの程度がはっきりせず、3日の市場では材料視されなかった。

 しかし、今後もイラン側が米企業のデータセンターを攻撃し続ければ、大きな被害を出す可能性もあり、その場合は、米軍の大規模な反撃を呼び、2日の当欄で指摘したような「報復の連鎖」を呼ぶリスクが高まる。

 

 <40カ国参加のオンライン会合、米国は参加せず>

 

 一方、中東産原油に90%超を依存する日本にとって、ホルムズ海峡の封鎖がいつまで続くのかは「死活的な」問題になっている。

 だが、トランプ米大統領の直近の演説を聞いていると、米国は同海峡の封鎖解除にコミットしないという立場を鮮明にした印象だ。

 ホルムズ海峡の安全確保に向け、英国が呼びかけた2日のオンライン会​合に日本を含めた約40カ国が参加したが、米国は参加しなかった。

 

 <40カ国、イランの通航税には反対>

 

 ロイターによると、この協議体は英仏が主導し、初会合では、イランに海峡開放を促すために利用できる外交的・経済的選択肢などについて議論。イランが海峡を利用する船舶に通航料を課すべきでないことや、全ての国が自由に​利用できるべきであるという点で合意が得られたという。

 

 <難しいイランとの早期合意>

 

 しかし、イランが通航料の賦課を主張し、現実にイランの武力と威嚇で同海峡を封鎖している現実を見れば、40カ国が参加する協議体とイランとの間で早期に合意が成立し、同海峡の安全航行が回復されると想定するのは無理がある。

 

 <4月末にホルムズ封鎖継続なら、ナフサ不足が深刻になる可能性>

 

 米国が同海峡の問題から手を引き、英仏主導の協議体とイランとの交渉がだらだらと続いて封鎖が継続されるなら、この事態は日本にとって最悪の展開になると指摘したい。

 もし、4月末の段階で同海峡の封鎖が続いている場合、日本の国家備蓄は30日分が減少することになる。

 多くの日常生活に利用されている石油製品の原材料となるナフサは、輸入が4割を占めており、その多くは中東産に頼っている。

 また、残り6割の国産ナフサの原料となる原油も多くな中東産に依存しており、結局、ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、日本はナフサ不足に直面してエチレンの生産に支障をきたし、下流の多くの石油関連製品が品不足に直面することになる。

 

 <後手に回った政府対応>

 

 「重要物資安定確保担当相」を兼務する赤沢亮正経済産業相は2日、サプライチェーン(供給網)の実態把握を進めるよう指示を出したが、この対応は遅きに失したのではないか。どんなに遅くともイラン戦争が勃発してから2週間以内に、同じような対応をするべきだった。

 

 <政府は原油不足問題を過小評価しているのか>

 

 また、赤沢経産相は3日、石油関連の節約要請について「国民・経済に大きな影響がない形で需要面の対策を含め、あらゆる政策オプションを検討したい」と述べた。

 この「国民・経済に大きな影響がない形で」というのも、初のホルムズ海峡の封鎖という日本にとって原油が来なくなるかもしれないという「令和の石油危機」に発展するリスクを過小評価していると言わざるを得ない。

 

 <新たな原油調達先の確保、喫緊の課題に浮上>

 

 日本政府は、高市早苗首相が率先して主要な産油国を訪問し、トップ外交で新たな石油調達先を確保するという大胆な行動に打って出るべきだ。

 減少を続ける原油備蓄への対応と民間の在庫に頼っているだけのナフサ不足問題について、高市政権は国民に向けて総合的な政策パッケージを提示するべきだ。

 

 <早めのエネルギー非常事態宣言の発令が必要>

 

 1リットル=170円程度という実勢価格よりも約50円安くガソリンを国民に提供し、大型連休で大量のガソリン消費を奨励するような今の政策を継続していると、原油備蓄量の減少ペースを緩和させるどころか、早める事態にもなりかねない。

 当欄ですでに指摘したように「エネルギー非常事態宣言」を早めに出して、ホルムズ海峡の封鎖長期化というリスクに対応しないと、日本経済は大きな落とし穴にはまり込むことになると予想する。