炭水化物摂取とがん③高血糖は癌に有利 | がん治療の虚実

炭水化物摂取とがん③高血糖は癌に有利

がん細胞は一見正常細胞とほとんど変わらないが、当然ながら全く同じではない。

遺伝子の異常から無制限に細胞分裂を繰り返すことが、生命の危機につながることはよく知られている。
がんと血糖(ブドウ糖)の関係は以下の通りだ。

がん細胞はブドウ糖を非効率的に吸収代謝して大量の乳酸を作り出す(人が全力疾走したときに酸素を使わずにブドウ糖を分解して筋肉内に乳酸がたまって疲れるのと同じ原理)。

肝臓ではそれを基にブドウ糖を再度作り出す(糖新生という)。
さらにがん細胞は炎症性サイトカイン(局所にはたらくホルモンのような情報伝達物質)を産生して脂肪や筋肉の蛋白質の分解を促進するため、生体は糖新生で不足したブドウ糖を作り直す。

こういった非効率的な代謝のため体力消耗、栄養状態の悪化につながり、「悪液質」と言われるがん特有の「やせ」につながる。
人間のブドウ糖以外のエネルギー利用としては脂肪→脂肪酸→β酸化→アセチルCoA→ケトン体という別のエネルギー産生経路があるが、がん細胞ではこれができない。

正常細胞内の発電装置とも言えるミトコンドリアでは脂質をエネルギーに変換して効率的な栄養代謝を行うのだが、がん細胞はミトコンドリアの機能障害があるため、かわりにブドウ糖を食い散らかしてしまうのだ。
がん細胞は血糖が低くてもブドウ糖を取り込む細胞膜輸送体が多く発現している。
がん細胞がこのようにブドウ糖を多く取り込むことを利用し、ブドウ糖様物質に放射性同位元素をくっつけ、それが多く集積することで癌を見つけるPET検査についてはすでに過去に記載した。

さてそれとは別に細胞が血糖を取り込む、つまりブドウ糖を吸収するためにインスリンというホルモンがあるが、これががん細胞増殖を促進する作用があることが知られている。

・高血糖はがん細胞増殖を促進するという細胞実験の結果もある。ここにインスリンが追加されると血糖は下がるが、がん細胞増殖はさらに2ー4割増強される。

・高血糖はインスリンとインスリン様成長因子の血中濃度を上げるがこれらはがん細胞を増殖させ、死滅(アポトーシス)させにくくする作用がある。

・がん細胞はインスリン抵抗性を悪化させるサイトカインを産生し、前述のように体脂肪や筋肉を消耗させる悪液質の元凶となっている。

2型糖尿病では発症前に高インスリン血症とインスリン抵抗性を伴うが、原理的には腫瘍細胞を増殖させる要素がいくつも見つかっているわけだ。

本日の要点は高血糖、糖尿病は癌に有利になる事が判明しているということだが、やや複雑なので最終結論に持って行くのには今後分割して説明していきたい。