近藤理論の手法の問題⑦-II 大腸がんではMSTが10年で倍になった | がん治療の虚実

近藤理論の手法の問題⑦-II 大腸がんではMSTが10年で倍になった

前回はエビデンスレベルの簡単な解説をした。
科学的根拠の序列を決めておけば、どの情報がどれだけ信頼性が高いか誰にでも理解できる、はず.....
しかし現実的にはコトはそう簡単ではなく、専門家の間では常に論争があるものだ。
例えば新薬の効果を現すエビデンスレベルIIのRCTが複数あっても、相反する結果が出ることは現実にあり得る。
その場合、専門家はその試験デザイン(人種差、登録患者数、最初の治療薬が効かなくなった後の治療法の違い等々)の違いをもとに考察して、現実のがん治療にどれほど適応できるかを判断する。

さてここで、なぜ近藤誠氏の理論ががん治療専門家には受け入れられず、一般人にある程度受け入れられるか考えてみる。

本来ならその理由を正面から解説すべきだし、このブログでは過去のシリーズで詳細な解説をおこなってきたが、今回のシリーズでは逆方向から考えてみよう。

となると結論を出すのは簡単で近藤誠氏の理論は

・がん治療専門家を打ち負かすには力不足だが、
・専門外の医師や一般人を信じ込ませる程度にはカモフラージュがうまい

ということになる。
もちろん、他にもたくさん理由があるのだが、そのことについては

近藤誠氏への批判②なぜ近藤理論が受け入れられる素地があるのか
http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-11553849635.html
に詳述した。

氏の著作はベストセラーになっているとは言え、現実のがん治療発展の流れにはほとんど影響していないと言って良いだろう。
これは当方がその理由を述べるまでもなく、読者周囲のがん患者の動向を見てみると一目瞭然だ。

理論はともかく、一時代前より治癒あるいは長期生存しているがん患者さんは確かに増えてきている。
一番簡単な生存期間中央値に注目しても、例えばステージIV大腸がんでは15ヶ月から30ヶ月超と約10年間で倍に伸びているのだ。
これは学会で発表される多数医療施設の研究報告でも再確認されている動かせようのない事実だ。

それでは近藤理論のどういうところに一般人を信じ込ませるからくりがあるのだろうか?
つづく...
がん治療の虚実-大腸がんMSTの伸び