先週の頭にオーブンから食パンを出そうとして、焼き型に触ってしまって

左の肘の下にかけて10センチほどの火傷を負ってしまった。

これは職業上、いたし方ない点もある。

アタシの腕にはここ数年の間に受けた「焼き型火傷」の跡が、そこかしこに

一杯あるんですよ。特に半袖になる夏場。腕カバーをしなくちゃ、いけないんだけど。

で、そのたびに市販薬を塗って、なんとか治していたんだけどね。

今回は梅雨時ってこともあってか、はたまたトシのせいもあってか、

なかなかじゅくじゅくして治らないのよ。

バイキンが入ったのかな?と心配になって、週明けの今日の朝、あわてて皮膚科に

走ってったんです。


ここの皮膚科はなかなか見立てがよくって、ウチの次男もよくお世話になって

おります。薬も院内で処方していて、その分時間は掛かるけれど細かく調合されて

いる上、お値段もお手頃。

だから何時行っても混んでいる。今日も待合室は満員だ~~。


先生は女医さんで、アタシの火傷をぱっと見るなり「Ⅱ度の火傷ですね。

皮膚が再生されるまでに3週間かかります。」と診断を下した。早っ。

すっごく早口で看護婦さんに処置方法を指示し、すぐに次の患者さんに

取り掛かってる。あんな早口で数種類の薬剤名と処置手順を口頭で伝え、

それをちゃんと的確に飲み込める看護婦さんの優秀さにも頭が下がる。

アタシはこの皮膚科にお世話になって長いけど、看護婦さんが変わってない

というのも大したものだと感心する。

ああいった業界は、人の出入りも激しいのだ。

職場としての条件もいいんだろうなーーと、どうでもいい事を考えたりする。


で、しばらくの間は頻繁にガーゼ交換に行かなくてはならない。

あーー、めんどくさーー。

しかし腕の内側は腋のリンパと直結してて、うっかりするとリンパ腺が腫れて

くるそうなんで、結構あなどれない箇所でもあるんだと。

うん。人間の自然治癒力って凄いもんね。


さて帰宅してからは夕方、待ちに待った「SHAR○Pのサービスマン」が来訪した。

玄関に入って挨拶するなり、

「お客さん、山崎まさよしさんの大ファンの方でしたよね~~。」

と、言われたのにはすっごくびっくりした。

約一年前、DVDの調子が悪かった際に修理に来られたサービスマンさんと

同じ人だったのね!

アタシはすっかり忘れてたのに~~。

「以前伺ったお宅のデータは取ってあるんですよ。」

それは分かるけど、「お客様の特定のシュミ」まで網羅されてるとは素晴らしいラブラブ


というわけで、早速修理に取り掛かる。

モニターのエラー信号は「23」。これは基板の故障なんだとか。

「新しい基板と交換しますから。それで直ると思いますよ。」

37インチのテレビを床に下ろし、背面のボードを外していく。

アタシは機械音痴だけど、結構こういったものの「中身」を見るのは好きなんだ。

左側にメインの基板がある。これを交換するんだね。

そしたら、

「見てください。ここについてるファン、埃が一杯ついてるでしょう。原因はここです。」

と、2個ついてる直径10センチにも満たない小さなファンを指差した。

確かに、すっごく汚れてるよ。しかもべっとりした汚れ。まるで換気扇みたい。


「このお宅はキッチンと繋がってますから。本来基板が放熱する熱い空気を

放出するためのファンが、逆に外部の空気を巻き込むことでその中に含まれて

いる汚れも、一緒に付着してしまうんですよ。だから油分が多い。それで余計に

ファンが廻らなくなるんです。」

ファンが正常に機能しないことで、内部の温度が上昇し、そのためにセンサーが

働いて電源を落す。つまり安全装置が起動するってことね。


「そうなんだーー。こんなとこにファンが2個も付いてるってこと知らないよー。

じゃ、コマメに掃除しなくちゃだめよね。」

と言ったら彼は笑いながら

「普通お客さんはそんなこと、知りませんよ。でも出来れば一年に一度、この

ファンの排気口の上から掃除機で埃を吸ってくださることで、随分とこのような

故障は防げるんですよ。」

と、汚れたファンも2個そっくり、取り替えてくれた。

うん。さすがサービスマンだわ。色んな知識を教えてくださるのね。


そしてメインの基板もそっくり取替え、また一個一個ビスをはめて元通りの

場所に設置し、スイッチを入れた。



「・・・・・・・」


あれーーーーー???また電源が落ちちゃうじゃん!!

電源ランプ、点滅しっぱなしじゃん!!前と変わらないよ~~~~っ叫び


これにはサービスマンのお兄さんも、頭を抱えてしまった。

幾度もスイッチを入れたり消したり。しばらくの間、気まずい空気が流れた。

その後、

「誠に申し訳ありません!!これは恐らく、今取り替えた基板自体が新品不良で

あったと思われます。それと先ほど交換したファンの電源部分も、異常をきたして

いる可能性もあります。」

と、なかなかにオオゴトな事態へと発展してしまったのだ。


「えーー!!そんな~~っあせるこれでもう、直ったって思ったのに~~~!!」

と、こっちが文句の一つも言おうかと思ったその瞬間、そのサービスマンさんは

がばっと床にひれ伏し、

「ほんとに、ほんとに、申し訳ございませんっ!!」と、

何度も何度も頭を下げたのだ。これにはこっちがドギマギしてしまった。


「そんなーー。だってアナタがそんなに謝ることないよ。元々こっちの使い方も

悪かったんだし。たまたま持ってきた部品が不良じゃ、仕方ないよーー。」

と、逆に慰める立場になってしまってた。


彼はため息をつきながら、こう言ったのだ。


「お客さんはテレビが見れないことで、とても不自由されていて。

修理屋が来て目の前で直してくれて、あーー、これでやっとまたテレビが楽しめる、

と、期待してるわけじゃないですか。それがダメだったーーって、凄く落胆される

でしょう。その気持ちがやっぱり、伝わってくるんですよ。」



私はこの言葉を聞いて、「この人、凄いなーー」と思ったんだ。

想像するしかないけれど、きっとこの人は子供の頃から電気屋さんに憧れてて、

目の前で分解される機械や部品や配線に、目を輝かせて覗き込んでいたんだ

ろうなーー。そんな風に自分も「壊れた機械を元通りに直せる」仕事に従事して、

お客さんを喜ばせたい、と考えたのかもしれない。



「町の電気屋さん」が姿を消し、代りに量販店が価格競争を繰り広げ、耐久消費財

である家電製品のアフターケアは、すべてメーカーに及ぶところになってる。

販売店は売りっぱなしでも良いのだ。尻拭いはメーカー任せなのだから。

そしてその最前線で「矢面て」に立ってるのが、彼らサービスマンなのだろう。

これはかなりしんどい稼業だ。お客様の苦情を直接、受け止めなくてはならない。

お客様だって色んな人がいる。個人のプライベートな場所に入って作業するわけ

だから、神経も凄く使うんだろうな。

平日の昼間、家にいるのは年寄りか主婦ばかりだ。

デジタル製品ばかりの世の中、カタカナを読み取説を判読することが難解な

世代に、事細かに噛み砕いて使用方法を説明することも彼らの仕事のうちなんだ。



ナカナカ、あんなに潔く男の人が平謝りに謝れるのも、大したもんですわ。

人間、謝るタイミングってすっごく重要なんだろうなあ。

こっちが腹を立てる隙を与えないくらいに、でもそれは決して表面だけでは

なくって、心の底からのものがきちんと伝わってきて。



「今から部品をすぐに発注して、明日中には必ず伺いますので!!」

と、固く申し入れをして彼は帰っていきました。

明日はちゃんと、映るようになるといいなあーー。



帰り際、

「後で会社からアンケート用紙が送られてくると思いますので、今日のこの

新品不良のことを是非、書いて送ってくださいね。僕らが本社に言うより、

お客様の一言の方が何倍も効果があるんです。クレームはどんどん、

書いて送ってください。ウチの社長は、全部一枚一枚目を通していますから。」

と、何度も繰り返していった。



さすが、天下の「SHAR○P」であるな。

AQUOSと言い、ヘルシオと言い、トップシェアにのし上がるには

並々ならぬ企業努力があればこそなのだ。

しかし恐らく、いつの時代であったとしても「企業は人」という原則は変わらない

であろう。

どんな業界であったとしても、末端はヒトと人との関係性で成り立っているんだ。

今日は彼とのかかわりの中で、逆にこちらが凄く勉強させてもらえました。



「もう絶対にSHA○Pの製品は買わんわい!!」

と一瞬頭をよぎったが、

「やっぱり末永くご愛顧させていただこう」

と、思い直させてくれる「昔の町の電気屋さん」のようなサービスマンさんでした。




いやーー。アタシは電気屋さんに弱いのかも知れん~~~ラブラブ!