近藤理論を突き崩す②リード・タイム・バイアス理論の反証(大腸がんステージIV) | がん治療の虚実

近藤理論を突き崩す②リード・タイム・バイアス理論の反証(大腸がんステージIV)

前回は大腸がんのステージIII(原発の近くのリンパ節までの転移)までの長期生存曲線を提示した。
その生存曲線は下降し続けるのではなく、5年たつとどのステージでも下げ止まりとなり、死亡例が出てこなくなる。言い換えると根治率が確定するのだが、早いステージ早期に治療開始した症例ほど根治率が高いことを示した。
つまり早く治療開始しても死亡時期は変わらないという「リード・タイム・バイアス」理論が間違っていることを解説したが、今回はステージIVの大腸がん患者ではどうなのかを提示する。

下図の元論文は文藝春秋2011年1月号近藤誠氏の記事「抗がん剤は効かない」に対し、週刊文春誌上で反論を受けた時に引用されていたものだ。ステージIV大腸がんの抗がん剤延命効果を如実に証明している論文なのだが、近藤誠氏は再反論で生存曲線の形がおかしいと言うだけで否定している。
大腸がん曲線1

これはまだ肝転移切除が一般的でなかった古い7つの無作為化比較試験のメタアナリシス(統合解析としておこう)である。
緩和療法だけの群と化学療法を併用した群で比較すると、明らかに化学療法を使用した群のほうが延命できているのがわかるだろう。
また緩和療法だけの群の中には、あとで化学療法を受けた患者も少なからず入っているので、実際の差はもっと開く(これは専門的にはITT解析と言い、試験開始後にクロスオーバーという群間の移行を許容しているから)。
しかもこれはかなり古い1983-1998年のデータなので検査機器の発達による「リード・タイム・バイアス」理論はもちろん当てはまらない。
大腸がん曲線2

この論文は抗がん剤の延命効果を証明している一つの論拠と言えるが、近藤誠氏は「生存曲線の形が奇妙になっています」の一言だけで否定している(というか、あきれたことにそれしか理由を思いつけない?!)。
恐らく曲線の前半が上に凸の形になっていることを、人為的作為が入っていると言いたいのだろうが、近藤誠氏以外には全く見向きもされない理論だと以前の記事で詳述ずみだ。

結局陰謀論を振りかざさないと、自説の正当化ができない近藤理論は医学界で相手にされるはずもない。
相手にしてくれるのは欺きやすい(今のがん治療に不満を持つ)一般大衆のみと言うことだろう。